富柏村香港日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴る日剩でござゐます

せいきの大問題


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先日、水府でS高校の正門にある青年裸像のことを綴り木下直之著『股間若衆-男の裸は芸術か』に触れたが好事家の知己から木下先生に『せいきの大問題−新股間若衆』(新潮社)といふ続刊があることを教へられ市立図書館で、この本を借り出し……ってこの本が公立図書館の蔵書にあるのも大したものだが一緒に借り出したのが佐伯順子先生(比較文化同志社)の『男の絆の比較文化史−桜と少年』(岩波書店)だつたのでいずれも学術書とはいへ「かなり好事家」的ではある。

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実は丹尾安典先生(美術史、早稲田)の『男色の景色』(角川書店)も途中まで読んでゐたので映画〈窮鼠は〉見てからといふわけではないが読書がかなり衆道づいてゐる。男色(なんしょく)に関する考察は南方熊楠岩田準一から乱歩と続くわけだが木下先生の興趣はひたすら青年像の下半身に拘る(それで股間若衆だが)。木下先生も東京芸大出の歴とした美術史家で兵庫県立近代美術館の学芸員を務め東大の美術史で教鞭を執るやうになり教授。静岡県立美術館館長。その先生がなぜ若衆の股間にこだわるのか。それはまさに近代日本の〈まなざし〉そのもので裸像でも何う股間が隠されるかといふことだけで重大な思索となる。まぁ通人には面白いが興味ない方には「なにが面白い?」だらう。前著『股間』がビジュアル主体なのに対して『せいきの』では三島由紀夫切腹直前での裸体像制作の話から始まり敗戦後に公共施設に裸像多いのは「軍服を脱いだ」人間の原点を裸体に求めたからだと指摘し裸体への探求は何と丸木位里・俊子の〈原爆の図〉での被爆者にまで及ぶ。それにしてもである、いくら裸体に関する美術史とはいへ表紙のからなかなかだが裏表紙のイラストには唖然とする。正常位で(男だか女だか)相手に圧しかゝる男を後ろから描いてゐるのだが肛門と見事なふぐりが露骨で、それをネコが撫でてゐる。

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これが新潮社刊で公立図書館の蔵書なのが大したものだが、それはこのイラストが江戸幕末から明治にかけて春画狂画で筆を揮った河鍋暁斎によるもので〈笑絵三幅対〉のうち左幅が掛け軸にされたもので歴とした美術価値ありとは。

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この暁斎(若い頃は狂斎)が、酔った姿で「ゆるふん」からふぐりをだらしんく出してゐる男を描いた作品があるが、それもこの男は岸田吟香(劉生の父)だといふのだからあばからべっそんといふしかない。この暁斎、こんなハシタナイものを描いて……と顰蹙かひさうだが2015年には丸の内の三菱一号館美術館春画も展覧会開かれたほど。かうした木下先生的〈裸体観〉に基づく〈裸体感〉は開けっ広げで、そりゃさうである、公衆の面前で、それも公立の公共施設の入口で裸体を曝してゐるのだから、そこではエロティシズムはかぎりなく削られてゐる。あるいはエロではないといふ理念をもつことが前提となつてゐる。それに対して佐伯先生の『男色の』となると、そこに描かれてゐるのは明治期からの、薩摩の悪習だともいはれるが江戸の湯島の陰間茶屋もあれば室町時代にも盛んで、それが明治期から旧制の中学、高校で硬派の少年間の同性愛が盛んとなり……こちらはまた改めて。  いずれにせよ、かうした大らかな性に楔を打つたのが明治五年の東京府による違式詿違(イシキカイイ)条例発布で春画が取締りの対象となり「公然猥褻」といふ罪が生まれた。近代の始まり。フーコーの〈性の歴史〉そのもの。木下先生はこの『せいきの』の最後でろくでなし子裁判と愛知県美術館での「これからの写真」展に発表された鷹野隆大ポートレート男性ヌード写真に対する取締りを挙げてゐる。

造形物3は、人間の皮膚の色にもある濃い茶色で着色されており、女性器の陰影も造形物1や造形物2に比べてはっきりしており、女性器やその周辺部の形状を比較的容易に把握できるののとはいえるが、クリーム様などのものがちりばめられ、茶色の着色がクリーム様のものなどとの装飾とも相まって全体として洋菓子のような印象を与えていることからすれば、女性器を象ったものであるという印象がそこまで強いものとまではいえない。

唐突な引用になつたが、この判決文にある造形物1〜3はいずれも、ろくでなし子さんによる女性器をモチーフにした「デコまん」一連の作品。裁判ではろくでなし子さんの女性器の型取りを3Dプリンタで製作できる「電磁的記録」の配布や、かうした「デコまん」が猥褻か何うかで争われたわけだが、この判決文にある〈造形物3〉が、これ。

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これは洋菓子のやうだが、あきらかに女性器をモチーフどころか女性器そのものの造形表現でアタシにはとてもこれが「女性器を象ったものであるという印象がそこまで強いものとまではいえない」とは思へないのだが司法といふのは、本当に不思議なもの。

暁斎の描いた「ふぐり」やろくでなし子さんの「まんこアート」の後にするのは失礼か菅某の政権発足。

元号が変はるとか伊勢神宮建て替へただけで新年迎へご来光拝んだだけで気分一心で以前の不幸を忘れ何か清らかな新しい時代がやつてくると思ふ……管某の「臭いモノには蓋」ポスト安倍政権も好感度で支持率は65%(日経は74%)。森友・加計・桜を見る会の真相解明求める声は54%と過半数程度。還暦以上では6割余が真相解明に積極的だが30代以下では「その必要ない」が5割占めたといふ。若い彼らにとつては森友・加計・桜を見る会の実態など明らかになつたところで自分たちの生活が何か好転するわけでもなく、そんなことに時間費やすのならもっと景気や民生改善に力を注いでほしい、といふことになるのか。そして

安倍政権を「評価する」71%:朝日新聞

なのだといふから本当に素直で善良な国民の皆さま。たゞこれも「大いに評価する」は17%と「死んでも晋三を評価する」呆れた人たちはこの程度で「ある程度評価する」が54%で、これが大半。まぁ8年近く国政をあんな輩に任せて放置プレイしてゐたのだから、ある程度評価してゐたのだらう。

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実質的に今日から始まつた菅某の首相としての日々。官邸での朝を迎へたが朝食はキャピトル東急のORIGAMIで食事相手が朝から生臭く選挙プランナー三上博史。そして夜もORIGAMIで秘書官と。朝夕ともORIGAMIとはさすが管某らしい芸のなさ。