富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

玉井と西来庵事件(大正4)

fookpaktsuen2018-07-04

農暦五月廿一日。昨夕から断続的に大雨。台湾は雨が似合ふ。朝四時起きで(といふか起きてしまふ)休暇ながら夜明けまで机に凭り仕事。套間だと寝室で家人寝てゐても居間で気にせず机仕事できるのはありがたい。朝六時半にラウンジで朝食。八時半過ぎに台南站前のバスターミナル。玉井往きのバスは出たばかりで次は9時で雨空の下にバス待つがバスが来たのは09:10でバスは山沿ひの新化の町を抜け玉井に向かふが 睡眠不足のアタシは白川夜船ぢゃないが一時間余のバスも寝てゐる間にあつといふ間に玉井。玉井に近づくと丘陵は一面のマンゴー畑。玉井の小さな市街で西来庵事件の記念館訪れる。この一帯は元は製糖工場で記念館はその招待所。近くに見るからに神社跡地と蒋介石銅像が広場に寂しく孤立する学校跡地。西来庵事件は大正4年に、この玉井(タパニー)で発生した武装蜂起。日本の台湾統治開始から20年後、統治半百で本省人による最後で最大の反乱事件(霧社事件は昭和5年)。首謀者は余清芳(1879-1915)。苦学して警官になつたが詐欺に関はつた廉で退役し復職し役場職員にもなるが長続きせず清に対する大明復古のやうな思想から抗日へ。日本人95人殺され総督府の臨時法邸で死刑判決を受けた者の数は実に866人。これに国内でも厳刑すぎると反論あり実際の死刑執行は95人(殺された日本人の数と同数!)ので他の者は大正天皇即位の恩赦で減刑。殺された日本人巡査らの名前も次郎、末吉と田舎の非嫡男が南洋の植民地で警察になり、地元民で同じ警官の……と思ふと因果。玉井の果物市場へ。今は台湾マンゴーの盛り。まぁ澤山の農家がマンゴーなど果物持ち寄り籠売り。これが問屋や仲買人が買付けるのか、そのへんのシステムはわからない。個人でも籠買ひならできるが、いくら好物でも旅行中にはそれも無理。乾果店で無糖のドライマンゴー土産に買ふと少し割り引いてくれたが、その上で店の小母さんが「これ、持っていきな」と大きなマンゴー2つくれて「もう一つ、おまけ」と。隣接の公営市場の屋台で蠔仔米線啜り果物市場に戻り観光客相手のマンゴーアイス屋に芒果冰頬張る。12:45の路線バスで台南に戻る。ホテルに戻り客室で机に凭る。旅行中でもメールでの返信は今日日当たり前田武彦。その上、今回から旅行にLENOVOのノートブック持参。ヰインドウズで、しかも10の時代でネットブラウザはEdgeなのに今どきInternet Explorerでしか動かないシステムを使ふ某銀行のおかげで遠隔からの取引は、これしかダメ。でJAVAを入れて動かすまで一苦労。このシステムは15年前くらゐから進化しておをらず。このまゝ化石のやうに遺るのか。ホテルのジムのサウナに一浴。ハッピーアワーで啤酒。雨も強くはないので出街して民族路に沿ひ路地から路地を巡り永楽市場の先、康樂街にある文字通り康樂街牛肉湯。牛肉湯は朝食が定番で牛肉湯供する食堂も午後早めには仕舞ふところ多いなか此処は深夜までで味も評判。確かにこんなクリアで好あつさりなコンソメは初めて。ホテルまでの復路はまた民族路に沿ひ同じ道を還ることになるので雨も歇まずタクシーに乗る。男の運転手の助手席には女。黙々とデバイスでテレビ番組を見てゐるがトラックの助手席に相棒は自然でもタクシーだと生活臭く何だかこちらが自家用車に邪魔したやうな気分。

▼実家が30km圏内となる東海第二原発につき原子力規定委員会が新規制基準満たすとして適合判断。さらに福井県大飯原発差し止め請求に裁判所(高裁金沢支部)は「原発の危険性は社会通念上無視しうる程度に管理統制されている」。さらに「福島事故の深刻な被害の現状などに照らし原発を廃止・禁止するということは大いに可能であろうが、その当否の判断は司法の役割を超える。国民世論として議論され政治的な判断に委ねられるべき」とお手上げ宣言。憲法9条自衛隊での違憲審査と一緒。国民の安全など二の次の国策。それに対して台湾は福島核禍のあと脱原発政策に転換。今日のニュースでは第4原発は運転中止後の閉鎖に向け核原料、廃棄物を米国に輸出。
▼蹴球の世界盃。日本の16強での敗退。3度目のことだが初得点しかも2点を強豪白耳義から。2点先行からロスタイムの最後の最後で逆転のサヨナラ負けに「よくやつた」と賛辞続く上に「敗戦直後、日本代表がロッカーに残したメッセージに世界が感動」なんて後続「報道」まで。敗戦直後=二重橋の世代なので、あの敗戦直後に皇居前廣場で二重橋に向かひ土下座する臣民たちの映像もかなりの部分があとになり強調され一億総懺悔的に記憶化したものだが(閑話休題)、ロストフナドヌ敗戦のあと試合会場のロッカールームが選手団によりきれいに掃除され美観に、そして入り口の棚上にロシア語で「スパシーバ(ありがとう)」のメッセージが書かれた紙も残されてゐたといふ(こちら)。それについて世界各国から「ありがとうのメッセージは桁違いだ」「arigato」「真の勝者がいた」と「称賛の声が寄せられてゐる」といふ。ネット社会のカルト。ホテル滞在で退室時に部屋をきれいにして「ありがとう」のメッセージ残すことと何ら変はりない話なのだが。控室をきれいにしただけで「真の勝者」とは……。かうしていつも「いい夢を見させてもらった」で睡眠不足でも次の朝からまた平凡な生活が始まる。