富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

香港主権移譲から20年

fookpaktsuen2017-07-01

農暦六月初八。快晴。香港特別行政区成立記念日。湾仔の金紫荊廣場で朝八時からの国旗掲揚と国家吹奏は毎日だが本日は香港特区政府要人や外交団並んで。習近平首席ら北京要人は慣例でこれには参加せず。午前九時から香港会展中心で行政長官、特区政府局長クラスらの任命式。習近平の挨拶は一国両制の成功と今後の発展、中国の世界規模の経済流通計画への香港の参画、香港と国家の治安維持(つまり香港独立など言語道断)等に言及。この人の表情はなぜかいつもつまらなさう。官邸で週末の書類整理。午後遅く湾仔へ。午後三時に市民デモ開始の予定が半時間遅れてヴィクトリア公園を出発と香港電台の速報。今年はヴィ公園の貸し出しすら危ぶまれたが使用となつたものゝ出入り口が大幅に狭まる。湾仔から銅鑼湾方面に道路を歩く。すでに拠点、拠点でさまざまな抗議活動。勿論、政治的には香港政府批判、行政長官批判、CY梁の豪企業との収賄疑惑、中共に対しては天安門事件劉暁波釈放要求等。それに加へ珠江大橋建設でのピンクドルフィンの生態破壊や、高速鉄道建設での新界の自然環境破壊、大嶼山の野牛の保護など環境問題や、年金制度改悪、雇用問題にLGBTといつたさま/\な問題の提起。香港の総領事館は「不測の事態に巻き込まれないようデモ行進や集会の会場等には絶対に近づかないよう注意しデモ隊や群衆に遭遇した場合には直ちにその場から離れ安全な場所へ退避するよう努めてください」と邦人に伝へてゐるが、一部、抗議人と警察の小競り合ひ等なくはないが大方には平和裡に行はれるデモで秩序も保たれてをり、中学生くらゐなら銅鑼湾から湾仔まで歩いてみて市民はいつたいどんな主張をしてゐるのか?のリサーチをしてみるだけでも十分に社会勉強の機会。香港の泛民主派の議員諸氏、ご無沙汰の続く知己に邂逅もこのデモならでは。デモにかなり寛容な香港警察だが鵝頸橋で警察がやたら鳩まつてゐる、と思へば香港独立派の社中が英国領香港旗掲げ結集。香港独立=英国回帰はちょっと奇妙。青天白日旗。かつては中共に対しての国民党政府=中華民国だつたが今では中華民国は中国の立憲主義の象徴。孫文先生も理想叶えり、か。公民党のデモで陋宅地区選出の元区議・陳啟遠氏にばったり。今は公民党の秘書長なのださうな。湾仔の公民党のエリアで梁家傑党主席に挨拶。何だか記者らわーっと人集りで何かと思へば陳日君(カソリック羅馬教会枢機卿)の企つ公民党の舞台の足元にマーチン李銘柱(民主党元党首)とジミー黎智英(蘋果日報社主)現れる。金鐘に向け歩いてゐると本日二度目の驟雨。習近平在港の間は見事に晴れ渡つてゐたが昼に、つまり午後の香港の市民デモ等生じる前に離港は慣例だが、習近平の飛行機が離陸すると驟雨で、中共は本当に空を晴らせたり雨を降らしたりできるのかしら。路上の市民デモはかなりの参加者が雨傘運動の影響で傘持参。アタシもロンドンのフォックス傘屋謹製の黄色い傘で、今日の数万人の中で最も高級な黄色い傘がこれかも。あまりの大雨に路上の市民が雨宿りに散らかり中共、香港政府的には恵みの雨か。今日のデモの目的地はタマールの政府総部だがアタシは金鐘で流れを外れ地下鉄で尖沙咀へ。雨は暫くして歇んだが多くのデモ参加者が雨嫌ひ湾仔で地下鉄に乗り込んだやうで金鐘は乗換で混雑。ハイアットリージェンシーのチンチンバーでビール飲み尖東は幸福中心地下の一平安で家人と待合せ。麓井の清酒飲み長崎ちゃんぽん啜る。メニューで日本語は「台湾ラーメン」が中国語では「名古屋辛味拉麺」なのが可笑しい。日本の「広東麺」も当然、広東の人はこれが何かわからない。科学館へ。1965年の黒澤明監督『赤ひげ』見る。じつは初めて。てっきりデジタル復刻版だと思つたらフィルム上演は嬉しい。出演で三船敏郎、次に加山雄三山崎努が並んだあと香川京子東野英治郎志村喬笠智衆杉村春子田中絹代といふ大物が並んでしまふ凄さ。加山雄三黒澤明成瀬巳喜男岡本喜八らの作品にも出演してゐるのだがアタシは黒澤で『椿三十郎』も見てをらず「若大将シリーズ」の印象しかなく改めて役者としての真面目さを知る。狂女役の香川京子も凄いが廓で精神患つた十二歳の娘おとよ演じる二木てるみ、そのおとよに可愛がらる幼い盗人・長次の頭師佳孝とのかけあひ、不幸を黙つたまゝ死にゆく六助・藤原釜足の死期の演技の醍醐味、六助の娘おくに役の根岸明美の一人語り……何ともいずれの役者にとつても一世一代の演技が続く。小石川養生所での夜の場面では蝋燭の光に照らされ壁に映る役者の影までが演じてしまふ。病ひに魘され朦朧としたまゝ夜中にはっと驚き寤めたおとよの起きたところに陰翳のなかぴたりと蝋燭の明かりが見事に目だけを照らす完ぺきな演出。何とも。それにしても山本周五郎の原作からしてさうだが偉大なるヒューマニティを黒澤明だからこそ、こゝまで恥ずかしげもなく撮れるのか。科学館を出て香港サイド行きのタクシー乗り場まで歩いてゐると、とんでもない大雨。今晩の返還記念日夜恒例の花火も雨に襲はれ、花火で「中国」と文字映す予定が雨風で「国」が乱れた由。

