富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

清真寺褻瀆

農暦九月廿二日。未明に驟雨。昼過ぎに東九龍での野暮用済ませると快晴。付近の住民でもないのに九龍城に抜けるミニバス上手く探り家人との待合せに早く着いてしまひ九龍城街市楼上の休息場所に行くと通り抜ける風も爽やか。家人来て新三陽南貨に寄ると丁度、大閘蟹の旬の時期。


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樂口福酒家にてかなり遅めの昼餉はもう昼の営業終ひの時間だつたが受けてくれる。潮州料理の食肆なのにベタな生骨肉と炒飯でごめんなさい。


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反送中から20週目の周末だが昨日は小さな抗議集会こそあつたものゝ「暴動」らしきものはなし。


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だが民陣による九龍大遊行は警察許可下りなかつたが万人規模で市民が尖沙咀に集まり非合法での道路選挙からデモはネーザンロードを南進。

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アタシらは九龍城にゐて九龍城はMTRも通つてゐないので一連の反送中から逆権運動でも比較的平静な地域なのだがアタシはこんな日に限つて油麻地の映画館で映画見る予定あり九龍城で買ひ物の家人と別れ一先ずミニバスで旺角へ。ミニバスは抗議渋滞にも合はず順調だつたが旺角に来ると黒蟻団の諸君多く勇武派が出口閉鎖したMTR站の入り口に雑物置き放火。何故に警察がこの現場放置プレイなのかは嗤ふばかり。勇武派の特攻隊は警察なのでは?とすら思ふ。路上は焦臭く遠くから警察の機動隊が尖沙咀の方から黒蟻退治に迫るやうだが路上では抗議活動の傍らを普通に市民や観光客が歩いてゐるのも事実で表通りの店舗はかなりが臨時休業だが一つ通りを入ればいつもの旺角で飲食店もかなり開けてゐる。花園街の浩記甘味で汁粉啜る。


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黒蟻団の狼藉打毀しはMTR、中資系の銀行や商店、中共に媚賣の企業経営の店舗に限られるが交通信号破壊のための配電盤破壊は電気が焼けて焦げ臭ひ。消防が火消しすると猛烈に煙が上がり、これが目や喉にきつい。


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そのなかを黒蟻団の諸君が北上するなかを逆行で油麻地のBroadway Cinematiqueまで歩く。白シャツだからと身の危険も何もないのだが。映画館が臨時休業してゐなかつたのは幸ひだで上映より1時間も前に着いてしまつたが予約済の入場券発券ができない。窓口で確認すると「これ、ここぢゃなくて圓方の、ですよ」と……はっ?である。勘違ひはアタシが悪い。油麻地のこゝも映画館前の空間も黒蟻団の通り道だが高鐵站傍らの圓方商場に行かねばならぬとは。尖沙咀で始まつた本日午後の抗議活動は西九龍の高鐵站に向かひネーザンロードを旺角方面に向けて動き九龍の主要道路は自動車通行不能。でも歩くには狭い歩道ではなく車道が歩行者天国なのでありがたい。
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渡船街を抜けると添記法式サンドヰツチ店は平常営業。頑固者のご亭主にしてみれば逆権も警察もてやんでぇであらう。さすがに高鐵西九龍站に入る歩道橋は警察警備厳重。だからといつて身の危険を感じるものに非ず。これは現場で、マスコミの報道ではなく自分でその場にゐないとイメージできない「平常」かもしれない。


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で圓方の映画館も通常営業で見たのはロジャー=ウォータースの“US+THEM”である。同題の世界巡業のうち2018年6月のアムステルダム公演のライブ映画。ロジャー先生も御年76歳。それにしても矍鑠とした知的不良の人格はそのまゝ。アタシがピンクフロイド聴き始めてから、もう数年で半世紀とは。
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映画が公開されることを心待ちにしている。それは“US+THEM”はありきたりなロックンロール映画ではないから。観客が皆口を揃えて“yee haaaa!!!”って雄叫びをあげることもそれはそれでいい。けど涙してほしい。私はそう願ってる。“US+THEM”は行動への呼びかけである。人類(ホモサピエンス)は今まさに岐路に立たされている。皆で愛を共有し他人に共感し地球の利益の為に集団行動する能力を開発するか快楽(Comfortably Numb)に溺れたまま盲目の“タビネズミ”のように絶滅に向かって皆殺しの行進を続けるか。 まさしく、この“US+THEM”は“愛”と”人生”への投票なんだ。(ロジャー=ウォーターズ)


