富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

ペスト大流行

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(大公報)黎智英から反政府活動資金がどのやうに流れたか
蘋果日報は香港の自由と民主のため懸命

本日は農暦ではまだ六月廿四日だが日本では旧のお盆の入りが昨日で某ホームセンターに寄つたら墓参りの供花売り出しで長蛇の列。今日はいつも寄る食堂がお盆休みもなく開いてゐるので尋ねたら毎年この時期「おはぎ」を買ひに来てくれるお客さんがゐるのでお盆休みは返上と。連日の快晴猛暑が本日午後には驟雨。夜はいちだんとひどい雨となるが一寸離れてゐると雨も降らなかつたといふから、これがゲリラ豪雨なのかと納得。

疫禍下ずっと何冊もペストや感染関連の書籍を読んでゐるが、おそらく乱読の最後はこれ。村上陽一郎先生。もう37年前の岩波新書黄版で古典的名著。ペスト流行について19世紀末の中国から始まり香港にも大きな惨禍をもたらし青山胤通、北里柴三郎が香港に遣られたペストから話は始まり、このときの研究でペスト菌が発見されたわけだが中央アジアの地域的な風土病だつたのか、そのペストがどう欧州へと広がつたのか十字軍遠征によつて欧州にペストが流行し14世紀後半の大流行は感染→死といふ状況でキリスト教宗教改革が起き中世から近代へのきつかけになつたやうに言はれるが村上先生は慎重にキリスト教への不信もあつたが同じく更に神に帰依強める信心もあつたと説く。よつてこのペスト流行が直接に宗教改革の引き金になつたものではないとするが貴族の荘園制度にとつてはペスト感染死者の増大で農奴の減少が生じて荘園経営のために人を雇ふ賃金は高騰し農民に土地を貸与も起きて従前からの荘園制度は曲がり角となり、さうした経済社会の変化が時代の変革に繋がつたこと。文芸復興や化学の勃興はさうした社会で徐々に始まつてくるが黒死病の直接の作用でないことに留意。「良しにつけ悪しきにつけ個人の力、理性の力、知の力を振り翳しての飽くなき進軍」が始まり、それが今日に至つてゐる。科学史の泰斗である村上先生が個人主義や理知といふ謂はゞ普遍的価値で否定されるはずもないやうなことを「良しにつけ悪しきにつけ」と慎重に見てゐることの意味深さ。さすが。そして300年後の17世紀後半にも欧州にペストが再来。この時はニュートンが剣橋大学もペストで休校となつたときに独りで思考を進めるなか光の分光的性質と重量の逆二乗法則や微積分計算の基本的アイデアを発見した「創造的休暇」なんて陋巷ではいはれてゐるが村上先生曰く、これはペスト前の大学での着想でペストでの日々は、その着想の鎮静化であつたと。余談だが面白い。この本とにかく村上先生の坐りが安定、ヘロドトスの如し。1行1行すべて自分が理解できた上での論証の記述なので読み手もそこをすい/\と泳ぐやうに読み進められるのだ。

「素顔のホスト万葉集」新宿歌舞伎町7月に歌集発刊:朝日新聞

ホスト君たちの本音ほろりの歌は聞いていろいろ考へさせられるところだが「その業界も頑張ってほしいなとは思うけれど何でも「万葉集」にするのはやめてもらいたいー」とロバート=キャンベル先生。これにつき村上湛君も天皇から名もなき庶民までの「万葉集」は国民的歌集といふ迷妄粗雑なステレオタイプのイメージが背景にあるのでせう、歌の名数を立てたいのなら三十六歌仙とか百人秀歌のほうが良ささう、と。成程。『ホスト千五百番歌合』とか『ホスト三吟百韻』はたしかにすてき。

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日中国交正常化30周年』といふ写真集(中国国務院新聞弁公室刊、2002年)を眺める。戦後の日本社会党の訪中からLT貿易の時代、それから田中角栄の日中国交回復といふ懐かしい日中史。そのなかで1997年に橋本龍太郎首相の訪中で柳条湖の満州事変現場参観の写真あり。今世紀に入り918事変は愛国運動の象徴になつてをり今では日本の首相が此処を訪れることなど想像もできないが当時はまだ日本の中国侵略といふ事実を真摯に捉へやうといふ姿勢が日中双方にあつたのだらう。
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 (米大統領選挙)民主党の副大統領候補に黒人女性のカマラ・ハリス上院議員 | NHK

バイデン氏、米副大統領候補にハリス氏指名 黒人女性で初:朝日新聞

このニュース、開明的なはずのNHK朝日新聞も「黒人、黒人」と騒ぐ。今日のジャパンタイムズを見たらハリス候補の紹介の最後に「両親が移民で父親はジャマイカ系で母親はインド系」とさらりと紹介で「黒人」の語を用いず。紐育時報などハリス候補のこれまでの政治キャリア紹介するばかりで人種に関する言及もなし。この「黒人」感覚は何うにかならないものかしら。紐育時報といへばこの2日、紙媒体で香港関連報道なし。11日のこれ

Opinion "Why Is China Coming After Americans Like Me in the U.S.?" by Samuel Chu - The New York Times

が最後。これもオピニオンで現地報道がないのは香港で国安法によるマスコミ管制に対するアンチなのかとすら推測するばかり。

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