富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

草森伸一『本が崩れる』


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香港で変異株のウイルスがフィリピン人家政婦から雇い主の幼児に感染の由。(いはゞ二等市民で優遇のあまりない)外国人家政婦に対するワクチン接種の声が高まる。(蘋果日報)余暇に政治風刺漫画を描いてネット上に公開してゐた教員が教員資格剥奪の刑。さういふ反政府的な思想信条の者に公教育など任せるわけにはいかない。愛国愛党の偏向教育を信奉しなければならない。


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水戸ではCroute(仏語でパンの皮の意)といふパン屋の食パンがとても美味しい。今日焼けた生のパンの上にポテトサラダをのせて。パンの味がふくよか。コンビニデザートも侮れない。今日、牛乳を買いに寄つたら同じタイミングで入店したおばさんがスイーツコーナーで何か探して「あったー!」といはんばかりに買つてゐつたのが「たっぷりクリームのダブルシュー」なるスイーツで騙されたと思つて買つてみたが確かに美味しいわ。

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日光金谷ホテルの30数年前と今

昨日この日乗に残した睦朗さんの語りのなかに出てきた草森伸一(1938~2008)がふと読みたくなつて随筆『本が崩れる』を読む。数万冊の書籍に侵されたマンションで廊下の隙間から風呂に入らうとして廊下の本が崩れて浴室に閉じ込めるアクシデントから「随筆」は始まる。今はこの本は中公文庫から出てゐるやうだが元々は文春新書。なぜ随筆が新書なのか?と違和感があるが、それは読み進めると「これは随筆という形式の実験なのだ」とわかり妙に納得。風呂場に閉じ込められてゐる間だけでも思考の変遷が可笑しいのだが風呂からは無事に出られたものゝ話は終はることなく秋田でのシンポヂウムのことになり吉田健一や秋田での篤胤や種臣の体験……となる。とにかく思考の展開が面白い。そしてこの人の筆致。随筆といふものが一般的には短く肩の凝らない内容と思はれてゐるが、それが長文で思考的試行のやうに続く。

随筆といえば『枕草子』や『徒然草』を人はすぐ想いだすので、短いものと決めてかかっているが、あれらは中国流には「雑記」「小説」に属すというべきだ。そもそも「随筆」に短いも長いも、あったものではあるまい。私は、この原稿を「蔵書にわれ困窮すの滑稽」をテーマにした「百枚の随筆」として書いている。「百枚」というのも、とりあえずの目安としての仮の枚数の意である。

見事としか言ひやうがない。アタシも蔵書癖があつてとにかく入手しないと気がすまない(それでゐて読み進まない)だつたのだが書籍がどれだけ陋宅の床面積と空間を占有して、それが転居などどれだけ大変なことかは痛感したので数年前から書籍購入は随分と控えるやうになつた。香港から運んだ書籍数十箱はまだ整理もできないまゝ実家に置かせてもらつたまゝ。これも整理しないといけない。それで昨年水府に居を構へるときに住み場所の一つの条件は「市立図書館に近い」ことで幸はひ中央図書館から歩いて数分のところにマンションをみつけたので今では図書館の書架が全部自分のもののやうなつもりで読書生活となつた。

随筆-本が崩れる (中公文庫)