富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

陳其南先生

農暦十月初六。薄曇。毎朝、北角の香港殯儀館前をミニバスで通るのだが大きな殯儀あり何人かと思へば金庸先生のご葬儀。哀悼。

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蘋果日報に台湾で国立故宮博物院が2020年から数年閉館して大規模改修といふ記事あり。

かうした美術品にほとんど興味なく、この故宮博物院も35年も前に初めて台湾訪れた際に一度っきり、それも少し郊外まで路線バスに乗りたくて出向いた程度で、その後一度も訪れてをらず。なのでこの記事もさらりと読んでゐたが今年7月に院長に就任した陳其南とあり一瞬、目を疑つたが、やはりアタシが90年代初頭に中文大学で私の指導教官であつた其南先生。米国耶鲁大学で文化人類学の博士号とられた碩学だが当時、国府で「党外」寄りのため台湾に自由なく香港で旅居の身。どこか世間から隔世で実に可愛がつてくれアタシの日本語で書いた拙いレポートを台湾の民主派系雑誌『當代』に翻訳の上、掲載してくれたたこともあり。『當代』1990年12月号「日本観点的釣魚台事件」(こちら)。それが急きょ先生は台湾に還ることとなりアタシの指導教官はDr Nicholas Tapp教授となつたが其南先生は台湾が李登輝総統の下、著しく民主化進む中で中央研究院に入られ民進党で阿扁総統になると公民や公共コミュニティにつき行政院の政務委員、国策顧問、日本でいへば文化庁長官のやうな要職を歴任。その後は半ば引退で大学で客員教授で余生送られるのか、と思つてゐたら故宮博物院院長とは。

しかも蒋介石が中国の故宮から持ち出した財宝展示して国府の正当性をば誇示するがための博物館で「故宮台湾化」とは大胆な。だが個人的には台湾の民族文化、風土文化的なるものと故宮博がもつ中国古代からの国宝的芸術品とは全く違ふものゝ気がするし故宮博はあくまで北京にあるべきもの、の展示に固守すべきでは? あるいは一切合切を中共の返上してしまふ方が大胆な戦略かも……。