富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

Sir Davidの逝去

fookpaktsuen2017-08-30

農暦七月初九。快晴猛暑。香港全体の夏休みモードも終はり何かと慌ただしくなる。午後から霧霾たちこむ。広東省の大気汚染の影響ではなく香港で気圧の関係で大気がこもるとかうなるもので通常も同じやうに自動車の排気ガスなどひどいのだが風がそれを追いやつてくれてゐるといふこと。
▼Sir David Tang(訒永鏘爵士)の訃報(FT紙、こちら)。ご本人が余命あと数ヶ月と公表し9月6日だつたか倫敦のドルチェスターホテルで友人ら招き最期のパーティ開催とは、さすがSir Davidらしいと唸らされたが、まさかそれも間に合はずの急逝とは。本人もこのパーティ開催できずとはさぞや無念だらう。香港の英国植民地時代からの地元名士で英領香港の良さを体現できた最後の人。財界人であり文化人で英語と英文学なら大学で教鞭とれるほどの学才もあり惜しい人を享年六十三で亡くしてしまつた。訒肇堅の長孫だがSir Davidの父はその父たる肇堅とは不仲。てっきりそこで長孫のSir Davidは寵愛されたのか、と思ひきや肇堅は外で慈善家として高名だが家庭では相手が誰であれかなり威張り散らし家族には辛く当たる独善の面も強かつたらしくSir Davidも中学の途中で父母を追ひ倫敦に渡つたといふ。一族はいろいろありぱっとしなくなるなかでSir Davidも英国から戻ると開放政策始まつた北京で英語教師をするなどして自由に生きてゐたが香港で90年代に上海灘ブランド興し旧中国銀行チャイナクラブをオープンするなど、そのテイストはアタシはキッチュで苦手だつたが、わかつてやつてゐるのがこの人の強かさ。さういふニセのシノワズリが裏返しでウケる。英国の文人との洒脱なトークも見事で英国でも一目置かれるのはFTの週末版での健筆が証左。かといつてそれぢゃ何が真骨頂か?といふと、その生き方で、さういふところから見ると日本でいへば吉田健一のやう。この10年以上、異常な肥満が贅肉がつくのではなく内臓が膨らんでゆくやうな、いつか破裂するのではないか?といふ異様な体型が気になつたがかなりの内臓疾患だつたのであらう。哀悼。