富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

ロバート=キャンベル「マストは真っ直ぐに」

農暦十月初五。曇。

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昨日、日曜日の日経文化欄でロバート=キャンベル博士のエッセイ「マストは真っ直ぐに」読む。抽斗の整理の話からパートナーの几帳面さ、で弘前の和菓子の話と来て、さて本題……って凄い展開。比喩とか盛りすぎ、引用多すぎてアタシはちと苦手。文人たる久ヶ原T君にいはせれば荷風や夷斎か典型的な昭和の大御代の文化人エッセイで、キャンベル先生の日本語の根源がかうしたスタイルなんでせう、と。同世代の日本人にこんなふうに書ける人がゐないと思へば文化財級。散りばめられた引用も、その古人の文章に興味あり、そこからの視点。「血肉化した教養がまずあつて、その「型」から現実を捨象する態度」。なるほどさういはれればSir Kazuo Ishiguro がいかにヴィクトリア朝時代の英語表現に泥んだか、と同じで外国人ながら異文化、殊に文學で「自分が偏愛する作家なり文体なりに染まりきってこそ」でせうから、とT君。彼はアタシの友人のなかでは格上の文人で、余談だが、小学生の頃に樹木希林(当時の悠木千帆)が法華経に熱心といふやうなことまで読んで知つてゐたとは……恐れ入るばかり。