富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

日暮里の師匠


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香港は清明節とイースター連休で従来なら海外旅行が賑はふのだが今年はさうもいかず。VacationならぬStaycationださうだがステイはあくまで香港に、であつて飲食店ばかりかホテルステイもかなり賑はひ感染リスク高も不安視されるところだらう。蘋果日報報じるのは新界で市街化調整地域を何う宅地化するか、の土地マジック使ふデベロッパー家族の疑惑ネタ。

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小学生の頃から落語は好きだつたが時代的にはもう圓生正蔵、小さんが名人で米朝志ん朝、談志、小三治あたりが中堅。圓楽歌丸が若手。柏木の師匠が落語三遊協会を立ち上げたり談志が立川流に分裂の前。歌舞伎もいくら勘三郎幸四郎松緑歌右衛門を見てゐても六代目と吉右衛門を見てゐないことが何れだけ口惜しいか。落語でその残念を感じるのは、文楽三木助がすでに他界してゐて何よりも残念なのは「志ん生を生で聞いてゐない」こと。黒門町の師匠や三木助は録音でも楽しめるのだが志ん生だけは寄席での空気から志ん生なので、それを体感したかつた。小沢昭一とか山藤章二、森繁、若手ではジャズサックスの中村誠一さんとかが志ん生を語るのを聞いて本当に浦山しいかぎり。

さういふ「志ん生ロス」のアタシにとつては(前置きがこゝまで長くなつたが)このNHK特集の志ん生特集「びんぼう一代」は(歌舞伎でいへば小津安二郎の六代目映像のやうに)まことに貴重な記録。この番組、構成が小島貞二先生(出演もあり)と井上頌一先生で若き談志師匠が進行役。日暮里の師匠の十八番<黄金餅>に合はせ談志がそれをさらりと誦つたのを聞いて、やはりこの方も名人だつたと今更ながら思ふ。 

一度だけ途中で「書くと言ったけど、書けない」と言われたことありました。もう何十年も前の話です。私はスタジオのサブ(副調整室)にいたんですが、そこに電話がかかってきたのです。

電話口で「理由なく断るなんてひどい」と言う私に、橋田さんは「怒らないでね……」とひとこと。「実は、好きな人ができた。もうその人のことで頭の中がいっぱいになって、本が書けない」と。

驚いた私が「お相手は誰?どなたなの?」と問い詰めると、なんと私と同じ部署の人なのです。それで私、放っておけなくて、その同僚を呼び出して「こういうふうに言われたんだけど、あなた橋田さんを知ってる?」と聞いた。するとその人は、「うん。どこかで会ったことがある」という返事でした。橋田さんの電話番号をお教えして、「もしよかったら電話をして」と伝えました。

後日、橋田さんから「ありがとう」と電話があって「付き合おうと言われた」という報告がありました。私もおせっかいだったけど、二人がうまくいったことはうれしかった。それから、お友達としても随分長いお付き合いが続きました。ただ、その交際報告を受けて私がすかさず言ったのは「あなた、これで台本は書けるわよね」でした。橋田さんは、しっかり書き上げてくださった。

その時のお相手が岩崎嘉一さん。橋田さんのご主人になったTBSの社員です。ご結婚なさってからの橋田さんは、岩崎さんがご自宅にいる時には仕事はしないと約束して、彼がTBSに出勤している時に一生懸命机に向かっていました。その約束は岩崎さんが亡くなるまで、ずっと守られました。