富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

超高齢化社会

農暦十二月十四日。昨晩から一泊温泉に浸かり市中に還る。


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路線バスで遭遇の老夫婦。終着駅に着き老人は老妻に「着いたわよ」と促され立ち上がるくらゐ軽い呆け。二人分の料金払ふのに460円のところ千円札出し運転手に、これで両替して料金払つてくださいと言はれ料金入れたが「100円の釣り!」と云ふ老人。運転手が投入金額表示みて460円ですよ、お釣り出ませんよと告げれば自分が100円余計に入れてしまつたのだから諦めればいゝのに「100円!」と。出ませんよ、と運転手。「客だぞ」と老人は「こんな、わかりづらい!」と運転手に苦言。運転手は仕方なく、かういふ客がゐるためなのらだう、業務用の袋から100円を渡す。その後に入った駅前のコーヒー店では元気さうな老女二人、普通に注文して自分で飲み物などテーブルに運んで。そのうちの一人がトイレに入つたら出てきて店員に「水が流れない」と言ふ。店員が壁のタッチパネルで「こちらの大か小を押せば」と説明すると「あら、こんなのわからなわ」。列車では息子の嫁に連れられたかなり高齢の老婆は列車が川を渡れば「あら、もう◯川」「このあたりの光景も昔とは随分と変はつたわね」と(おかしな老人を立て続けに見た後だつたので)このくらゐ意識もはつきりしてゐれば大したもの、と感心してゐたが嫁が「駅にタカシさんが来てくれてますつて」と老婆に告げると「え、なんでタカシさんが来るの?」と不思議がる。嫁が「今日はタカシさんのおうちに伺うって言つたでしょ、だから出かけてきたんだから」と言ふと「あら、そうなの、そうだつたの」と今日の外出の目的は全く理解してゐなかつた。超高齢化社会……寿命は伸び老人たちが社会で出歩き生活してゐて元気さうだが、やはり何からしらの呆けは確実にあるのだと痛感。今日は夜は馴染みの寿司屋へ。酒は純米超辛口で石巻の日高見と会津写楽を飲む。刺身が終はり寿司が始まるとアタシはもう日本酒は飲まず。お茶を飲んでゐたが途中で口直しにカラスミ供され、お茶じゃチーズ食べながらお茶飲んでゐるやうなもので、この時だけは信州上田の亀齢生原酒を一口いたゞく。知己のバーに寄る。成田屋の襲名の話になり十一代目が五十六で亡くなり夏雄さん(十二代目)が六十六となると次代が七十六となるのか。十四夜の月を愛でる。

https://kennakahashi.net/ja/news/eiki-mori-family-regained-the-splash-we-brush-our-teeth-take-a-shower-put-on-pajamas-and-go-out-into-the-street-dafiff
気鋭の写真家・森栄喜の“Family Regained”から派生した“The Splash”といふ16分ほどの映像作品を見る。タイトルからも二人が狭いバスルームでの姿にせよ普通に連想するのはエロティックな展開なのだが二人が服を来て出かけてゆく……しかも行き先は映像からは全くわからないがデモか抗議集会なのだといふ。面白い裏切り。