農暦七月初六。晴。知己、昔からこの日剩読まれてゐる、に「最近、画像ばかりで記述が少ない」と指摘受ける。確かに。我ながら香港のこの状況、あれこれ書いても「百聞は一見に如かず」で現状を垣間見てゐるだけで身も心も精一杯感あり。
今日の朝日新聞の時々刻々（香港から益満特派員電）「香港 吹き出る不満」は香港の状況をよくまとめてゐる。
この記事で「政府「身内」も反発」で公務員は先週金曜の集会といひ昨日のスト参加といひ反発明確だが重要なのは「衝突の前線に立ち続ける警察からも不満が漏れており」だらう。警察も「狗官」（権力の犬）だの「黒警」だの（これは一部、事実だが）と罵声浴び自分たちがいつたい何のために誰のために治安維持に駆り出されてゐるのか、かなり自律神経失調になつてゐる気配あり。
昨日の八五罷工行動。主催団体の一つ・職工盟によれば35万人がスト参加といふが職場放棄は10万人ほどか。主要交通機関が運休となり香港空港は欠航相次ぎ公共業務から証券取引や銀行、民間企業までビジネスも停滞、小売業は臨時休業……まるで台風襲来でシグナル８のやうな「社会活動の停止」となり「林鄭では香港社会が末期状況」顕はにと期待されたのだらうが残念ながら、さうしたパニックにはならず。その代わりかといふやうに夕方から各地で路上は険悪。昨晩は深更まで黒蟻の群れが香港各地の警察署等10数施設周辺で狼藉働く。
旺角には装甲車２輌初お目見得。
一晩で800発の催涙弾（ほかに20発の海綿弾と140発のゴム弾）放たれ148人が身柄拘束されたといふ。最年少は13歳の少年。
今朝、銅羅湾通りかゝるとLockhart通りとPercival街の交差点など道路表示に「狗官」等落書きあり信号機はスプレーで黒く塗られ毀され歩道の煉瓦は投石に崩されゴミ箱は雑物焼くのに用ゐられ焦げてゐる。路上には大量の結束バンド捨てられてゐるのは黒蟻たちがガードレールでバリケード作る際に使つた結束バンドを警察がバリケード除去で切り落としたもの。信号のない交差点で自動車も歩行者も注意慎重だが警察は交通整理にも出て来ず。北京の港澳弁がこの騒動２度目の記者会見。「中央坚定不移支持林郑特首」と譲らぬが興味深いのは「中央政府不会放任香港出现特区政府不能控制、危及国家统一和安全的动乱」との指摘。香港市役所が香港の「動乱」を管制できてゐないことを放任できぬ、と。
香港局勢發展至今天，市民最重要的任務是回復秩序，呼籲正義力量站出來，維護美好家園。要求市民，要像慈愛的媽媽一樣，把他們充滿莫名憤怒的孩子領回家，也要向阻止港鐵車門關上的破壞分子怒吼。
国家を家庭に例へたり抗議活動に惑はされる若者を親が暖かく家に迎へ入れ……とか本当にキモ悪いお説教。さらに学校で教へることの第一は「愛国」で香港の学校はそれが欠けてゐると江青似の報道官が叱る。
今回、反政府抗議は「反送中」から黒蟻たちは今では「光復香港、時代革命！」と叫ぶ。このフレーズ、本土派の梁天琦が旺角騒動で叫んでゐるが、これが今回これほど脚光浴びたのは721の元朗白色テロが契機だつたと李怡先生。建制派、警察と黒社会の繋がり。それは実しやかに流布されてゐたが、それが決定的に露はになれば、さういふ勾結に否定を求めるとき「革命」といふ強い言葉が用ゐられた。
