富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

三津五郎『踊りの愉しみ』

f:id:fookpaktsuen:20211125074147j:image(大公報)習近平の神話化は習近平自身の野望ではなく習近平以外に今の中共を領袖として率ゐることのできる人材は他にゐないゆゑ。他の幹部では安定感に欠け何がおきるかわからない。香港を含む「辺境」の不安定ばかりか中共中央の内部での不穏を何う制するか。これはもう当初の3年くらゐで済ませてゐるのは立派。もはや我々の関心はこの習近平の時代が何う終はるのか、次に何が始まるのかを想像することしかない。だが我々のかなりの数は習近平時代の終焉を見る前に御陀仏だらう。

坂東三津五郎 踊りの愉しみ

坂東三津五郎踊りの愉しみ』(岩波書店
舞踊は歌舞伎以上に見てゐないので芸談を読んでもピンとくるところはアタシには少ない。それでも昭和の終はり頃に武原はん、井上八千代の踊りを拝見してゐて歌舞伎ではやはり当時の勘九郎と八十助の踊りは楽しませてもらつたのも懐かしい。

お芝居の世界で「板に付く」という言葉がありますが板に乗ることはみんなできますけど、板に付くことはむずかしいものです。

かういふ一言が小気味よい。

鐘の音を聞くときに、ただ首を傾げて手を耳にあてるだけでは、見ているんだか聞いているんだかわからないわけです。表現が曖昧。だから「耳に集中するときは目を殺すんだよ」と教えます。電話をとるときに受話器を耳にあてて目を見張っている人はいないんですよ。耳に集中したら目は死んでいます。死んでいるというか、使っていないんですよ。だから普段はみんなやっている。それに気がつかないだけです。

ところで道成寺三津五郎がお寺を訪れたとき地元の人が「これ、できたらお願ひします」と手にしてゐたのが清姫を祀る御堂が焼失してしまつたので、その再建の寄附だといふ。安珍清姫が亡くなり千八十年も経つたのだから、もう清姫安珍に対する気持ちも安らいでゐるだらう、と安珍清姫の合同慰霊祭をやつたら、その次の日に真昼間の一時に不審火で清姫堂が全焼したのだといふ。

 白井聡「絶望がもたらした政権交代をしないという選択」毎日新聞

(要旨)10月31日の衆院選。12年の総選挙以来今日まで続いている「体制」がさらに続くことを有権者が選んだ*1。ともかく選挙結果が物語る事実は「日本の有権者政権交代を望まなかった」ということ。政権交代は絶対に起こった方が良い。仮に「新しく政権を握った政治勢力が現与党よりも能力的に劣った」としても少なくとも積み重なってきた腐敗の問題は政権交代によってその落とし前をつけることができる。そもそも日本の統治構造においては大臣は誰にでも務まる。大臣室に座って官僚の言うとおりに決裁すればよいだけだから。もちろん、それはあるべき政治の在り方ではない。しかし、それはまさに日本の新型コロナへの対処において起きたことだった。厚生労働省が打ち出したPCR検査の抑制というトンデモ方針を政権と与党は覆せなかったのであり、それが政治家の「仕事」だというのならば誰にでもできる。「自民党にしか政権担当能力はない」という神話はコロナ禍を通じて完全に崩壊した。ならば権力が権力犯罪に手を染めることを躊躇させるために政権交代はただ単にそれが起こるというだけでも意義がある。しかし、それは起こらなかった。コロナ禍を経たいま「日本の民主主義は正常に作動していない」という事実を直視しなければならない。日本の有権者は生命の直接的な危険を突きつけられたにもかかわらず「体制」の持続を望むという選択をした。命が危ないとなればその危険から脱しようとするのは知性や理性以前の生き物としての本能の働きである。つまり、日本の民主主義が機能しない根源的な理由は、あれこれの制度的欠陥以前の問題、日本の有権者の生命力のレベルでの危機的状況ではないのか。生命力の減退は諦めと無関心とに帰結する。「失われた30年」の間に先進国で日本だけ賃金が低下し1人あたりGDPの順位もどんどん下がっても、それら失敗者たちの統治が是認され続け今回もまた是認されたのだとすれば、そこには巨大な諦めと無関心があると考えるほかない。政治家に期待していないということだけでなく、自分の投票行動が他者のそれと組み合わさって何がしかの変化をつくり出すことができるはずだ、という他者への期待の消滅でもある。他者への絶望の蔓延。人間の生とはつまるところ他者との社会的諸関係の総体なのだから他者への絶望は即、自己への絶望となる。

白井先生はかう自説を述べたあと、この不条理のなかでれいわ新撰組議席を得たことへの希望を語る。「死にたくなるような社会はもうやめにしたい」と訴へる山本太郎。だが何うだらう、彼らに「この日本といふ社会のツケ」が解消できるか何うか。日本国民が力を合はせて国家再建に挑むか何うか。

ドイツ中道左派主導で3党連立来月新政権発足「気候変動対策」強化へ:立憲が共産と選挙協力でもうダメだった日本 https://t.co/qDVsgAZtdq

かういふ当たり前のことが当たり前にできる近代の国家と国民が浦山しい。

国民民主:参院選「独自で」共闘に距離「衆院選でのスタンス評価された」……それほど甘くないよ https://t.co/3YIo1dtgxQ

日本ではせいぜい、こんなレベルなのだから。

*1:白井氏は、このアベスガ体制の欠点については「これまでさまざまな著述によって指摘し続けてきたから」としつゝ「新型コロナウイルスへの対処を誤ったために約1年の間に2つの政権が飛び日本が東アジア圏で最悪の被害国となったこと」のみ指摘する。