富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2017-10-29

農暦九月初十。いつものやうに官邸で周末の書類整理済ませ夕方にジムのトレッドミルで走り早晩にFCC華人と待ち合はせ夕食。ビリヤニ(Biryani)を二人でシェアするが、これも中共的には「印度炒飯」で「ビリヤニは中国の炒飯がオリジナル」とか言ひさう。Bloody Maryを氷なしで飲む。市大会堂。香港蕭邦ソサエティの演奏会も今日が千穐楽。前半はパスカル=ロジェ師のリサイタルでサティのジムノペディの1番と3番、ドビッシーのプレリュードから曲順は2のVoiles、3のLe vent dans la plaine、5のLes collines d'Anacapriで最後が8のLa fille aux cheveux de linが演奏は8を最初に。アンコールはClair de Luneで中入り。後半はプーランクの“La Voix humaine”(人間の声)をロジェのピアノでCarole Farleyといふソプラノ歌手が40分の独唱独演。コクトーによる台本であらすじは

ネグリジェにガウンを羽織った女が、1人寝室に居る。突然電話が鳴り女は飛び付くが、間違い電話で、女が受話器を置くと再び電話が鳴る。電話は5年間付き合っていた元恋人からで、彼女は彼が他の女と結婚する為に別れを告げられたので絶望していて、彼からの電話を待ち焦がれていたのである。最初は元気な様子を装い、あたかも別れを受け入れた様に嘘をつくが、電話が混線して切れてしまう。女は彼の家に電話をするが、召使いが彼の不在を伝える。再び彼から電話がかかり、女は昨晩睡眠薬を飲んで自殺しようとした事を彼に隠しきれなくなっていく。混線や雑音などで電話は何回も中断されるが、会話は疑い、絶望、愛の告白と非難が続く。最後には女が電話のコードを首に巻きつけ「貴方の声が首に回っている」と言い息絶え、電話が床に落ちて幕となる。

といふもので、かうした物語に全く感情移入できないアタシだがプーランクの曲をピアノ1台でこんなに感情豊かに表現できることが面白かつた。家人にこんな歌劇は二度と見る機会もないだらうし演じ手がド=フランス人であることが絶対だから、と勧められたが正解。
▼昨日は旧暦九月九日の重陽に合はせたわけではなく十月の最後の土曜恒例で台北で「同志遊行」のLGBT祝賀パレードあり。かうしたゲイプラウドなるものにほとんど関心もないが(つまりは陰翳礼賛なのだ、アタシは)台北の友人から送られてきた画像でパレードでの日台友好は微笑ましい。外交的には全く見ることのない日の丸と民国旗が並ぶことも日本と台湾のゲイの間では日常の延長としてありなのか。新宿二丁目のゲイバーでもちゃんと台湾系と大陸系が住み分けであるといふのだから興味深い。