富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

愈是審査愈堪玩味


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中央政府は香港青年に対して国家発展に寄与する内地での実習交流による創業で5年で1万人に職を提供とのたまふ党紙。なんてありがたい中央政府の恩恵なのかしら。明報1面トップ記事が報じるのは六四の支連会に対して警察が圧力かけ昨晩10時に支連会のHPサイトが閉鎖された件。

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過去20年以上の香港での毎年十万人単位の天安門事件追悼の過去がネット上から消去されようとは。だが香港を含む中共以外では抹消しようもない過去の事実なのに……と思ふが「党の決定による歴史の決定」が重要で、それに矛盾するものは排除しておかないと整合性がつかないので、さうしてゐると理解しておけばよいのだらう。そんな中共香港でコンサートも開催できない状況にあるデニス=ホーが今日の夜になつてFBを通して 香港の自宅から弾き語りでライブ中継を行つた(こちら)。中共にしてみれば国内である香港からは内地同様にFBやGoogleなども遮断したいだらう。

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市立図書館のポストに書籍の返却に寄つたら26日まで休館延長のお知らせのポスター(下)に加へ26日から開館します(上)。それなら下のを剥がせば良いと思ふのだが、さうはいかぬ事情は以下の通り。

茨城県は昨夕、大井川「百点満点」知事*1が県独自の今月26日を期限とした非常事態宣言を県内の感染状況改善を理由に1週間前倒しで19日で解除と発表。水戸市もこれに倣ふのかと思へば(大多数の市民がさう理解してゐたのだが)水戸市は今日「まだ医療状況など改善とはいへない」として26日までの措置を30日まで延長。さすが時流にさう易々とは乗らぬ水府の骨頂。それだけでもやゝこしいのに水戸市は公共施設のうち図書館、博物館と芸術館については20日から再開だといふ。何うすればこれほど複雑な対応になるのか。感染防止といふ本来の目的とは違ふところでとんでもない労力が費やされてゐる。図書館に返却したのは清水義範清水義範本人の愛好本―自選傑作集』(講談社 )で清水義範といへばやはり「国語入試問題必勝法」だが今回読んだのは名古屋モノの「蕎麦ときしめん」を読みたいと思つたからで何故かと思ひ返せば名古屋といへば河村市長の醜態からか「蕎麦と」もイザヤ=ベンダサンのpasticheとして面白いが「国語入試問題必勝法」にも問題文の例として出てくる『英語語源日本語説』をもとにした「序文」や司馬遼太郎のpasticheの「猿蟹の賊」、CMコピーに突っ込んだ「インパクトの瞬間」、カネの発生を説いた「事の始め」(これは題がオチに上手く繋がるのだが)、テレビドラマのパロディの「ドラマチックファミリー」などさすが著者本人が300本余の短編の中から選んだ秀作なのだから面白くないはずもない。その中でも「聖書」の旧約からアダムとイヴの楽園追放の語りを歌舞伎調にしたものがアタシには一番可笑しかつた。確かに「道行」である。この清水義範といふ人の発想の柔軟性が本当に羨ましい。ところで勝手にもう物故者と思つてゐたら昭和22年生まれでご存命だつた。


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酒好きのK君から「なかなか美味しい」と聞いたアサヒビールのこの生は「復活」とあるがこんなビールがアサヒにあつたかしら?と思つたら、これ(右上)だつた。K君にとつては生まれる前の昔のビール。確かに80年代にあった。この生ビールのサイト(こちら)では「1986年「ユウヒビール」といわれるくらいだった低迷期を支え、不死鳥のようによみがえらせた」なんて自嘲なのか自信なのか、まぁ今は好調ゆゑの余裕なのだらうがレトロ風の(あきらかにサッポロ赤星とか他社のリバイバルヒットを意識してゐる)デザインで話題にならないはずもないと思つたが発売数日で「一時休売」ださう。ビール業界ではこの「一時休売」ほど宣伝は他にない。陋宅近くのコンビニでは在庫もきちんとあつて好物の大根おろしと韮の鍋で豚しゃぶでこのビールを飲んだらまろやかで美味しかつた。しかし、このビールこそ「まろやかなのにキレがある」と当時、宣伝文句にしてゐて、それが上述の清水義範インパクトの瞬間」で「なぜまろやかとキレで「なのに」接続なのか」とさんざん揶揄されてゐた。偶然にもそれを読んですぐのこのビールなので一人で大笑ひ。


