富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

ユリノミクスは「おしっこ経済」垂れ流し

fookpaktsuen2017-10-06

農暦八月十七日。昼から深圳。人民元の財布忘れ羅湖に入るなり香港の口座から人民元で引出し売店で水とガム買ひ100元札恐る恐る出すと拒まれず小銭をつくり地下鉄で国贸まで行き日本人ほんと多い粤海酒店の蕎麦人で昼に鳥南蛮蕎麦啜り向西路で足浴按摩して夕刻香港に還る。数日前に「安半」で供され食べきれなぬので予め折りにしていたゞいた真鯛のカマを家人が塩昆布出汁の炊き込みご飯にしてくれる。美味至極。書室に据へWi-Fiが不便となつてゐたプリンタを廊下の酒瓶をだいぶ整理した棚の上に置く。自宅のネット環境で香港テレコムの契約は何年も前に100Mbpsと宣伝してゐたのを覚へて見るが今日測つてみると上り下りとも300Mbpsなのには驚いた。AppleAirMac Extremeは居間の見えるところ(電波の拡散が良いところ)に置いても洗練されたデザインはまるで置物の静物のやう。
▼財界で経団連に対して堤清二氏のころの経済同友会は毛色の変はつた経営者多く面白いと思つてゐたが最近は何だかリトル経団連化してゐると見えてゐたところ同会代表幹事の小林喜光氏(三菱ケミカル)が

今回は安倍晋三首相が5年近くやってきたアベノミクス原子力政策、憲法改正論議などが「これでよいのか」を有権者に問う「総括選挙」だ。解散の大義があるとかないとかいう議論もあるが、安倍首相が比較的強引な解散をしたことにより、政策論議が活性化するとしたら、良かったのではないか。

と物申してゐる(毎日新聞こちら)。「希望の党立憲民主党の誕生で3極が争う構図となり、選挙が活性化するのは大いに結構だ。しかし、有権者劇場政治を楽しむだけではいけない。安倍政権を総括し、次の政権を選択する国民の責任は重い。」と婉曲的ではあるが賞味期限切れで構造疲労生じてゐる晋三政権に対してもはや否定的。しかも経団連に対してなのか、三菱ケミカルといふ東電とは違ふ企業の立場もあらうが東電柏崎刈羽原発6、7号機について政府が原子力規制委に「実質合格」としてゐるような状況で、東大理学博士でもある小林氏は

できることなら原発はゼロにするのがいいに決まっている。だけど、コストを低くするためには、30年ほどかけ徐々に原発をフェードアウトしていくのがよい。エネルギーの最適化に向け、現実的な議論をしてほしい。

とまで提言。本来、理想的な形で政界再編があれば自民党経団連に対して保守リベラルを経済同友会が支持できるはずなのだが。
▼小池暴走と枝野奮起で「立憲民主が健闘も希望は伸び悩み」といふ見方も出てきてゐる。希望の党が政策も何も不明朗ななかで出してきた「ユリノミクス」は笑へる。Yurinomicsださうだが英語では「ユリ」は音的には“urine”で、ネット上での書き込みで“urine”が接頭語にある単語には尿器やら放尿やら尿関連の言葉が多いから「百合のみくす」には英語人には「おしっこ経済」→「垂れ流し経済」ぐらゐに聞こえるんでは……と(笑)。
中村文則氏の朝日新聞への寄稿「総選挙、日本の岐路」(こちら)より。安倍晋三の欺瞞、これに異議を唱へる自分への周囲の意見について書いたあとを引用。

