富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

川島雄三〈雁の寺〉

農暦二月廿四日。曇。銅羅湾で散髪済ませ午後遅く中環。週末土曜午後に加へ観光客も多い。大舘。家人と香港映画祭川島雄三監督〈雁の寺〉見る。

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川島監督といふと幕末太陽傳だが水上勉のこれはアタシは直木賞受賞の原作も読んでをらず、だが水上の半生から内容はわかる。京都の禅寺塔頭の和尚・慈海(三島雅夫)に小僧・慈念(高見國一)を「まぁ女房代はり」と言はせるが水上自身が体験した京都相國寺塔頭瑞春院での生活がそれ。同じく塔頭の和尚・雪州演じる山茶花究も懐かしいが雁の襖絵を見事に描く画家・南嶽役の鴈治郎Ⅱがまぁ上手。湾仔のグランドハイアットホテル。Champagne Barで香檳酒一盞。

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米語で大声、奇声上げて笑ひ狂ふ軽装の若い客たちがうるさい。日本人もゐて昔、六本木で騒ぎ起こしたころの成田屋のやう。昔はずいぶんと格式高いバーであつたが、この若者たちばかりか随分とカジュアルでうるさい、蘭桂坊にあるやうな下世話な酒場になつてしまつた。給仕らも愛想は良いが作法が雑多な茶餐庁のやう。久々にGrissini意太利餐庁に飰す。

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こちらもドレスコードはSmart CasualだがTシャツに薄汚れたジーンズとスニーカーも許容のやう。給仕が見た目、礼節たもつてゐるが酒盃や皿を置くにも「あと1、2と数えてから」と言ひたくほど慌たゞしく忙しいにせよ卓の傍らを通るだけでも風圧で風が立つほど駆けすり回る。久が原T君にかうした給仕連の作法でも講じてもらひたいところ。AWといふ黒服の給仕長だけは作法も供する料理の説明も見事。家人と二人で前菜、パスタと主菜もいずれも一皿をシェアで、それでも脂汗出るほど満腹。路線バスで太古。誠品書店でKawecoの万年筆のインキカートリッヂ買ひ求めるが専属の店員が閉店間際ですでに売り場におらず他の店員は在庫がどこにあるどころか万年筆のインキが吸入式と詰め替への違ひも不明で「在庫は確かあの抽斗にあるはず」と客のこちらが売り子のやう。

湛先生が呟板に載せてゐる、これ。この感じ。飲食店でも小売店でもいつも「あのねぇ……」と言ひたくなる、こればかりは「日本はこれに比べたらマシ」と、つひ日本贔屓になる。やはり榛原とか鳩居堂、莨の菊水、タニザワ鞄にトラヤ帽子とか客の求めに「畏まりました」で済む、この感じ。たゞこれも店員に求めるだけではなく客も客で見識がないといけないから。帰宅してテレビつけるとBSの日本映画チャンネルでショーケン*1追悼で〈傷だらけの天使〉放映してゐる。「宝石泥棒に子守唄を」といふ記念すべき第1話で監督は深作欣二。アタシはこの1974年のドラマでマダム演じる岸田今日子も良かつたが岸田森にテレビドラマ「コメットさん」の父役で衝撃受けた伊丹十三に近いものを感じ岸田森がその後、NHK大河ドラマ元禄太平記(1975年)で荻生徂徠、そして「草燃える」(1979年)で大江広元を演じた時に何と適役か、と納得。懐かしくこれを見てゐたらドバイの競馬中継見逃す。ターフは佐々木大魔神のVivlosの複勝と香港でも一番人気・日本馬アーモンドアイとの連複に投票してゐたが結果を見ると的中。続くシーマクラシックもオールドパリジャンの強さは前提として日本馬に期待かけ老巴里人軸に日本馬三頭に流して連複、この四頭のボックスでワイドを押さえたら1〜3着的中。


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ドバイワールドカップは中継でも米国調教の日本馬、ハーツクライ産駒の吉田を褒めるので吉田を軸にしたが6着で外れ。それにしても8番人気のグロンコウスキーが逃げ切りかと思つたら2年前にアタシもドバイ観戦のときにUAEダービーに勝ち昨年のドバイワールド優勝のサンダースノー(1番人気)が最後200mから追ひ上げ鼻差で差し切りは感動的。


さすが世界一のレースである。見終はつたら深夜一時。

*1:ショーケンといふと、だうも大宮様、昭憲皇太后。久が原T君も昭憲さまと様付けけしないではいられない感じ、と。御意。