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自民党の総裁選……話題にもしたくないほどつまらない。今日の朝日夕刊(しりあがり寿)「地球防衛家のヒトビト」でもトーサンとカーサンが賑はつてゐる観光農園を通つて入つてみようかとしたら作業員に「すみません、関係者だけでして」と入場断れたら園内で木になつてゐのが太郎、文雄、早苗と聖子の実といふ「ジミン農園」でトーサン曰く「どうせ不味いんだろうから選べなくていいよ」と。御意。その総裁選の候補者4人の推薦人のリストが朝日の夕刊に出てゐた。

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この推薦人には大物は名乗りを上げないといふ印象だが今回は派閥が割れてゐることで少しは面白い。野田では野田の出馬で三原じゅん子が「女を上げた」。高市の推薦人が「さもありなむ」で一番わかりやすい。山谷と片山は余計なタカ派ぶりを売って「女を下げる」。岸田の推薦人は森、猪口、今井など「良識派です」と売り込みのやう。当選7、8回といふベテランが推薦人で多いのも特徴。経産相の梶山が岸田についたことは親は田中派だつたがハト派軍人のさすが静六の倅か。河野の推薦人が義家から野中、高村まで「はぁ?」と思ふくらゐバラエティに富むのはまさに河野のむちゃくちゃな思考回路の宇宙人ぶり発揮か……なんてことを書いてゐると、これも「ネット上での誹謗中傷」で検挙される時代になつてきてゐるかも。

蘋果日報で健筆奮つてゐた陶傑先生は今は「CUP」といふネット媒体で連載を続けてゐる。かつての突飛な発想に比べるとだいぶ老成してしまつたが味はひ深いのは当然。今日は東京の太田記念美術館で開催中の国芳展について書いてゐる。コロナで外に出なくても相変はらず知的好奇心と目線の広がりがすごい。国芳の「道外粟米在石橋跳舞」の絵画からかう語る。当時、天保改革で豪奢や艶っぽい浮世絵どころか役者絵までが禁じられた中で国芳は動物どころか野菜を擬人化することで、さうした表現の制限、禁止を搔い潜りむしろ表現の幅を広げた、と。当然それでいはむとするのはまさに今の香港で何ができるか?の智慧そのもの。「愈是審查愈堪玩味」つまり「検閲が多ければ面白味も増す」。

With tighter grip, Beijing sends message to Hong Kong tycoons: fall in line | Reuters

路透社:中央向本港發展商提出新任務,要求將資源用於支持北京,解決可能破壞穩定的房屋短缺問題。中央官員指現時遊戲模式有變,中央再不願意容許「壟斷行為」。消息拖累本地地產股受壓,長實,新世界等跌2%……中央政府は香港の地場財閥系の地産商大手に対して各社、安定した家屋提供に尽力して香港の住宅問題解消に寄与することで政府に対する態度を示せと要求。李嘉誠の長実や鄭裕彤(故人)の新世界発展など軒並み株価下落の由。反政府的な民主派団体壊滅させた次は地場財閥への圧力か。鄧小平からの時代は香港資本を見事に内地の経済発展に寄与させたのだが。

馬會開除黎智英、李柱銘、何俊仁會籍 拒絕交代理由 | 立場新聞

香港ジョッキークラブが民主派大物の黎智英(蘋果日報)やマーチン李柱銘、何俊仁のメンバーシップ剥奪の由。HKJC側はこの決定理由についてコメント拒むが英国的な香港の一流社交クラブで独立のはずが中央政府への忖度以外の何ものでもない。

*1:今月5日の県知事選に向け、この知事はNHKの取材の中で1期目を点数で評価したら?といふ問ひに何と「100点」と回答したのだ。