富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

南座顔見世


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高齢者の重症化、死亡が目立つ新型コロナ感染で香港で死亡事例としては最も若い42歳の女性が入院後7日で死亡の由。

京都での宿は六角町新町通で静かだがほんの少し不便。今日は早晩が慌たゞしいが旅荷は午前中に出せば午後の早いうちに同系列で京都駅前の三井ガーデンホテルに届けておいてくれるといふので荷物を預け退房。午後までとくになにも用事ないし月曜日なので細見美術館とかも休館。御所西まで漫ろ歩き室町通勘解由小路町の山田松香木店へ。

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東都でも半蔵門にお店あり麻布十番の香雅堂も系列のやうだが、やはり本店。白檀の香木から練香などいろいろ見てお買ひ物。5千円はGoToトラベルのクーポン使はせてもらふ。

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山田松に近い「こと路」でちりめん山椒贖ふ。御所の公苑を散歩。ふと思へば小学生の時から京都には何度も来て御所の区画に足を踏み入れるのは今日が初めてかもしれない。まだ見事な紅葉。

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最初に京都に来たのは10歳くらゐの夏休みだつたか山陽新幹線も岡山まで開通してゐて姫路城が何うしても見たくて旅程の検討も任され姫路から倉敷に行き京都ではさてどこに泊まらうか?で時刻表にあつた香港のホテル旅館欄から最高級で都ホテルを選んでゐたのも懐かしいこと。せっかく京都に来たのに午前中はホテルのプールで妹と水遊び。その翌年だかは1つ上の従兄と二人で東京からフェリーで松坂、近鉄で奈良から京都へと遊び、そのときに主だつた観光地など回つてしまつたので、そのあと古刹を訪れることも稀だつたが御所訪れずにゐたとは。  

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御所内の宗像神社に「猫に餌を与へないでください」と看板あり御所にも野良猫がゐるのだとわかつたが境内では見当たらず。外に出ると閑院宮旧邸の門前で立派な猫に遭遇。御所が庭とは大したもの。 

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境町通丸太町の松屋常磐。久が原T君から以前いたゞて以来。場所が一寸中途半端といへばさうなのだが山田松からのルートには平安女学院か御所を抜け丁度良い散歩の距離。この白暖簾は御光明帝より賜つた禁裏御菓子匠としてのものださうだから潜るにも多少緊張もするが入ればすぐの座敷に女将さんといふよりお母さんが「へぇ、おいでやす」で「松風ありますよ」。観光ですか?から始まり南座で顔見世といへば第2部がどれだけ人気かで「よう切符とれましたなぁ」と感心される言葉も京都ならでは。他に客もなくご歓談しばし。松風の箱詰めを袋に入れて「ぽい」とビニール袋にいれた松風の「耳」も。京都でお店に伺ふのは何かと面白いことばかり。昼餉は1度くらいおばんざいにしようかと通りかゝりで御幸通のみます屋おくどはんに。お酒は「豪快」。まだ少し時間があつたので寺町通を上り市役所を過ぎて芸艸堂へ。絵葉書など贖ふ。

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寺町通から木屋町先斗町を抜けて四条から鴨川渡り切通しを歩く。 

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昨晩はいづ重の鯖寿司だつたが今晩は「いづう」にしませう。京都駅でもいづうのお鮨を買へるのだが折角なので本店で。 

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南座。顔見世。三十年ぶり。平成元年の夜の部なんて〈摂州合邦辻〉で大成駒の玉手午前で仁左衛門XVIIに澤瀉屋の〈酔奴〉、團十郎の弁慶で冨十郎と福助梅玉)の〈勧進帳〉で〈封印切〉は孝夫で梅川が秀太郎兄さん、丹波屋が我當兄さんだつたのだから、なんて豪華、これがまさに顔見世であらう。

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第二部は隼人と千太郎による〈寿二人猩々〉で中入り後が仁左衛門さまの〈熊谷陣屋〉。京都で熊谷の芝居だとやはり舞台の幕の鳩印から鳩居堂とつながる。 

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先月に国立劇場松嶋屋の〈毛谷村〉だつたが孝太郎さんが感染で末の三日が公演中止となり仁左さまも千太郎君も濃厚接触で、この顔見世も初日と二日目は松嶋屋休演で本来、義経役だつた錦之助が直実を務め三日目より松嶋屋復帰。十日から孝太郎さんも相模役で復帰でお役を上手にお元気で何より。〈熊谷陣屋〉の後半の義太夫は葵太夫さん。思はず舞台より、つい熱演の太夫を見つめて聞き惚れてしまふ。仁左衛門さまの〈陣屋〉は遠出してきて本当に良かつたがコロナ禍とはいへ顔見世でと思ふと物語があまりに重かつた。松嶋屋の舞台で脇の歌六が渋い。藤の方は秀太郎丈だつたが体調不良で休演続き(代役は門之助)。

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中入りで松嶋屋の番頭さんから仁左さまからのお土産をいたゞいた。恐縮のかぎり。 


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芝居が跳ねて阪急で烏丸四条、市営地下鉄で京都駅。中央郵便局で郵便を出して三井のホテルで旅荷受取り午後6時前の「のぞみ」に乗る。けっこうな混雑。三人掛けを二人で少しゆつくり。缶酎ハイも宝酒造なら京都は伏見で地酒か。松風の耳をアテになんて贅沢。名古屋を過ぎて三人掛けの相席もないとわかりいづうのお鮨の包みを開いて頬張る。京都のお酒で幸せなうちにあつといふ間に東京へ。