富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

観世流@東急セルリアンタワー能楽堂

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さてさて今度は香港で香港記者協会への圧力である。当局が学生記者会員について問ふたところ記協は個人情報として資料提出拒んだ上に関係資料を大量にシュレッダーしたと大公報。記協の撲滅まではしないものの骨抜きして次は外国人記者倶楽部(FCC)に政府管理建物の使用契約更新で圧力かけ反政府的な立場改めさせるところが狙ひだらう。

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世界的に株式市場にすら影響与えた中国の不動産大手・恒大の不良債権と資金繰り悪化は期限を迎へる社債利払ひについては資金調達ができたさうで直近のリスクは何うにか回避。白騎士の出現を報じる大公報。恒大倒産で恒大ショックとなつても恒大のビジネスの大部分が香港含む中国国内でリーマンショックのやうなことにはならないはずだが中国の大手地産商の倒産で連鎖倒産もあれば不動産バブルにかなり冷や水浴びせる形でもう将来このやうな不動産熱は上がらないのだらう。あつて当然のことだが。

本日秋分NHKの地方ニュース(水戸放送局)で解説してゐたが春分秋分は昼と夜の時間が均衡すると誰でも知つてゐることでも日の出と日の入りの時間から測るとまだ昼の方が長く12時間に最も近くなるのは数日後なのだといふ。さて問題です。この差は?といはれ地球の地軸の傾き?と思つたが地球の自転での日照時間の差だから、それは関係ない。福島アダム・キャスターが「ヒントは太陽1個分の差です」といふことで日の出と日の入りで前者は太陽が顔を出す瞬間で後者は太陽が完全に沈む時間なので、この差が出るのだといふ。

丹下健三 1938-1970 戦前からオリンピック・万博まで | 国立近現代建築資料館

こんな特別展が東京の国立近現代建築資料館で開催されてゐると知つてそもそもこの文化庁の施設在哪里?と思つたら湯島。上野駅から池之端を歩かうかと思つたが折からの残暑で日ざしも厳しく北千住から千代田線で湯島に向かつて正解。展示は来月10日までで会期中は無休である。自民党の諸君はこの姿勢を国会休会で何う見るか。


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1938(昭和13)年といふのは丹下が東京帝大工学部建築科卒業し前川國男事務所に入る年で当時の丹下といふと昭和17年の富士山裾野の「大東亜建設忠霊神域計画」の印象が強いが卒業制作の「芸術の館」といふ建築複合体の設計だけでも凡人との発想の違ひは明らかで戦後の丹下といへば広島平和記念公園だが淡路島にある「戦没学徒若人の広場」は今日まで知らなかつたが強烈な印象を受けた。


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今回の展示は当時の写真や貴重な資料、メモや図面の原本の展示に加へて千葉大学工学部による精巧な模型も見事。メインはやはり代々木の体育館で、この設計に決定する迄の発想からデザイン、工学的な仔細検討までかなりの資料が提供されてゐる。本当なら2時間くらゐはじつくりと参観したいところだが今日は時間がない。はじめ丹下健三展と聞いて最後はあの新宿の都庁か、と思つたが1970年で切つてゐるところがまことに妙。


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この資料館は湯島の地方合同庁舎にあつて関東財務局の東京事務所があつたり、この建物ぢたい興味深いモダニズム建築で平日はこの合同庁舎側から入ることができて参観は無料。大したもの。週末と祝日は合同庁舎入口が閉まるので旧岩崎邸庭園からの入場となる。こちらは入場制限してゐて事前の登録必要とは知らなかつたが午前10時の開園からの最初の枠であと2名とあり。入場料400円。こちらも初めての場所でゆつくりと見て回りたいが時間もないので岩崎邸を和室棟までさっと参観。「みつばち」で豆かん頬張る。暑さゆゑ店頭で小倉アイス買ひ求める客多いが店内はひっそり。甘味を頬張つてから昼食を逸したと気づく。とんかつの井泉が昼前でまだ行列になつてはゐなかつたがとんかつをゆつくりと食べる時間の余裕もない。やっつけで富士そばともいかず近くでさっとRでせいろそばを啜る。池之端も藪が終ひ老舗のこゝもかつての賑はひもない。女将が気さくで忙しくもないので少し四方山話。近所の気軽な蕎麦やだと思へば悪くはない。銀座線で渋谷。渋谷の終着駅が場所が移り改装(2020年1月)がされてから乗り降りは初めて。渋谷に来ることは本当に稀。

