昨日の全人代常委で決定した香港の選挙制度改革を意気揚々と報じる大公報。
もはや民主派に安定を破壊されることもない完ぺきな制度改革である。愛国万歳。実は愛党。これに哀悼。香港民主派排除、制度改変が決定 直接選挙枠減、全人代可決(朝日新聞)
毎日新聞はこれを「香港「一国二制度」事実上終わる」といふ見出しで報じてゐるが事実上終わったのは同記事で倉田先生指摘の通り「香港民主化の動き」であつて一国両制はつまり「最初から事実上なかった」といふこと。鄧小平政権で一国両制を決めたとき前提としてあつたのは中国の成長と安定、そのなかで多少の政治改革が進むことが前提であつた。それが1997年の段階で崩れてゐたのだから香港でまともな一国両制などできなかつたのも道理。
蘋果日報は中共の勝手なやりくちを意図的に1面では報じずにきてゐたが、さすがにこの政治制度改悪は1面トップにせざるを得ぬ市民の参政権蹂躙。1面の下部に専制極権国家の例としてイランでは7千名近くが選挙権審査でDQされてゐると報じてゐる。明報には林鄭市長名による政府広告で「完善政治制度 落実愛国者治港」と。
この選挙制度変更で(明報の分析によれば)汎民主派は立法会で90議席中16議席確保が最大。5分の1にも満たない議席では何もできない。これを分析した蔡子強先生はもう次の選挙では投票率が大幅に下がり民意が政府から遠く乖離するだらう、と。御意。
明報で、この李先知の政治コラムが指摘してゐることは中共は2004年の全人代常委が決定した香港の5ステップによる政治制度改革案すら否定したといふこと。
- 先由特首向人大常委會提出修改有關選舉辦法
- 須由人大常委會確定
- 並須獲立法會三分之二議員通過
- 特首同意立法會的議案
- 特首提交人大常委會批准或備案,修改方可生效。
これまでの10年で3度、行政長官が改革案提出に挑んだが、どれも失敗してゐる。どれだけの政治的意思が一党独裁といふ政治体制のなかで徒労に終はつたことか。