富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

農暦九月初八

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香港民主化で外国勢力に中国への制裁を訴へた罪で国安法により身柄拘束されてゐるジミー黎智英と蘋果日報幹部6人の裁判が12月28日まで継続となり「クリスマスも獄中で」と大公報が嗤ふのは黎智英が熱心な天主教徒ゆゑ。黎智英は不法集会容疑等ですでに20ヵ月の懲役刑に服してをり今年年末のクリスマスが獄中であることは当然な気もするのだが黎智英が苦行に喘ぐことは何でも楽しいものなのだらう。

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米国のCIAがChina Mission Centerなる組織開設ださうで「香港をスパイ都市にしてはいけない」と叱る大公報。そのため国安法の他に基本法23条立法も必要であり不法分子捜査徹底や公安警察の増強で平和で安定した香港を、となる。それならCIAさまさまだらう。本来、香港はスパイ都市であつて中共も表面的には新華社を根城にそれを十分に利用してきたのだが。

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香港大学の「國殤之柱」は、これを学内に運びこんだ支連会に撤去す求めたところで死に体の支連会はそれに応じられず「柱」を壊した場合に面倒なのは、これの所有者が支連会ではなくデンマーク人の作者が香港に無償提供したもので理屈ではその作者が所有権を有しており取り壊しでもしようものなら作者から損害賠償を求められる。勝手に敷地内に持ち込まれたとしても大学側は20年以上これを学内に置いてゐたのだから設置を不本意でも黙認してきたことにもなる。それで法律事務所に法的判断まで委ねることになる。香港で今でも古い市街地で路上に大牌檔や商店が並ぶ地域があるが、それも昔から土地の不法占拠でも7年経てば、その間に撤去求められないかぎり占有権が発生した名残りである。

管浩鳴:陳同佳已離開警方安全屋 現居於不易與市民接觸的地方 赴台意願不變 | 立場新聞

台湾で女友だちを殺害して香港に戻つた青年を台湾当局に犯人引き渡すことが法律的に難しく、香港ではその青年は女友だちのクレジットカード不正使用といふ軽罪で服役を済ませ出所して、その後、この青年は警察が提供する「安全屋」(Safe House)に仮居してゐたが、すでに警察のこの提供も打ち止めで「市民との接触が容易ではない隠れ家」に母と居住してゐるさう。本人は台湾に出頭して刑に服す意思をもつてゐるのだといふが当局は彼の身柄引き渡しに動かうとはしない。

リンテイ市長がこの台湾とのこの事件を引き金に、犯人引き渡し条例の見直しを思いつき、それが反送中といふ大きな世論となり反対運動から香港民主化要求の大きな流れになつたと思ふと「この青年が台湾旅行して女友だちを殺害しなければ」そして香港に戻つて来なければ、反送中も大規模な反政府行動も起きず国安法もなく香港は少しでも昔のまゝだつたのか?とすら思はざるを得ず。さう思ふと、この青年のとつた行動が香港の運命を大きく変へたわけでサラエボ事件のやうだがサラエボ事件セルビアの青年が政治的意思をもつてオーストリア皇太子殺害図つたわけで、台湾のこの事件は性格を全く異にする。2019年の当時から不思議なのは、この若いカップルの何だかよくわからない殺人事件と、リンテイの犯人引き渡しへの動きと、その後の民主化運動まで偶然にしては実に数奇な物語の展開なのでした。