富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

憲法記念日

農暦三月廿九日。曇。気温摂氏廿度下回り肌寒いくらゐ。朝、J-WAVEでジョン=カビラさんの番組に電話で「セルフレジ」について話す。中国の路地裏の食堂でのスマホ決済のお気軽さをネタにすれば良かつたと終はつてから気づく。労働節からの中共連休で香港に大陸からの観光客甚だ多し。この連休だけで84万人の由。

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LVの背負鞄もお洒落だが明らかに山寨(ニセモノ)。もはや中共は強国なのだから本物を堂々と買ひ占めないといけない。早晩に土曜で賑やかなFCCのバー&ラウンヂ。日曜日に沙田競馬場で邂逅の藤井寺Y君とSちゃんが台湾への小旅行から戻られ今晩深夜の空便で大阪に還るので家人と会食。お二人は毎年年末の香港国際競馬に来られるが、いつも大人数で、かうしてお二人だけとの会食は初めて。台湾では高雄から台湾最南端の墾丁まで行つたさうだが折悪く暴雨だつた由。台湾土産でカラスミをいたゞく。Sちゃんが大の啤酒党で一緒に啤酒飲んでゐたが食事の最中に遉がに啤酒に飽きて口直しにジャックダニエル注文したらダブルで1杯なのに2杯来てしまつて機転のきく給仕が「もう2杯注いぢゃいましたからね」と2杯分を1つのグラスにしてくれる。かういふサービスは嬉しいかぎり。

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本日、令和になつて初の憲法記念日。読売新聞は「改憲論議、打開なるか……令和初 自民、草の根啓発に力」なんで凄んでみせるが毎日新聞で安倍政権での改憲反対48%(賛成31%)、朝日新聞改憲機運高まらずが72%、9条不変支持が64%と多数占め晋三宣ふ9条への自衛隊明記も反対(48%)が賛成(42%)上回る。晋三前の自民党改憲草案当時は憲法を現実に即した改憲が世論で積極的だつたのに対して晋三のおかげで改憲ムード下火になるとは何とも……。先帝は自らの生前退位俎上に載せたことで戦後日本の「この国のかたち」守る結果に。

(インタビュー 新時代・令和)日本国憲法の現在地 憲法学者・樋口陽一さん:朝日新聞デジタル

現政権で安倍晋三氏とその周辺が旗振る改憲では幅広い支持には至らず挫折するのでは。「言葉を積み重ねることで公共社会に共通の枠組みを築き続けていく」そういった文明社会の約束事をあまりに軽んじる政治家たちだからです。

三十年前にまさか聖上と樋口先生が憂ひ、思ひを一つにするとは想像もせず。樋口先生は天皇制など要らぬ共和主義者と。それが戦後の立憲主義を普遍なる価値として共有。さうした力の作用により、平成のうちに晋三内閣終焉は見られなかつたが、晋三らのインチキの化けの皮は剥がれ平成のをはり。では、これで一先ず安泰かといふと問題の肝心は何ら解決されてをらぬどころか問題視すらせぬ問題。樋口先生が憂ひて曰く

日本では、遠くから見れば表面的には大きな波風が立っていないように見えるのかもしれませんが、フェイクが横行し、すべての議論の前提である「言葉が持つはずの意味」が失われています。深層で何かが溶解し始めた状況、頑丈だと思われてきたものが崩れ去り始めている感覚があります。

天皇制について井上達夫教授の提言が興味深い。

記号化された天皇、一体化に利用する「われら」井上達夫:朝日新聞デジタル
天皇制は日本で最後まで残る奴隷制といふ言葉にどきりとするが一瞬想像したのは天皇と皇民の関係だつたが井上教授のいふ奴隷制とは左に非ず国民統合のため天皇、皇族から基本的人権すら奪ひ統合の記号(シンボル=象徴)として据ゑ置くことが奴隷制と。

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安倍晋三首相がテレビで令和の意味について「日本人がそれぞれの花を大きく咲かせる……」と、自分の政策と結びつけて宣伝した。今回の退位は、前の天皇が、象徴天皇のあり方など戦後民主主義の基本を国民に思い出してもらうための捨て身のメッセージだったと思う。しかし、結果的に起きたのは、これまでなんとなく皇室などが担っていた日本人の価値観や美意識を、首相自らが発信したことだ。首相が権力を持っているだけでなく、価値観まで導いているという印象を与えてしまった。とてつもないことが起きた。「国民はこうあるべきだ」という政府からの価値観の押し付けはファシズムを思い起こさせる。