富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

成瀬巳喜男『流れる』

農暦十月初二。だいぶ日暮れも早くなり暗いなかタクシーに乗るとダッシュボード上にスマホ並べ視界狭いのに今更驚かぬが渋滞で運転手が須磨帆弄り谷歌(Google)で調べると出てきたのがこの画面。

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何をふと調べたのか遠くて判読不能だが高尚なことだけは確か。
湾仔で家人と落合ひ北京餃子皇に飰す。この食肆の名、英語では普通に譯せばPeking Dumpling KingだらうがPeking Dumpling Wongとしてゐることに今日初めて気づく。英語人にはWongでは意味不明。

久々に藝術中心。すつかり寂れてゐる。地下の映画場で成瀬巳喜男『流れる』見る。

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もう何回見てゐることか。香港だけでも三度目かしら。それでも面白い。もう筋や大女優らの演技よか細かいことに目がいく。勝代(デコちゃん)が佐伯(仲谷昇)と大川の端を二人で歩くシーン、コンクリート土手にある危険防止の看板が久松警察署。人形町なら久松署が管轄だが映画の舞台は柳橋なら蔵前署のはず*1。「二人が歩きながら四方山話で神田川柳橋で渡り両国から浜町の方に」とこじつけたいがシーンは大川左岸をスクリーンで上手から下手へ、ってことは大川を上るといふことは浜町の方から柳橋に歩いてゐるわけで無理あり。久ヶ原T君曰く原作の新橋を余所土地に置き換へた無理、と。ベルさんはさて置き「水野」のおはま姐さん演じる栗島きみ子姐さんなんて、だう見ても新橋、と。何れの女優も皆、年増芸者の貫禄見せるが、このおはま演じる栗島先生が当時五十四歳でベルちゃん四十前、その娘演じるデコちゃんは三十超えてベルちゃんとわずか七つ違ひ。大女優たちの立ち振舞ひのなかで、やはり見習ひたい所作は、つたの屋の女中・梨花役の絹代ちゃんによるもの。

南京大学の強かな学生が大学での管理厳しくなるなかで当局の姿勢逆手にとりマルクス主義研究旗揚げ。中共にとつて否定も弾圧もできぬマルスク主義のはずだが対国家権力に対する革命思想と運動は抑圧されるといふ大きな矛盾。

*1:おつた姐さん(ベルちゃん)がなみゑの件で鋸山(宮口精二)と事情聴取されるのも蔵前署のはず。