富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

三一一

農暦二月初五。朝、かなり本降りで天気予報外れたかと思つたが昼前より晴れる。実家の母よりアタシが注文した橋本治『リ ア家の人々』が古書肆より届き母は速読してしまひました、と。

リア家の人々 (新潮文庫)

リア家の人々 (新潮文庫)

 

橋本治北杜夫『楡家の人々』に触発されて、のこの戦後の物語であるし北杜夫も『楡家』はトーマス=マンの『ブッデンブローク家の人々』とマルタン=デュ=ガールの『チボー家の人々』に触発された、と書いてゐる。『ブッデンブローク家』は未読だが『チボー家の人々』はアタシは母が若いころに読んだものが母の書架にあり、それを高校生のときに読み今も大切にアタシの書架にある。母とかうした話をできるのも幸せなこと。今日は311の震禍、核禍から8年で、余計に小さな幸せを感じ入る。

▼今年もまた三月十一日を迎へる。悲しみを忘れない、語り継ぐ……大切なこと。だが、あの悲劇からあたしたちはいつたい何を学んだのか。防災は大切。だが防災には限界あり。あの悲劇を繰り返さないために何ができるかといへばドイツは原発から再生可能エネルギーへの転換を、台湾も脱原発へ。日本は「ダメな民主党政権」を否定し、その結果、安倍一強を産んだだけ。いくつも流れるマスコミの311関連ニュースのなかで陸前高田だつたか鶴亀寿司の親方がテレビの取材に「家族の人に言わたんだけど(自分が)やはりどこか「暗い」って」だから明るく生きていかないと、と。小さなことだが「家族の人に」って言ひ方にどこか優しさを感じる。これがテロップでは「家族に」になつてゐたが。NHKのNW9では311のニュースが30分続いたあと安倍内閣支持率は47%と安定で相変はらず「他より良さそう」。支持しないは44%で「人柄が信用できない」。つまり「人柄は信用できないが他に誰もいない」なのか。

香港のホテルThe Excelsiorが今月末で閉業。この一帯の地主であつたJardine Matheson商会が1973年開業の老舗ホテルでマンダリンオリエンタル傘下。46年の歴史に幕で建て替へて商業ビル化。46年前は振興商業地だつた銅羅湾……否、当時は「銅羅湾」は今の天后で、この一帯は正確には「湾仔鵝頸橋の向かふ」でエクセルシオールホテルはこの一帯、まぁ銅羅湾と呼ぶが、で最初に開業したホテルで、客室数900は香港島一の規模。アタシが大学2年だつたか母に誘はれ香港に初めて来たとき泊まつたのも此処。今では地下のディケンズバーにたまに寄る程度だが広東料理の怡東軒のレベルは高くCamminoも気楽な意太利料理であつた。