富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

池波正太郎『又五郎の春秋』


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正月初三の車公廟は「安心」アプリ活用で防疫もできてわずか15分待ちで参拝できたと大公報。社会は暴徒やコロナに抗ひつゝ安定したものになつてゐる、ってか。香港警察は民主派弾圧に対する欧米の対港管制のなか対テロ作戦部隊が標準装備とするドイツ製のMP5短機関銃調達が難しく同規格のチェコ製の銃調達と蘋果日報

青春忘れもの/食卓の情景/男のリズム/又五郎の春秋/ドンレミイの雨 池波正太郎の銀座日記【全】 (完本 池波正太郎大成 第29巻)

池波正太郎『又五郎の春秋』 を講談社完本『池波正太郎大成』第29巻)で読了。先代の又五郎といふ役者に惚れた池波先生がこんなルポルタージュ書きの名手だつたとは。又五郎は父方の祖母が歌六Ⅲの妹のため父の初代又五郎は初代吉右衛門と従兄弟。父が若く亡くなり吉右衛門又五郎を実子のやうに可愛がり育て、又五郎は実子を歌舞伎の役者にしなかつたかはりに三宅坂の養成所で多くの役者を育て、池波先生はその稽古場で又五郎の指導に熱い視線を送つた。その稽古場に又五郎が山田先生を連れてきてベルちゃんも真剣に若い役者の卵の稽古を眺めてゐたといふ。東宝歌舞伎のことなど貴重な記録。又五郎幸四郎Ⅷが倅二人(染五郎吉右衛門)を連れて東宝に移籍したから自分もそれに従つた形になつたが実際には自分の意思でずつと歌舞伎の世界に育ち他の世界を一切知らなかつたので松竹の庇護から離れて自分の目で外の世界を知り経験を積みたかつたと。

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又五郎の春秋』は読み終へても、この池波先生集大成には「銀座日記」もあつて、これは昭和50年代から『銀座百点』誌に連載されてゐたもので当時摘み読みはしてゐたが今となつては貴重な記録。この連載日記を読んだ川口松太郎が「食べすぎ、飲みすぎに見すぎ」と呆れたほど池波正太郎は連日のやうに映画の試写を見て銀座界隈を食べて飲んで歩いてゐる。とにかく買ひ物も好き。『銀座百点』に連載なので銀座に関しては特定の名店贔屓にならぬやうにS堂とかR亭とかイニシャルにしてゐるが銀座だから大方の読者にはそれがどこかなんてすぐにわかる。途中それもやめて実名になつたり。高校生のころにこれを読んで影響を受けたのかしら今になつて自分の銀座がどれだけ池波先生の影響を受けてゐることか……といつても池波の銀座はアタシの祖母の銀座とかなりダブるところもあつて、それも嬉しい。池波先生といへば山の上ホテルで天ぷらは「近藤」だが、この日記を読んで池波先生のヒルトップ初泊まりが昭和58年の夏なのにはちょっと驚いた。それから最愛の宿となるのだが。アタシが香港から戻り山上ホテルに宿泊のときは601号室をとることができた。月本裕さん夫妻と「近藤」での天ぷら。バーで飲んでゐたら月本さんが「あっ!」と立ち上がりロビーに走り普段運動など全然してゐない月本さんの小走りなんて見たのはこの時が最初で最後で月本さんは逝つてしまつたがロビーに走つたのはそこに伊集院静氏がゐたからだつた。閑話休題久々に新国劇と関はることとなり当時84歳の島田正吾の舞台。幸四郎Ⅷが初演の「鬼平」は高麗屋から吉右衛門Ⅱとなり播磨屋に対する信頼。その「鬼平」に又五郎北林谷栄が出演したことへの喜び。この銀座日記の最後は平成2年4月号で「鬼平」が播磨屋歌舞伎座で演じられたことを書いて、この号が最後。その年の5月に池波先生逝去。今日は午前中に降り出した雨が強くるやうで、この読書に耽つてゐたらそんな時にかぎつて陋宅の水道が断水。小さな集合住宅で管理事務所があるわけでもなく市役所の水道課に電話すると断水の工事予定も事故もないとのことでマンション名告げると先ほど同じマンションの方から電話があつたといふのでマンション管理会社に電話すると上水道のタンクでモーター機械で漏電だかの故障だといふ。地震に起因する可能性大。市役所水道課に報告しておく。台所、風呂からトイレまで使へず。緊急用の貯水もしてゐない。香港では上水道とトイレ流水が別で後者は海水を簡単に濾過しただけの水だつたが、それでトイレは使へて、これが断水しても上水道で流せたので断水に対する警戒心がなかつた。一昨晩の地震で緊急用の備蓄が必要と思つてはゐたが。煮炊きもできず大雨のなか家人と南町3のレストランKにゆく。
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品数も多く味もなかなかで良心的な価格だからそれなりに繁盛してゐるが今どき喫煙可なのが何とも。昼休みで一服かねて昼飯に来る客少なからず。煙たいからマスクするとマスクがタバコ臭くなり、これは更にひどい。広東麺。広東にない広東麺が五目あんかけラーメンと何が違ふのか。同じといふ説もあるが広東麺は広東にはないが甘いあんかけの味付けが確かに広東料理風といへば、そんな気がしないでもなし。天津丼も天津にはない料理だが、それをいへば香港で杭州炒飯も香港独特の美味しさ。香港の西洋料理屋の瑞士鶏翼(Swiss Wing)もそんな手羽先料理はスイスにはない。

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雨がどんどん強くなるなか傾城水戸で珈琲一杯飲んで時間をつぶしK歯科に治療へ。雨靴履いてはゐたが横殴りの風も強くジーンズがびしょ濡れ。66.5㎜も降つたさう。治療の間、窓から見える雨空は徐々に明るくなり治療終はると待合室の窓から青空が。北の空にきれいな虹がかかつたんですよ、と診察待ちの伯母さまが笑顔。水戸は1時間の降雨量が30㎜で日立では49㎜で2月の降雨量としては観測史上最大だつた由。

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陋宅の上水道タンクの工事は日暮れ頃に終はつて無事に水が供給され長野T氏から昨年末にいたゞいた鶴屋吉信の羊羹@奈良国立博頬張りお茶を一服。