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渋谷駅の工事現場を上手に通り抜けてセルリアンタワー。こちらの能楽堂が20周年ださう。畏友村上湛君に誘はれ観世流の定期のお能を見る。2部構成で観世清和師も囃子方も続けての大仕事。1列目正面宛はれる。両部とも冒頭で湛君の見事な簡潔明亮な解説あり。本日はこの能楽堂のお祝ひなのでお目出たい出し物つくしで第1部が狂言<末広かり>と能<養老>、第2部が狂言<二人袴>と能<乱>。<二人袴>も婿どのが舅に挨拶に上がるといふ筋で、これも祝言を前提にして、でお目出たい。祝福としての芸能。寿ぎ。神といつても天照大神など名のある神から日本には八百万の神で小さな名もなき神々がゐらして、それへの畏敬。湛君のご祖母がテレビを買ひ替えの時に粗大ごみで引き取られる古いテレビにもお神酒をかけて、それまで楽しませてくれたことに感謝したといふ話。神仏習合。<養老>で小書きに水波之伝とあり。それの天皇とされるものが実は足利将軍(義満)で北朝と足利、そして世阿弥の関係。<乱>は「置壺」と「双之舞」と小書きにあるが<猩々>がこれで何うなるのか。客人である「まれびと」が誰なのか。「猩々」では舞台は揚子で潯陽から白楽天とつながり……と両部とも冒頭20分の解説であつたが、それを聞くことでそのあとの舞台がより面白いものになりありがたい。<末広かり>は万作師。卒寿であるがこの方が舞台に現れるだけで何なのだらう、この和らぎ。その万作師が目の前でまさにこちらを凝視されてゐるやうのだから素晴らしい仏像のやうで拝むが如し。<養老>は水波之伝で楊柳観音が現れる展開など、この世界観の全体像を理解するにはもつとこの能の世界の教養をつけて何度か見ないといけない。この囃子は後半などまるでジャズロックである。最前列で聞いてゐると旋律をとる笛とリズムセクションとしての小鼓と大鼓に太鼓でこんな音が出るのかと驚くばかり。笛は私に能の囃子の音楽性を教へてくれた松田弘之師。<二人袴>は万作師の孫の裕基君が婿役で180cmの身長に小顔で当方の能舞台を仰ぐ姿勢から何だか縮尺がおかしくなった錯覚あり。婿の兄役で合はすのは太一郎君(祐基君とはハトコ)。舅役の石田幸雄の好々ぶりがよい。<猩々>の双之舞はご宗家と嫡男・三郎太君で親子で初演なのださう。謡曲を読んでゐ湛君の解説で猩々と高風(ワキ)との関係の背景にあるものが明確になつてゐたので、この<猩々>はストンと入つてきた。本日は両場を見て大変に良かつた。


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渋谷の駅と駅周辺の工事は本当に大掛かりなもの。これだけの工事の中を電車が平常通り運行してゐて東横デパートの南館の建物なんて楼上は取り壊し始まり巨大な重機が動いてゐる階下は平常営業してゐる。埼京線のホームが随分と南に動いたさうで「新南口」なんて離れたところに設られたやうで、渋谷川の暗渠上を歩きそちらから改札を通る。さすがに人もまだ少ない。ホームにいきなり相鉄線の列車が入つてきて反対側のホームにはNEXの成田空港行き。いつたい何うなつてゐるのかしら。山手線で品川に出て帰途につく。