富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

東京五輪まであと12日

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2014年の雨傘運動で葬られた愛国教育が今では「国を愛することは天経地義*1」と、こんなことを中国法政大学のカルト系教授がいふのなら驚きもしないが、こんな思考停止の暴論を宣つてゐるのが香港大学優秀な成績で卒業して香港政庁の政務官として着実に出世した挙句に中共に自ら身売りしてしまつた香港市長。一昨年は逆権運動高揚のなか一度は今すぐにでも辞任して香港市民に謝罪したいとまで心境吐露してみせたが。それにしても愛国主義を、こんな狭義的……どころか思考停止モードで一党独裁国家の肯定に意義づけできるとはいつたいどれだけバカなのだらう。まぁバカほど出世できるのが今の社会ではある。

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中共にとつては香港の反政府団体の中で最も忌み嫌ふのが六四の支聯會。香港の本土派なんて香港の民主化さえさへあればよい、本土なんて何うでもよいなのに支聯會は中共一党独裁打破しなければいけない。数十万人を一気に集めるだけの基盤がある。その支聯會も幹部が収監されるなか常委の成員も辞任に追ひ込まれ常勤職員も解雇せざるを得ず実質的に機能せぬところまで追ひ込まれる。

かつて映画スターだつた成龍(ジャッキー=チェン)が「共産党は偉大だ、入党してもいい」と宣つたとか(台湾連合報)。まだ党員ぢゃなかったの?とあばらかべっそんだが映画がもうヒットしなくなつて大陸で威張るのに中共傘下に。その上で台湾や香港の世論を非難して随分と顰蹙かつたが、もうスレてしまつた往年のスターなので何うでも良いか。

本日農暦六月初二。青空。NHKの〈音楽の泉〉でシャルル=デュトワ指揮のモントリオール交響楽団ラヴェルのピアノ協奏曲ト単調が実に素晴らしかつた。もう一曲はラヴェルの〈左手のための〉でN響(森正指揮)でピアノは安川加壽子先生の演奏活動40周年だかのもの(この曲の日本初演も安川先生だつた由)。

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この▲世界システム論の分析もわずか7年前のものなのだが「世の中の」パラダイムも随分と変容してしまつてゐるかもしれない。近代はかなりたどりつくところまで追ひこまれてゐる。もはや限界に達して世の中でバカがマジョリティになつていくと「中共やロシアの民主主義」にも理があるやうに思へ李光耀の新加坡経営の正しさが痛感されるといふもの。但し李光耀は少なくともアジアに西欧型の自由主義や民主主義を根付かせることの難儀に基づいたわけで、まさか西欧もこれほどイカれてしまふとは思つてもみなかつただらう。

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Je veux partir en voyage...

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水戸芸術館で「1964音風景」といふ企画あり参観。いはずもがな昨年の東京五輪に合はせた企画で当時の現代音楽の音の風景の回顧。演奏はアンサンブル・ノマド

1964 音風景 |コンサートホール ATM|水戸芸術館

アタシが水戸芸術館小澤征爾館長を襲ふのはこの人ぢゃないかと察してゐる片山杜秀先生の企画で本日解説もあり。初めて直見(ぢかみ)。いきなり杖をついた老人とステージに現れ誰かと思へば本日のサプライズゲストで湯浅譲二は御年九十二。さすがお話の内容が今いちよくわからないところもあるが壇上にあるだけで拝むやうなもの。

湯浅譲二:ホワイト・ノイズによる〈プロジェクション・エセムプラスティック〉

高橋悠治:クロマモルフⅡ(1964)
ジョン・ケージ:〈ピアノのための電子音楽〉(1964)より
一柳 慧:弦楽四重奏曲 第1番(1964)
テリー・ライリー:インC(1964)
片山先生は当時の前衛音楽は近代の音楽の手詰まり感の中で何か新しい模索であつたが今かうしてこれを企画にしてゐるやうに当時もこれが人類の新しい水平線を切り開く期待があつたわけでNHKが湯浅先生の制作のために電子音楽スタジオ提供したりイベントが開催されたり、それはそれで十分に市場があつて商業音楽であつたとパンフレットに書かれてゐる以上のことをコメントされてゐた。

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湯浅先生のノイズがとても美しい。そしてジョン=ケージの〈ピアノのための電子音楽〉も前衛のやうでもはや古典の域。そしてアンサンブルノマドの力量発揮でテリー=ライリーのこの曲もなんて愉しいのかしら。悠治先生と一柳先生の曲はアタシはおそらく来世紀くらゐでやつとわかるかもしれない。中入りの時にロビーで外を見たら雲行きが怪しかつたが(今朝は快晴で芸術館に来るときは日傘さしてきたのに)演奏会終はると盥をひっくり返したやうな大雨、落雷。家人が気をきかして芸術館の地下駐車場で待つてゐてくれた。1時間に30mmの雨。

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帰宅するときれいな虹になつた

*1:「天の経なり、地の義なり」と読む。経は、不変の大道。義は、正しい道理。孝、礼などの人倫は、天地の間でもこの上なく、不変の常道である。人間として当然で、しかも正しい道のたとえ。『孝経』三才章。【出典】真藤建志郎著「 四字熟語の辞典 」日本実業出版社