富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

僑冠上海理髪店閉業


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星巴に寄つたら星巴もまず客の検温。アタシはマスクして入店したが一人のガイジンがマスクなく入店したら入店こそ拒まれなかつたがマスクないのであれば店内での喫茶ならぬ喫珈を店員に拒まれる。ガイジンはマスクして何うやつて珈琲飲むのだと当然の疑問。アタシだつてマスクの上から珈琲飲むやうなバカな真似はしない。ガイジンはアタシと目が合ふと「ほら、あのお客さんだつてマスクしてないだろ、店内で」と店員にいふが店員は矛盾もわかるが会社の決めた規則で従つていたゞくしかございませんと。不思議な世の中になつてしまつた。

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湾仔・甘氏焼鵝で外賣の焼鵝、叉焼と皮蛋を晩に自宅で食す。やはり焼鵝が美味。湾仔の肆は大陸客に評判でいつも行列長く焼鵝にありつくのも難儀したが今では行列もなくすぐに買へるやうになつてしまつた。ところで夕食の時間前後に陋宅マンション階上の家族、疫禍になり子どもが室内で時折、縄跳びでうるさいが時節柄これは致し方なく我慢。床を跳ぶ音が1ヶ月前はどたん/\と下手だったが、最近明らかに上達で跳ぶ音も軽やか。二重飛びに進め!子どもつて凄いと感心。ガンバレ!‬

江戸前ずしの悦楽―「次郎よこはま店」の十二カ月

江戸前ずしの悦楽―「次郎よこはま店」の十二カ月

  • 作者:早川 光
  • 発売日: 1999/11/01
  • メディア: 単行本
 

読もう、読もうと思つてゐたらこの本を入手して20年も経つてゐた。この鮨屋の親方は……といつても一人で魚河岸への買い出しから仕込み、店の掃除まで一人でこなすのだが水谷八郎氏で京橋の与志乃と銀座のすきやばし次郎で修行。独立に際してすきやばし次郎に迷惑にならぬやうにと横浜関内に店を開いたのだが、その後、銀座に凱旋で開いた「鮨 水谷」は『ミシュラン』ですきやばし次郎と並んで寿司屋で初の3つ星。それを9年連続2016年に閉店といふ大きな変遷があつた。この本の1999年当時、まだ鮨通の間で評判となつても関内でこじんまりやつてゐた店に惚れ込み、1年の旬を1冊の本にまとめたのが早川光氏の先見もさすが。

魚の旨味はアミノ酸イノシン酸がもたらすものだが、これらの旨味成分は魚の死後に形成されるもので、死後硬直が解ける頃に最大限に達するという。だが硬直が解けた魚は歯応えが失われ、見た目の新鮮さも損なわれるわけだから、旨味と食感をどうやって両立させるかは職人の経験と判断にかかっているのだ。

この本には巻頭に水谷八郎の寿司が一月から十二月まで美しく皿盛りされた写真が並び、それだけでも垂涎。実はこの本を今になつてやつた読んだのは先日とある場所で(といつても今はZoomでなのだが)寿司について語る機会あり、この本の内容を参考にして折角なので、この1年の寿司を表にまとめてみた次第。

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これを見ると平目や穴子、鯵など魚の旬が一目瞭然だが本の中でも水谷氏が何度も語るのはマグロがとくにさうだが海流魚で四季に合はせ漁場があつたものが気象変動の影響だらう、かなり時期外れに意外な場所でマグロが獲れるやうになつてゐた。それから20年では今は何うなつてゐるのかしら。

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北角の渣華道街市向かひにある僑冠上海理髪店。向かつて右が御婦人向けの美容室で左が理髪店。戦後、上海人の居住多かつた北角には今でも辛うじて数軒の上海理髪が残るが僑冠はそのなかでも筆頭格。40年営業続け今まで月損などなかつたのが、この2ヶ月疫禍で月HK$100K(140万円)の赤字で経営者も理容師も高齢で廃業を決定の由。アタシは90年代の末から中環にあつた新上海だつたか老舗の理髪店御用達の時期あり、その新上海が廃業の折に北角在住のLさんから北角邨の公共団地に同じやうな上海理髪があると教へられ、そこに暫く通つたもの。この僑冠には15年ほど前に数回行つたきりか。香港の上海理髪といふのは理容師(師傳)は上海出身でなければならず戦前からの「上海の流行ありき」で、上海を離れ香港に旅居となつた理容師や、その身内の弟子が髪を刈らなければいけないのだから必然的に老朽化で廃業は避けられず。これも香港の戦後文化の一つ。90年代に香港に移居した新井一二三さんも北角のこの近くのアパートを借りて……と思つたら、この僑冠の美容室で香港で初めて髪を切つたさう。

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