富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

鈴木博之『都市へ』

農暦三月十八日。快晴。気温は摂氏30度で一寸外を走つてみたら汗だく。これからどれだけ暑くなるのか。午後、沙田の競馬中継見る。今季一番の外れ続き。R5のClass-3 芝1000mで前回のデビュー戦はClass-4で四馬身差で圧勝(最後2ハロンは22.67)の3歳馬 Voyage Warrior(評磅199)が0.54.89のクラスレコードで2連勝。この時計、Sacred Kingdomが2007年3月にClass-1で出した最速記録0.54.7に僅かに及ばずとも桁外れの強さ。調教師は両馬とも姚本輝で「Sacred Kingdomの再来」と喜ばずにはをれず。

昨日夕方放送の見逃しをストリーミングで見る。BS-TBS|ドナルド・キーンが遺したもの。平易な内容の追悼でキーン先生生前の業績や言動知る者には物足りなくもあり。太平洋戦争で米海軍情報士官当時、若く知性的な日本軍捕虜との交流が実に楽しさうなこと。

鈴木博之『都市へ』中公文庫を読む。シリーズ「日本の近代」の第10巻にあたるこれは文庫でも450頁の大著。鈴木教授といへば『東京の「地霊」ゲニウスロキ』で、この都市論も主に東京を舞台に幕末からの都市化に政治や経済だけでなくさまざまなベクトルがだう交叉するのかを緻密に語る。理想的な都市の姿は市街に商店やオフィスと、その建物の上に集合住宅があるやう社区であるが江戸時代からの「不可解な水平的広がりをもつ都市」としての東京が、幕領の屋敷土地が明治政府によりだう奪はれ払い下げられ、そこで何がおきたのか。機能的な土地再分配のやうで、どれだけいい加減に始まつたか……の膨大な博覧強記的な分析が読んでゐて実に面白い。都市の調和は回復されるのかが今日までの課題。 東京でお屋敷町が比較的郊外へと逃げ、大阪では住友家が茶臼山から住吉に移り、本来、都市における生活文化形成の責任放棄。さうした都市の水平的展開に対して中曽根大勲位から建物の高さ制限見直しや丸の内の容積率移譲特例(JR東日本が東京駅上空の容積を売却し駅舎復元工事に当てたのがこれ)等あり東京は空前の超高層ビル化が進んでゐるわけだが、現代の都市開発はそれぞれの超高層建築がどれだけ気鋭の建築家の創造的な建物であつたにせよ中に入れば紐育も東京もドバイもシンガポールも自分がどこにゐるのかわからぬほど同じやうな消費場所が並びオフィスとホテルがあり、とつてつけたやうな劇場やコンサートホール。確かに高層マンションに住民はゐるにはゐるが、それは超高級マンションを取得できる富裕層であり上述のやうな理想的な職住接近の都市環境とは大きく異なる。かうした土地行政の転換といふとエポックメーキングは角さんの日本列島改造論と思ひがちだが鈴木先生曰く、田中角栄日本列島改造論だが、これは本来、東京の過密と地方の過疎解消のため地方のインフラ整備で日本中広く美しく住みよい国土の創建であつたはずが結果的に地方の開発が企業による土地の買ひ占めと土建政治になりインフレ招き石油ショックで高度経済成長も滞り角栄失脚。その後も高速道路や新幹線などインフラ整備は進むが、これも結果、地方中核都市の活力生むより寧ろ人口も情報も権力機構もすべてが大都市、殊に東京への一極集中に。今も地方が壊滅的な状況で「都市化」の言葉は虚しくもある。ところで、鈴木先生の文章は「である」が多すぎて、ちょっとそれが(殊に序章から前半)。それと麻布の蝦蟇池がながらく残つてゐたが、それも消えたと鈴木先生は書いてゐるが(初刊は1999年)今でも確か残つてゐたのでは? かのやうな都市論を、その矛盾と限界まで読んでゐると〈台湾〉は面白いと思ふ。台北から高雄までが新幹線で2時間余で東京から名古屋の距離。台北の一極化はあるが(日本に比べると費用も安い)新幹線や高速道路のバスで何処からでも気軽に動ける距離。西幹線には台中、台南、高雄と大都市がありコンサートホール等の国家的な大規模公共施設を敢へて台中や高雄に設ける意欲的な政策も。台北市民も何かあれば南下しろ、である。都市の空洞化は台湾でも深刻で旧城内はそのまゝ郊外に新都市建設進む傾向にはあるが旧城内は商店と集合住宅の兼用建物多く住民がおり、古い建物を利用した(これは若者の就職難の裏返しなのだが)小売りや飲食業も盛んで日本のやうな駅前からのシャッター商店街化には至つてゐない。台北から台中を経て南に下る西幹線に比べ東沿海州は「開発」は遅れてゐるが、日本の地方のやうな過疎化は免れ台湾の原風景として観光など盛んでもある。そこで日本の気鋭の建築家たちが台湾での建築に意欲を燃やすことになる。


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スリランカでの同時爆破テロに大公報はイスラム過激派による恐怖を大々的に報じる。だから中共も国内で粛々とテロ対策を、となる。