富柏村香港日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴る日剩でござゐます

農暦正月初九

農暦正月初九。昨晩寝しなと今朝未明から百閒を読んでゐた。「南山壽」を夜中に目覚め読んで、少し寝て「サラサーテの盤」を置きて読み始め世が白み始める……これは精神衛生上あまり良いことではない。清々しい朝が迎へられない。気がつけば若いころのアタシにとつて「奇妙な年寄り」であつた百鬼園なのに今これを読んでゐる年齢が当時の百閒先生と同じだと思ふと、つくづく年をとつたし、やつと百鬼園の世界が愉しめるの年頃か、と嬉しくもあり。本日快晴。今日もまだ地元の学校は私立など春節休み。中共の大型連休ですら先週一杯で月曜から平常なのだが。引き続き陋宅水漏れ問題。昨夕撮影したビデオと画像を管理事務所の青二才に送る。青二才暫くして電話してきて「関係者で確認します」で一時間後に「やはりテナント側の水漏れの可能性も否定できないので、そちらの部屋の上水道の元栓を止めて、それでも漏水があるかどうか確認した方が良いというのが当方の提案で」と。洗面所だけの水道を止めるやうな分岐部分だけの栓はない。もう面倒なので「では家人が午後3時に出かけるので、その時間で元栓止めて夜6時にはアタシが自分で確認するから」といふと「お願いします」と青二才。で結果を青二才は午後6時で退勤だから明朝にでも連絡すればいいのか、元栓止めて漏水がなかつたら当方の責任部分となるが漏水が続いてゐたら管理事務所の責任で、その時はだうするのか?と質すと「……だつたら、また現場の漏水の原因を確認して」と青二才。「さういふのを堂々巡りといふのだ、それぢゃ進展がないだろ、今夜アンタなり誰か来て一緒に確認すれば済むんぢゃないか」と責めると「検討します」。午後3時に青二才から電話あり「元栓止めます、6時には私が(あり得ないが)或いは誰を寄越します」かと思へば「当方のプロフェッショナルに、いたゞいた画像と映像を見せたところマンション側の水道管の工事が必要と言つてゐる」ので工事を始めたいが春節前から継続の緊急工事が立て込んでゐて(なにせ18棟もあるのだ)ワーカーがまだ春節休み明けで足りず来週月曜以降に」といふ。突然の前向きはありがたいところ。だがこゝまでの判断に何故に4,5日も無駄にするのか、昨日まで来た連中は管理事務所職員の工務担当者だつたがプロフェッショナルぢゃないのか……と呆れるが今日のこの「要修理」と断言したのは出入りの外部業者なのだらう。で青二才は今日予定した断水は不要だといふ。さう言つてくれゝば水漏れはまだ暫く続くが階下からの苦情はないといふしアタシらが不便するだけで費用負担ナシでありがたいところ。だがアタシも根っからの凝り性。今日の断水はやることにする。この断水で水漏れが止まると一転して当方の責任となるのだが……アタシは凝り性どころかドM体質なのか。帰宅して上水道断水後の洞窟内を確認。やったーーーっ!、水がしつかりと貯まり水漏れしてゐるではないか。


漏水で廊下まで浸水してゐるのを喜ぶアタシはつくづく気違ひだが、テナント側の水漏れが原因でないことはこれで明らか。冤罪が晴れたのだ。なんでこんなことに、こんな日数と労力をかけてゐるのか。本来であれば
①漏水発生 →②管理事務所の現場確認 →③とりあえず原因解明のための検査(タイル壁は穿つ必要あり) →④保全のための応急措置
までは4日間で、とはいわぬが(春節もあり)せめて4回の作業まで終はつてゐるべきところ。今はやつと③に辿りついたか、つかないか。それも②はほとんど役立たずで③まで、タイル壁を穿つ作業以外は、すべてアタシが自力でやつてゐる。本来、かうした状況に精通してゐるべき担当者が誰彼とも「思ひつき」でしか判断ができず、それも立派な「勘」なら良いが、全く根拠もない屁理屈並べるだけで状況改善が出来ぬのだから。今夜は知己と会食の予定だつたが、この漏水対応で順延にしたもらふ。急なことで家人も夕餉の拵へなく晩に家人と西湾河で待合せ。西湾河は渾沌たる集合建築・太安樓の基記水電工程の牛什煮込みの串が懐かしいが「水電修理屋の屋台」は食品衛生当局の取締りで今や伝説。その場所に汚い屋台で供す魚蛋の串を頬張ると、これも悪くない。

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太安樓内の果物屋で家人と会ふ。こゝの店猫がまぁ可愛らしいこと。

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アタシにとつて西湾河での「街場の食堂」たる景福茶樓で夕餉。古魯肉(酢豚)とレバーなどたつぷりの八珍炒麺。

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啤酒飲みながら今晩開催中のハッピーバレーの競馬予想してゐたら家人に「奥にも奥さんとかな、は全く話もせず競馬予想に夢中なオヤジがゐる」と嗤はれる。競馬中継も見ずに適当に複勝中心に馬券買つたら、そこ/\あたり多少の黒字。

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Citibankのクレジットカードが更新で届いて何か違和感あるな?と思つたらカードナンバーの凸凹がない……もうICチップで認識ばかりなので、あの凸凹のナンバー表示どころか表面にナンバーも不要なのか(さすがに裏面にはナンバー印刷あり)でもクレジットカードといへば、あの凸凹だったのに……あのカーボンでナンバー読み取る「刷!」(シュワ)の音や場合によつてはカードの上に用紙置いてボールペンでガリガリと謄写してゐたのも懐かしい。

サラサーテの盤―内田百けん集成〈4〉 (ちくま文庫)

サラサーテの盤―内田百けん集成〈4〉 (ちくま文庫)

 

内田百閒「サラサーテの盤」は周知の如く鈴木清順監督の映画「ツィゴイネルワイゼン」の原作。アタシは百閒の「サラサーテ」を読むよりずつと前に水戸の新水戸会館のオデオン座?で映画を見て一度見ただけでは「わけがわからない」高校生だつたが幸ひに家には商売柄、映画館毎の招待券が毎月何枚かあり、それを使つては学校を抜け出して映画を貪るやうに見る日々で、この映画も上映期間中に3度くらゐ見て「なんだかワケがわかんない」まゝなのだがストーリーなどすつかり覚へてしまひ「わけがわからない」といふことが当然で、それを前提に何度でも愉しめるやうになつてしまつた……橋本治みたいな書き方だが。で百閒の「サラサーテ」を読んでみれば「わけのわからない」百鬼園が書いた小説を松竹で「わけのわからない映画を撮る」とクビにされた映画監督が撮るのだから「わけがわからない」ことで面白くないはずがない。負の二乗が結果として傑作を生んだのか。だが百鬼園のあの小説を清順監督はよくもあそこまで145分もの長尺の映画にしたものだと今更ながら感心。主人公の中砂に原田芳雄、妻・園と小稲大谷直子(二役)に友・青地が藤田甚八、これを麿赤児山谷初男玉川伊佐男樹木希林佐々木すみ江らが脇を固めてゐるのだから。