▼中国が経済成長成し遂げ上海や深圳の経済規模を見れば最早、香港の経済拠点としての重要性は過去ほどのものではないとよく言はれる。さらに香港は中央政府から国税の上納免除され国防負担もなく大陸からの観光客で香港の小売業支へ経済活動も多大な支援受け、それで国家に何を不満とするか、となる。これについて劉健威が5日の信報に「中港矛盾加劇」と題して書いてゐる。1993年に青島啤酒が内地企業として初めて香港で株式上場してから今日まで１千社がそれに続き内地企業の香港での発行株価価値は総額5.8兆香港ドル（81兆円）に上り香港上場総額の66％を占め取引総額は常に７割以上が内地企業株で香港はすでに世界最大の人民元業務中枢なのだ……と、これは香港がいかに中国資本が主かを論じる際の好材料とされるのだが健威兄曰く、それだけ香港が中国にとつてどれだけ重要な金融市場なのか、と。よつて今日の香港がどれだけ混乱しようと解放軍が出動し治安維持できぬ最大原因。そして香港がその資本と経済システムで中国を支援しなければ中国の今日の経済成長は成し遂げられず。中国は香港を否定しつゝ、それの絶対性は否定できず「國內既封鎖有關香港訊息，再加上反港文章泛濫，中港矛盾加速擴大無以避免」と劉健威。
▼香港中文大学の香港亞太研の７月調査（18歳以上の市民732人に調査実施で回答率は37.1％）によれば林鄭視聴に対する市民評価は32.9pで６月より4.6p下落で行政長官就任後最低記録。この32.9といふ数字、支持率に非ず。支持率32.9％であれば最悪ではないが、これは「100点満点中あなたなら何点つけますか？」の成績表。33点ぢゃ所謂「赤点」で落第。驚くなかれ回答者の25.5％が林鄭に０点をつけた由（ちなみに100点は1.7%のみ）。林鄭内閣では元々不人気の政司司・鄭若驊が24.1pで林鄭より評価が低い。
そんな香港だが日テレの「火曜サブライズ」とかいふ番組で香港観光局の「大使」だかやつてゐるオリエンタルラジオの藤森某が竹下登の孫・DAIGO連れてディープ九龍巡り。香港に中学時代に住んでゐたといふ多少の怪しい広東語操る藤森よりDAIGOの音感の良さなのか広東語の飲み込み早いのには敬服。この番組で紹介された飲食店や訪問先、食べたもの行つたところの情報が価格.comに詳細列記されてゐるのには驚いた。
価格.com - 「火曜サプライズ 〜藤森が３年間住んだ香港でアポなし旅！DAIGOと11品食い倒れ旅〜」2019年8月6日（火）放送内容 | テレビ紹介情報
この香港紹介のあと「現在、香港では逃亡犯条例改正に反対する市民抗議デモと、それに伴う過激な活動が……渡航の際は外務省の海外安全情報等を確認して十分な安全を……」と慌てゝ突っ込んだのであらう「お知らせ」流れる。
▼あいちトリエンナーレでの「表現の不自由」展。名古屋市長の河村某が会場視察し「日本国民の心を踏みにじる行為であり許されない」と愛知県知事に展示中止求め維新の衆院議員も「公的な施設が公的支援に支へられて行ふ催事として極めて不適切」と同調。実行委事務局などには展示中止を！と抗議殺到で脅迫まであり展示中止の決定。大村知事は展示会を「税金でやるからこそ、表現の自由、憲法21条は守られなければならない」として河村某の発言に「検閲」で憲法違反と苦言。だが河村某は知事の批判に、それなら「あゝいう展示はいゝんだと県が堂々と言つてください」と反発。さすがに自民党からも、この「弾圧」に懸念の声あり。この「表現の不自由」展、これまでアート展で公開見合わせや展示拒否されたアート作品を集めて「表現の自由とは何か？」考へる機会を、といふ興味深い企画。トリエンナーレでの一企画で見たい人だけ見る、見たくない人は見なくてよいもの。これが会場の順路にあり見ること強制されたら大問題だが、けしてさうではない。開催する愛知県が「表現の不自由」展を「良い」と肯定することもあり得ない話。河村某のいふ「日本国民の心」が怖い。彼は皇民一億が一つの心にあると思つてゐるのか。
