富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

撤回翌日の憂鬱


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 林鄭「撤回」受けて日が明けてみれば思慮窒息のやうな空気。少なくとも、である、2003年の100万人デモの当時は国家安全立法反対と普選実現で多くの市民の意識に共通があり今回の反送中でも6月の市民デモの時はまだその共通意識あつたのだが抵抗運動の長期化で行動のお作法の違ひ露見。左翼市民運動陥りがちな落し穴。林鄭「撤回」は更にそれを分化著しく最早これで良し、暴力化する抵抗運動に食傷気味の大衆と更に五大訴求貫徹求める世論と相互理解相入れぬ局面。かうなると香港市民どころか在港或いは在日問はず日本人でもどこに立ち位置据ゑるかで意見異なるところ。心情的には逆権の意見多く、といふか、その立場の者以外網上にて声高に物申さず。さうなると何うしても心情的に逆権支持でアタシですら保守反動の類ひか。だが何れにせよ若者の行動を無謀といふは易いが彼らが四十になる頃には(アタシらはすでにお陀仏だが)香港の五十年不変の原則も明け中共と丸で同じ社会が香港に適用(強要)されるわけで今、できる限り抵抗すべきといふ憂ひの切実さは真摯に考えるべき。

それでも理解できぬのは逆権運動の若者らの敵は香港政府→香港警察→MTRとなり昨晩、寶琳站にて退勤する寶琳站長を罵り取り囲み小競り合いから暴力沙汰。楽しそうな笑い声が聞こえる。諸君らの敵は一站長に非ず。取り囲むなら是非、林鄭や警察トップの公邸や自動車を狙ふくらゐの思慮と勇気をもつてほしい!……彼らをこゝまで追ひ込んだ、駆り立てたのは林鄭、香港警察。それにしてもマスクを外されさうになると慌てて、それを防ぐ姿が覆面レスラーのよう。この現場を延々と録画していられる「記者」にも狂気を覚ゆ。‬

地下鉄の中とか乗客がみなスマホで傾頭族なのはもう何年も前からのことだが反送中になつてから隣のスマホ覗くと大多数が反送中関連のニュースや情報など食ひ入るやうに眺めてゐて(ってアタシもその一人なのだが)表情が憂鬱。かなりストレスもたまつてゐる。林鄭「撤回」でも晴れもせぬ憂鬱にさすがに精神的に疲労困憊。ふとNHK矢野顕子が自らが紐育のスタジオでお気に入りのハンブルク製のスタインウェイのピアノの故郷たどる話をみる。これに続いて紐育の教会にある古いパイプオルガン修理を専門にする青年の物語、そして舘野泉の近況……。少し心が落ち着く。

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信報の林行止専欄連載開始から43年で同一著者による世界で最も長期の連載としてギネスブックで認定。ちなみに次に長いのが日刊ゲンダイ五木寛之「流されゆく日々」だが連載回数としてはこちらの方が多い。この3日の林行止専欄(以下、要旨)
3日「市長功名一役盡 抗爭何堪意未酬」

一国両制の両制が今では中国との「利益共同体」か「資本主義的特色のある中共直轄市」かといふ選択となつてしまつたこと。内地は経済発展で生活は充足したがどれだけの自由を喪失しているのか。すでに経済的には余裕をもつた香港(そして台湾)の前途洋々な若者たちが自由を守るためどれだけの犠牲が必要なのか。東ベルリン市民が自由のため命がけでベルリンの壁越境を思ひ起こせば香港市民の抵抗もどれだけ底が深いものかわかるところ

4日「滿城風雨為何惡 自由選擇一炷香」

RTHKで利君雅司会で陶傑と環球時報総編集・胡某の対談について古勒馬の評論取り上げる。内地では得られぬ自由と権利こそ香港の若者が有して守護するもので香港政府が抗議者に対する弾圧はまさに、その残された自由と権利を剥奪しようとするもので、それがこの抗議抗争をより激烈なものにしてゐる。

5日「回應訴求嫌遲鈍 重啟政改莫蹉跎」

昨日、林鄭市長が撤回表明で広く市民との対話と述べたが、この撤回表明の前、公邸に市役所高官の他、建制派議員集め趣旨説明と理解求め、こゝに民主派議員を入れぬことじたい林鄭の広く市民との対話が体制側重視なのゝ証左。

また林行止が古勒馬を引用してゐる。こちらも林鄭の「漏洩」から「撤回」でここ数日、記述が続く。

胡總編的「太太利益觀」 – 古 • 字 • 誌

「胡陶」錄音 路透當真? – 古 • 字 • 誌

建制狂想曲 – 古 • 字 • 誌

アタシもとても一つ一つ要旨を綴つてゐられないが今日の「建制協奏曲」は大いなる「妄想」で興味深い。

これまで反送中3ヶ月の抗争、林鄭はこの過去3ヶ月ではなく、この先の3週間、つまり十∙一國慶のことを考慮、それまでの安定には警察力が必要。よつて独立調查委員会設立の可能性は0となる、しかし十∙一のあとは面白いことが発生するかしら。建制派でも独立調査委設立必要といふ意見もあり。11月の区議会選を前に公示ぎりぎり直前で林鄭辞任、信任の行政長官(代理)建制派と面談後に調査委設立を確約。これで反送中では劣勢にあつた建制派は民意の大きな支持を得るといふ筋書き。調査委の調査結果出たところで鎮圧に関はり必要以上の暴力揮つた警官の数は多すぎ個々の特定は不可能。警察トップの盧偉聰が(何うせ定年退職も近いのだから)引責辞職。公認の警察トップの下で心機一転、警察業務の改善図り政府寄りメディアは善良なる香港警察のPRを謀る。

かのやうになれば絕對是「如有雷同,實屬巧合」!と古勒馬。

https://www.hk01.com/01觀點/370391/香港需要的是-結構改革

https://www.hk01.com/01觀點/371267/管治困局求破-香港需要政治家

さらに要旨すらこゝに纏める余裕ないが香港01で于品海の言論が興味深い。反送中、逆権運動の背景に「結構改革」あり。それについての考察はこの3ヶ月の騒動のなかであまりに軽視されてしまつた。こゝを取り上げるのはさすがだが老獪なる于品海ゆゑかなりさまざまな思慮ありなのだが。