富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

蘇州その③

農暦六月初五。夜中に大雨、落雷あつた由。小暑陽暦で七夕、乙姫凝らし着飾つた若い娘も少なからず。支那事変から82年。晴のち曇。家人と宿直近の苏州乐园站から一つ先の玉山へ。苏州乐园站は苏州乐园といふ遊園地直近でこの駅名となつたが苏州乐园の倒産と廃業。間もなく3号線開業で、この駅が乗換駅となるのに合はせ「獅子山站」に名前変更の由。玉山も広大な緑化された平地に高級マンション点在で、その核に高級消費場所があり地下鉄と連結。だが地下鉄利用者は少ないのだから客の多くは自家用車なのだらう。日系の泉屋百貨あり。近畿地方の中堅スーパーださうだが蘇州ではエノテカも入りイカリスーパー感あり。地下鉄で賓河路站に行き金河大厦ある新区の中心地まで歩く。その後、無謀ではあるが炎天下、日傘に隠れ松鶴樓分店まで歩く。実は昨晩、持参の箸を置き忘れ。受付嬢に「昨晩、箸を」と告げると帳場の経理が「はい、こちらで」と、さすが名店の有難い対応。城内に行くことにし折角だから蘇州麺の名店・同得興麺館に、と思つたが朝七時からで昼は今が正午で午後一時迄。路線バスでは道路渋滞も心配で途中、地下鉄に乗り換へ(実は幹線道路はバス専用車線完備で渋滞ないことに後で気づく)乐桥站から人民路を下り市体育場の路地を抜ける。

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さすが蘇州、運動場も蘇州建築。十全路渡り十梓路の同得興に12:40くらゐに着く。

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昼時の繁忙。愛想良き女将に整理券渡され15分ほどで着座。

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清湯麺に鴨肉の鹵味をつける。食肆は昼すぎにかうして終ひ明日早朝に開店。

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美味至極。蘇州公園抜けると日曜で、といふか曜日など関係ないか多数の老人たちが卡拉OK、ダンスに素人の大道芸……と拡声器咬ませ大騒ぎ。文革紅衛兵世代ゆゑ。ちなみに香港屯門での昨日の市民デモは屯門公園で香港の発狂老人らが公園で大騒音でダンスや卡拉OKで迷惑を駆除するものであつた。中国でのこの紅衛兵老人らの公園占拠はかなり深刻なのだが野放しのやう。

繁華街の観前街に少し入り東に折れ、やはり蘇州に来たのだから平江路の水路沿ひに往くが日曜午後でとんでもない人出。

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中国崑曲博物館でもある全晋会舘に向ふつもりが路地曲がり底ね、いや、それより横丁の道路が見当たらない。戻つてきてみると工事中で何かと思へば道路掘り返し水路の復活とは。暗渠にあらず、これは大変な工事ながら外城河の東辺と平江路水路結ぶ600mほどで下水道整備さへすれば見事な水路復活で風情ある路地ゆゑ、これは楽しみ。

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全晋会舘では日曜午後、昆曲好きのお素人衆が笛に合はせての唄ひの会。誰彼勝手に入つてきて皆さんで。まぁ、これが何とも風情あり。南の相門まで下る。折角の蘇州なので東の開発区「園区」に行つてみることにする。地下鉄に乗ればすぐだが路線バスで蘇州大學前から城域を出て東に干将東路を進み開発区の超高層ビル建ち並ぶビジネス街から金鶏湖の北を回り園区へ。此処はシンガポール資本による開発区。

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蘇州は西に新区、東に円区を有するが「新区」開発の後に都市計画の完成型のように出来たシンガポール資本による「園区」は超高層ビルと低層の消費施設が金鶏湖といふ恵まれた自然環境と調和して実に現代的に美しい……かぎりなく人工的なのだが。

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日曜日といふこともあり子ども対象の娯楽施設に憩ふ子連れの家族が、いかにも二子玉川的。

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水路、運河の水質はかなり浄化され悪臭がせぬどころか小魚泳ぐほど。此処には久光百貨店あり。久光とは日本のやうだが上海資本で香港の「そごう」の経営権買収したのも、この会社。園区から「現代大道」を2系統の路線バスで城内に還る。車窓からは晴天の空、金鶏湖を輝かせる夕日、緑豊かな湖畔をジョギングする市民、遠くの湖岸の超高層ビル……蘇州の新しい風景。確かにこれが「水の蘇州」の21世紀の姿なのか。城内に戻り、つい西北の山塘街の方に歩いてしまふ。平江路の観光化も凄まじいがこちらはさらに土産物屋ばかりで昼の暑さ避けた観光客が芋を洗ふが如し。通りに入るのも厭ひ裏道を地下鉄2号線の方に歩き晩飯を路地の安食堂で済ます。

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日本人など来たのが初めてのやうな店で勝手に啤酒を出し栓抜きはどこ?と帳場で尋ね笑はれる。ホテル近くのコンビニで眞露の二合瓶、17元で購ひ客室に戻り、これを飲む。
▼本日、香港では九龍で尖沙咀から西九龍の高鉄站に向かひ大規模な、主催者側発表で23万人余(警察発表は5.6万人)の市民デモあり。

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主催が「民陣」といつた泛民主派の表立つた組織に非ず呼びかけ人こそ数名ゐるがネット上で、リーダーも不在でこれだけのデモが実行できるとは。午後7時半だかのデモ解散後に黒蟻の若者たちが旺角で警方と対峙。今回のデモは香港のこの逃亡犯条例改正を、これが全く報じられてもゐない大陸民に事の大事知らせるがためデモを大陸客多き九龍で、それもデモの目的地を西九龍の高鉄站としたもの。

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港鐡は本日午後の西九龍発列車切符発売昨日より中止し利用者制限し警方も香港政府総部守るよりも厳重な警戒で西九龍站防御するのは此処に「一地両検」で〈中共〉がこの駅舎地下に存在するがゆゑ。