選挙の先にあるのは何だろう。
現政権が勝利すれば、私達はこれまでの政権の全ての政治手法を認めたことになる。政権は何でもできるようになる。あれほどのことをしても、倒れなかった政権ならすさまじい。友人を優遇しても何をしても、関係者が「記憶にない」を連発し証拠を破棄し続ければよい。国民はその手法を「よし」としたのだから。私達は安倍政権をというより、このような「政治手法」を信任したことを歴史に刻むことになる。
感情的に支持する人はより感情的になり攻撃性も増し、本当の説明は不要だから、発展途上国独裁政権のように腐敗することも理論上可能となる。「私は悪いことをしている」と公言する独裁者はいない。いい加減な説明をし、国民は納得していないのに権力に居続けるのが典型的な独裁政権だからだ。明治というより昭和の戦前・戦中の時代空気に対する懐古趣味もさらに現れてくるように思う。そもそも教育勅語を暗唱させていた幼稚園を、首相夫人は素晴らしい教育方針ともうすでに言っている。
改憲には対外的な危機感が必要だから、外交はより敵対的なものになり、緊張は否応なく増してしまうかもしれない。改憲のための様々な政治工作が溢れ、政府からの使者のようなコメンテーター達が今よりも乱立しテレビを席巻し、危機を煽る印象操作の中に私達の日常がおかれるように思えてならない。現状がさらに加速するのだとしたら、ネットの一部はより過激になり、さらにメディアは情けない者達から順番に委縮していき、多数の人々がそんな空気にうんざりし半径5メートルの幸福だけを見るようになって政治から距離を置けば、この国を動かすうねりは一部の熱狂的な者達に委ねられ、日本の社会の空気は未曽有の事態を迎える可能性がある。
北朝鮮との対立を煽られるだけ煽られた結果の、憎しみに目の色を変えた人々の沸騰は見たくない。人間は「善」の殻に覆われる時、躊躇なく内面の攻撃性を解放することは覚えておいた方がいい。結果改憲のために戦争となれば本末転倒だ。
最後に、投票について。こんなふざけた選挙は参加したくない、と思う人もいるだろうが、私達はそれでも選挙に行かなければならない。なぜなら、たとえあなたが選挙に興味がなくても、選挙はあなたに興味を持っているからだ。
現在の与党は、組織票が強いので投票率が下がるほど有利となる。彼らを一人の人間として擬人化し、投票日の国民達の行動を、複眼的に見られる場面を想像してみる。「彼」は、投票日当日のあなたの行動を固唾を飲んで見守っている。自分達に投票してくれれば一番よいが、そうでない場合、あなたには絶対に、投票に行かないでくれと願う。あなたが家に居続けていれば、よしよしと心の中でうなずく。結果投票に行かなかった場合、「彼」はガッツポーズをし、喜びに打ち震えワインの栓でも抜くだろう。こんな選挙に怒りを覚えボイコットしている国民に対しても「作戦成功」とほくそ笑むだろう。反対に、野党は投票率が上がるほど有利となる。野党の「彼」は、当然あなたに選挙に行って欲しいと固唾を飲んで見守り続けることになる。有権者になるとは、望んでいなくてもつまりそういうことなのだ。
この選挙は、日本の決定的な岐路になる。歴史には後戻りの効かなくなるポイントがあると言われるが、恐らく、それは今だと僕は思っている。

小林よしのり氏の保守の立場からの枝野立憲民主党への期待と保守と嘯く晋三と小池への批判(朝日新聞こちら

枝野幸男さんへ
わしは保守の立場から、いくつかの点で立憲民主党には期待をしている。
一つは格差を解消し、資本主義に活力を取り戻してくれるのではないかということだ。わしは資本主義を自由と表裏一体の重要な社会システムだと考えている。ただ、新自由主義的な政策の継続で、日本は貧困と格差の広がる国になってしまった。将来への不安やストレスで、人々は日々の生活で精いっぱい。結婚もままならず、共同体も弱体化し、資本主義の停滞を招いているとみている。この解決に取り組んでくれるのでは、という期待感だ。
もう一つは各自を尊重する自由闊達な公共空間を取り戻してくれるのでは、という点だ。社会には今、攻撃的な言動が目立ち、政治の現場にすら、熟議を許さない状況が続いている。乱雑に物事が決まるあり様には、保守が大事にする「経験知」が生きているとは言えない。そうした現状に対する反発への受け皿が、この党に期待されている大きな役割の一つだと思う。
安倍晋三さんと小池百合子さんへ
それぞれ「保守」を掲げている。しかし、保守とは伝統や慣習を大切にしながら、社会システムを時代に合わせて漸進的に改革していくといった姿であって、熟議もなく、急進的に進めていくやり方ではない。
ましてや日本は異なる価値観であっても柔軟に取り入れ、内包してきた国柄だ。異なる考え方だからといって頭から排除するような国ではなかったはずだ。
価値観が多様化し、将来の不確実性も高まる現代において、保守こそが最も有用な考え方だとわしは考えている。各自の思想は自由だが、もっと議論をし、それぞれの知恵を生かしていくやり方はできないものか。
熟議なき保守など、絶対にない。