富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

清明節とRicoh GR

農暦三月初一。陽暦四月五日にて清明節。掃墓拝神には絶好の晴日。水道工事で陋宅に今週出入りしてゐる師傳も昨日「毎年の晴明節は墓が粉嶺で一時間も山を登つたところだから大変だけど家族や親戚で、この墓参りは楽しみでね」と言つてゐたが先祖を敬ふことで一族郎党が毎年、無事に集まれることにこゝまで喜びを感じられること。郷里でも旧の盆に祖父の家に親戚で集まり従兄弟連中と遊ぶのが楽しかつた昔を思ひ出す。昨日までドソノを読んで頭がイカれてしまつたので日下部吉彦(1927〜2017)著『音楽を嫌いにする方法 辛口音楽社会学』(大阪書籍、1986年)読む。

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無理やりな音楽教育、コンサートでの拍手、ママさんコーラスのどう猛さwから東北、殊に福島がなぜ高校合唱から盛んなのか……辛口というがじつにユーモアたつぷりの音楽論で休日にさらつと読むには楽しい一冊。昼に一昨日、印度食材店で購入した印度マギーの即席麺啜る。

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咖喱味なのは当然として麺の何とも不思議な食感。午後、このまゝ塞ぎ込んでゐるのも……と家人と家出。船で九龍サイドに渡らうか、といふことになり北角か西湾河か、石頭剪子布!(ジャンケン)で家人が勝つたら北角、アタシが勝つたら西湾河といふことでアタシの勝ちで太古の団地から鰂魚涌公園の端を抜けて西湾河の波止場へ。それにしても暑い。寒がりのアタシも今年初めてTシャツ一枚。丁度、三家村往きの船の出るところで三家村へ。さすがにハーバーは風も爽やか。

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今日は二年半ぶり?でリコーさんのGRⅡを持ち歩き。いつもiPhoneでスナップ撮る習慣になつてゐたがリコーが、もう打ち切りかと勝手に思つてゐたがGRで4年ぶりにⅢ発表といふのを雑誌で見てチョートク先生のイカしたエッセイにも調査され数年ぶりにGRⅡを取り出したら電源も、本来は長く使はないのなら充電池外しておくべきだたが、長い冬眠からすらっと醒めてセッティングもちゃんと日付まで生きてゐることには驚いた。

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清明節でも何軒も海鮮屋も食肆も営業してゐる。

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GRのセッティングをやつと思ひ出して森山大道風にも撮つてみる。

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また同じ船で香港島に還るのも詰まらない。ちょうど来たミニバスで観塘へ。観塘は站周辺で大規模な再開発中。古いビルがどん/\取り壊されてゆく。

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路線バスで海底隧道潜り香港島へ還る。晩にカレーライス飰す。安部公房『第四間氷期』(新潮文庫)読む。

第四間氷期 (新潮文庫)

第四間氷期 (新潮文庫)

 

 昭和33年から翌年まで岩波書店の『世界』に連載。60年経つた今でも色褪せぬどころか万能の電子頭脳「予言機械」は今になつてAIとして実現しさうでDNAの組み替へも。地球温暖化による水位上昇。安部公房が当時類推した深刻な未来はSFであつたが今はこれが現実的問題なのだから。

人類は、ついに自然を征服してしまった。ほとんどの自然物を、野生から人工的なものへと改良してしまった。つまり進化を、偶発的なものから、意識的に変える力を獲得したわけです。

 このやうな〈現実〉の中で安部公房が高校生の時には最初『箱男』を読んで「奇妙な物語」と思つたものが時代を経るに従ひより現実主義的な物語として存在してしまふ。そして日常の狂気。

日常性というこのもっとも平凡な秩序にこそ、もっとも大きな罪があることを、はっきり自覚しなければならない。『第四間氷期』あとがき