世界がなぜ平和にならないのか。何故、戦ひが終はらないのか。貧困。そのなかで子どもたちにどれだけの未来を残せるのかの瀬戸際。たゞのコンサート映像でもなく、といつてもピンクフロイドだからコンサートの視覚効果は超絶技法の連続なのだが、それに世界のドキュメンタリー映像も絡ませあまりに見事。

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たゞ左翼で社会主義者で人類と調和と平和祈るロジャー先生に疑問なのは、なぜブタやネズミを悪者にするのかしら。人類が動物に比べどれだけ愚かかといふメッセージも強烈なのだが動物には何の罪もないので蔑視はいけないとアタシはピンクフロイド聞きながら中学生の頃からさう思ふのだが。f:id:fookpaktsuen:20191020223147j:image

さて2時間の映画終はり陋巷は何うなつてゐるのかしら。今日は尖沙咀から始まつた抗議活動からの「暴乱」がネーザンロードを北上。やはり行き着く先は〈聖地〉としての太子站で旺角警察での抗争なのか。 


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地下鉄は荃湾線が中環〜美孚不通で西鉄も尖東とAustinを閉めてゐるが圓方のある九龍站を通る東涌線は幸ひ通常通り。これで無理なく帰宅可。結果論だが油麻地で映画を見てゐたら荃湾線の不通と道路選挙で路線バスも何うなつてゐたか。
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本日も香港警察は天下の宝刀で自慢の放水車お出ましで色水使つた水芸披露。


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それが信じられぬことだが尖沙咀で回教の清真寺の門前で色水放ちモスクを褻瀆してしまつた。法輪功系の大紀元時報(香港)の映像が「何があつたのか」が鮮明。あれほど抗議活動でモスクやイスラム系商店多い重慶マンションが暴徒の襲撃に遭ふと噂されてゐて実際にはそんなこともないどころか重慶マンション前ではイスラム人が抗議活動に参加の市民に水やお菓子などお振舞ひまでして和気藹々。そこで、この警察の仕業。


香港警察の相変はらずのお粗末。何故これほど粗忽なのか。これが合法的暴力の許容された暴力装置だと思ふと本当に怖い。更にこれが事故ならまだしも意図的?とすら思へるのだ。この清真寺前に黒蟻団など誰一人ゐないのである。そこでなぜ色水ショーをしなければいけなかつたのか。一度だけなら誤爆もわかるが二度目は明らかに清真寺前に佇む人々を狙ふやうに放水。抗議活動での勇武派にも警察が混じつてゐると実しやかに語られるところ抗議活動でイスラム教徒刺激して民方との紛争演出でもあつたとしたら。


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この清真寺褻瀆に放水車去つたあと付近にゐた市民が清真寺門前の清掃に自発的に参加。なぜダメな警察の後始末を市民がしなければいけないのか。

夜になり警察もさすがに慌てFB上にこの公務上失誤とイスラム社会への謝罪掲載し警察の尖油旺区の総指揮が清真寺に謝罪に訪れ部下の警官らにわずか5分の清掃活動させる。


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旺角地区では夜遅くまで黒蟻と警察の抗争続くが、それ以外の地域は日常のまゝ。帰宅途中に寄つた太古の岡田屋(Aeon)もかなりの賑はひで買ひ物デリバリー委託のワゴンが並ぶ。

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行政長官赴日本出席德仁天皇即位慶典

実は今日の「あっと驚きタメゴロー」ニュースは午後5時に発表になつた林鄭の明日訪日だつたのだが清真寺褻瀆には負けた。それにしてもこの香港騒動の時期に何故に林鄭が日本に天皇即位祝賀にのこ/\と出かける必要があるのか。職務放棄だろ。本当に最低の林鄭。

前政治部警官「暴力及和理非示威者無差別處理的失誤 論警政模式必然改革」 - 明報

かつてRoyal HK Policeで政治部幹部であつたMartin Purbrickといふ元警部が“Asian Affairs”誌への寄稿で指摘してゐるさうだが香港警察の反送中対応で勇武派と和理非を無差別に鎮圧することは錯誤であり香港警政モデルの変化。香港警察は67反英暴動当時の軍事化モデル(paramilitary)から過去20年で社区警政モデル(community police model)に変容を成功させたが今回の「鎮圧」は警察工作と市民の許容に大きな乖離あり警察上層部の判断不足あり察内部の良識的な声も反映できず独立調査委発足も受け入れられず管理困難に陥つた始末。612の立法会前での市民抗議活動で暴力的な活動家もゐたが、それと同時に平和的な市民も催涙弾を無差別に浴びせ警察トップが事件をすぐに「暴動」と形容、67反英暴動の当時の暴動罪適用。