富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

青柚の香も遠かりし残暑かな

fookpaktsuen2018-09-05

農暦七月廿六日。晴。
▼(行動経済学)損失の発生が予想できると人間は合理的な選擇よりもリスクの高い選擇に傾きがちになる。……ノーベル経済学賞を受賞するほどの行動経済学の一つの学説で、日本がなぜ昭和初期に米国の石油禁輸でジリ貧が想定されるなか対米開戦といふ選擇をしたのか、もこれで分析できるといふ。だが、この人間の判断は競馬や博打好きの人間にとつては昔からよくわかつてゐること。
▼(朝日新聞8/30)「同性婚制度不在、違憲では」木村草太。 同性婚の法制化については「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」すると定めた憲法24条に違反すると誤解してゐる人が意外に多いが、それは誤解、と草太先生。(以下、草太先生の他の法学者の引用部分の引用元を削除)

憲法民法の下では婚姻の成立に家制度における「戸主」の同意が必要とされていた。また女性に対する婚姻強要も多かった。連合国軍総司令部GHQ)案作成に関わったベアテ・シロタ・ゴードン氏はこの状況を憂え男女両当事者の婚姻意思を尊重する条文を起草。日本側も受け入れ現在の憲法24が成立。
制定経緯からすると同条が禁じるのは同性婚ではない。当事者、特に女性の意思に反する婚姻だ。あくまで「第三者の意思に」「干渉されない」こと。最高裁判例も同条は婚姻が「当事者間の自由かつ平等な意思決定に委ねられるべき」ことを規定したものとする(2015年12月16日大法廷判決)。
では憲法24条は同性婚を積極的に保護することを求めているか。通説は同条の「婚姻」は異性婚を指し同性婚を保護せずとも違憲とまでは言えないとする。長谷部恭男氏の教科書『憲法』は「憲法は同性愛者間の家庭生活を異性婚のそれと同程度に配慮に値するものとは考えていない」と言う。
政府解釈も「同性カップルに(憲法24条にいう)婚姻の成立を認めることは想定されていない」とする(2015年2月18日の参院本会議で安倍首相答弁)。これは憲法24条の「婚姻」は異性婚の意味だとする通説を前提に同性間での異性婚の成立は想定できず同条の保護は同性婚に及ばないとしたもの。
たしかに男女の不平等が存在しえない同性カップルでは憲法24条を適用する必要もない。もっとも最高裁判例夫婦別姓訴訟判決において「当事者」の合意を強調しつつ「男女の合意」という言い方を慎重に回避した。同性婚憲法24条の保護を及ぼすことに含みを残す。
通説・政府解釈は憲法24条の保護は同性婚に及ばないとするが、これは同性カップルの婚姻に法律上の効力を認めると違憲になるという意味ではない。同性婚憲法24条の保護を及ぼさないことと同性婚法律婚の地位を与えることを禁じることは異なるもので「同性婚法律婚としての地位を与えるかどうかは法律に委ねられている」。同性婚に法的効力を認める法律が違憲無効だとする学説はない。
他方、同性婚を認めないことに違憲の疑いをかける学説も増えてきている。異性婚と同性婚の保護の不平等は「合理的な根拠」がない限り平等権侵害になる。同性婚の権利は自己決定権として保護する解釈を検討すべきで「同性間の結婚が許されないのであれば、その合憲性が問題とされよう」。同性婚制度の不在は「13条(個人の尊重)、14条(差別の禁止)」から問題。
通説・判例・政府解釈は同性婚違憲説をとっていない。むしろ同性カップルの保護不足に違憲の疑いが強まっている。婚姻は、個人のアイデンティティーのよりどころ、生活基盤となり得る重大な事項。婚姻するかしないかは自由だが「その選択権がそもそもない」という状況は早急に解消すべき。