富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

A Ciambra

fookpaktsuen2018-03-22

農暦二月初六。快晴。晩八時すぎまで官邸執務室にて残務。九龍塘。九龍塘の地下鐡站より九龍灣國際展貿中心(KITEC)にシャトルバス頻繁に出てゐるが、そのシャトルバス乗り場まで商場抜け歩くの考へたら、と歩く。やたらガイジン多いと思つたら猶太系のKellet Schoolが九龍湾に立派なキャンパスあつて、そこで晩の何だかの集会跳ねたところ。猶太人の教育投資には学ぶべきところあり。KITECの映画館でジョナス=カルピニャーノの映画“A Ciambra”見る。香港映画祭の上映作品の一つ。今年も映画祭ではアタシは数本のみ。カルピニャーノ監督といへば処女作『地中海』人口に膾炙したところ、この次作も南イタリアカラブリア舞台にロマの少年の物語。同じ流民で猶太人が異郷にて手堅く生きるのに対してロマは異視され下層社会に生きカラブリアでも郊外の荒廃せし廃虚の如き公共住宅とバラックの集落で産業廃棄物や自動車解体などで糊口を凌ぐ日々。猶太にとつて教育が大切ならロマの子どもたちは教育受ける学校もなく路上で遊ぶばかりか煙草を美味そうに吹かし少女はまるで淫売婦の如く大人びた化粧。主人公は14歳のピノスマホは持つてゐるしロマ語の他に不慣れな意太利語、同じ下層階級であるアフリカからの難民たちとはケニア出身の娘とは簡単な英語も口にはするが文盲。スマホのSMSが読めない。電気は公共電線からの違法摂取で大家族の男たちも自動車解体を生業にはするが悪い仕事にも手を貸して警察に逮捕っぴかれ家族の貧困でピノも生活費工面しようと、そこで仕事口などないから鉄道での旅客荷物の置引きでスマホやノートブックなどをアフリカ難民営で売り現金工面して祖母に渡す。貧困は日に日に厳しくなり最後はアフリカ系で地道に家電の売買を生業にする年上の親友の倉庫から在庫盗むことを悪い奴から唆され悩んだ揚げ句それに応じてしまふピノ。夜中にその盗み働くときに、この彼が倉庫に戻らぬやうに彼を呼び出せば暗澹たる表情のピノの額には暗い夜道で自転車で転んだ傷も痛々し。ピノを優しく先輩のまなざし。救ひもなにもない世界。絶望的。予想以上に面白い中上健次的な物語であつたがロマだからといつて〈馬〉が象徴的、幻想的にモチーフとして用ゐられるがアタシは余計に思へてならず。この社会的作品がなぜ?級の成人指定なのかと思つたら集落で子どもたちが酒煙草に溺れる程度で(お薬関係は無し)最後、親友裏切り悪さに更に嵌つたピノが悪党に「おまえも大人の男だ」と汚い路地に屯する夜鷹の処に連れてゆかれ身の毛も弥立つやうな淫婦に立つたまゝズボンとパンツ降ろされフェラチオされる、それも性器も行為ぢたいも映らぬ象徴的シーンだけなのだが。このやうな映画こそ同世代の若者たちに見てもらひたいところだが。映画終はると半夜三更近いがKITECから急流塘站まで頻繁に無料のシャトルバスあり。