コントレイル

内地との通関での防疫規制緩和で「回郷証」の書き換へ予約爆満と大公報。この記事は裏を読めば逃亡犯条例から民主化運動制圧、国安法といふ状況で「内地に入らない」香港市民少なからず「ほら、こんなに皆さん内地に向かふのですよ」のイメージアップか。マヂに若い世代には中共に入るなんてまっぴら御免はかなりの数ゐるだらう。仕事でもあれば致し方ないがアタシの周囲にも本当に中共には深圳ですら足を一歩も踏み入れない人たちは少なからずゐたのだから。深圳といへばNHKで今晩、深圳を取り上げたNHKスペシャル放映あり。

 NHKスペシャル：中国新世紀③「実験都市 深圳〜メイド イン チャイナの行方〜」

中国のイノベーション産業で最先端をゆく深圳。もはや日本など足元にも及ばない技術力といふか技術を産業経済に結びつける力。だが中共の指導と資金投資なしには深圳も繁栄なし。そのリスクとのせめぎあひ。1980年代の経済特区になつたばかりの赤土の開発区と農村風景から知る者にとつてはあれから40年でこんな世界的なイノベーションエリアが誕生しとうとは。

大公報も一応は毎日目を通してこそゐるものの面白いものではないが、たまに中共色もなく記者の関心の高さで面白い記事もある。今日の１面大の特集で取り上げられたのはMTR（地下鉄）のホームにある毛筆での站名の筆捌きである。站毎にシンボルカラーがあり、そこに大きく毛筆で站名が書かれてゐて独特の筆法。ホームに列車が入るなか読み取るには独特すぎる書体で読みにくいが毎日のことだと慣れもする。これは全て區傑棠といふ書家の筆なのださうで、この方はMTRの元技術職で書家なのださう。直近で開通した土瓜灣站でも「土」を「圡」を用ゐて「圡瓜灣」として確かに「圡」は土の異字体ではあるが站のホームにまで圡と書かなくてもといはれもする。すでに北角站の「角」も最後の七画目の横が左右に出た異字体だつたり独特すぎる筆運びで「中環」が「木環」と見えるとか疑問視され続けてゐるが、正確な站名はきちんと表示された上でのホーム壁の漢字アートといふ扱ひなのださう。

今日の明報（上右）の１面大の紙面も国安法下にある香港のジャーナリズムの苦悩そのもの。もうこんな紙面で苦慮する新聞も明報くらゐなのだが一番上、社説は台湾が米国主導の「民主主義サミット」に招聘されたことつき台湾にとつて利益ないばかりか不利と苦言。海外勢力に利用されることで中国政府の台湾政策に悪い影響は確実で台湾がそれに乗らぬ方が賢明と。そして次の記事は米国の人気アニメ作品“The Simpsons”（阿森一族）で中国の天安門事件に言及の回があり香港では、この作品がネットのディズニー＋で見られるのだが、この回は削除されたさう。これも明報はあくまで、その事実を伝へるだけで政府批判は避けてゐる。そして台湾の金馬奨（映画）のドキュメンタリー部門で香港の映画〈時代革命〉がグランプリといふ「事実」。これを「報道してはいけない」とまでは当局の規制はないが本来は台湾のかうした「映画祭の政治的利用」に苦言呈すべきなのだらう。そしてもう１つの記事は香港の天主教系エリート私立校の聖若瑟書院（聖ジョセフカレッヂ）が来年の入学生から制服団隊（学校の制服とは別にボーイスカウトのやうな独特の制服を着て学校式典での指揮をしたり国旗掲揚など主導する青年隊）への加入を保護者に求めたといふ記事。香港の学校教育で愛国愛党が徹底されつゝあるが私立校でローマカソリック系の聖若瑟など伝統的な校風あり香港のさうした「流行」からある程度の距離置くものと信じられてゐたのに、である。これも校長が入学説明会でさうした学校方針を説明といふ「事実」を報じてゐる。これに疑問などコメントしたら叱られる。かうした「事実」を報道できるのもいつまでか。

DVDでNHKの芸の真髄シリーズ「江戸ゆかりの家の芸 坂東 三津五郎」を見る。
踊りの坂東流家元であつた三津五郎が2012年夏に国立劇場で開いた舞踊の会の貴重な映像。大和屋が亡くなるのはこの１年半後。
長唄　楠公
清元　流星　牽牛は巳之助で右近の織女　浄瑠璃は清寿太夫
そして〈喜撰〉は菊之助のお梶で浄瑠璃が美寿太夫、長唄が杵屋直吉ら
「八十助は踊りが上手い」といふのを自分が歌舞伎をきちんと見出す前から祖母や母から聞いてゐて勘九郎と八十助の棒しぼりや三社祭など実に花やいだもの。ご本人も気にしてゐたことだが背が高くないのだが、この踊りの名人ともなると踊つてゐて本当に大きく見せるのだから。もう１年以上前だがNHKで見た〈三社祭〉もお二人で「これでもか」といふ熱演でございました。

にっぽんの芸場「蔵出し！名舞台 十八世中村勘三郎 十世坂東三津五郎」NHK

▼大相撲九州場所千穐楽。照ノ富士全勝優勝。新横綱の２場所連続優勝は昭和36年の大鵬以来。幕内では宇良10勝。降格から復帰の阿炎が再入幕で昨日、照ノ富士に惜敗だが12勝（敢闘賞）で大したもの。応援する丹治（荒汐部屋）は西三段目三十二枚目（最高位）で５勝２敗。

▼本日の競馬はジャパンカップ（G1）東京競馬場で芝2400mなり。昨年はアーモンドアイ、コントレイルにデアリングタクトといふ三冠馬３頭対決で盛り上がり今年はコントレイル◯がこのJCで引退。７戦全勝で昨年の菊花賞まできたコントレイルは昨年のこのJCで引退するアーモンドアイに勝ちを譲り今年は大阪杯３着（優勝はレイパパレ）で前走の秋の天皇賞も２着（優勝はエフフォーリア）と３戦未勝利。今日は今年のダービー馬シャフリヤール◎とルメール騎乗のオーソリティ▲との争ひか。キセキが今日もハナから先頭かと思ひきや最後尾で始まり向正面でキセキが最後尾からハナをとつてゴーイングマイウェイだつたが、それが影響したのか何うか、いや関係ないか、コントレイル（福永）が最後、見事な走りで優秀の美を飾り２馬身差で▲、1.5差で◎の順。三冠馬のJC勝利は1985年のシンボリルドルフ、2006年のディープインパクト以来で３頭目。前年２着馬の勝利は2011年のブエナビスタ以来。

JCを制してスタンドの前で鞍上の福永騎手と一緒に頭を下げるコントレイル（産経新聞）