都知事選明日を前に選挙戦も大詰め。逆風の中、屋外で不特定多数前の応援演説避けてきた晋三が満を辞して自民党政権奪回の聖地秋葉原で応援演説。自民党支持者で固めたが周囲に反晋三勢力結集で「安倍辞めろ」「帰れ」コール。かつての「安倍晋三安倍晋三!」コール懐かしいが浅慮ゆゑ世論は怖い。籠池夫妻までご来臨で晋三非難のオマケつき。晋三逆ギレで「人の演説を邪魔するような行為を自民党は絶対にしない。憎悪からは何も生まれない。こんな人たちに負けるわけにはいかない」と国民を指差して非難。晋三敬愛のお爺様すら国民は浅慮と思つてはゐても、こんな失態はせず。晋三も晋三ならサポートの石原伸晃も晋三登場の前座で前フリまではアンチ自民コール聞こえるなか演説を邪魔するやうに邪気させてしまつたのは我々のなかに十分に都民の皆さまの声に耳を傾けない、胡座をかいてゐた者がゐたからで、と自虐演説の上、そこで本日は晋三自らが皆さまに思ひを語り……と聞いてゐて恥ずかしいほどの盛り上げをするなか東北帰りの晋三が東京駅から直行で到着し「あ、今、安倍首相が到着しました!」と最大の見せ場のところ「拍手をもっておマヌケください!」とトチってしまひ、言ひ直してもおマヌケの他に言もなし。伸晃は閣僚に抜擢され晋三に足を向けて眠れないだらうが都議たちにしてみれば自分たちが頑張つても国政の影響ばかりで政府の失態まで自らの過ちにされてはたまつたものぢゃない。国民の多くに邪気を生じさせたのも国民の声に耳を傾けず権力に胡座かいた晋三本人の所為なのに。それを伸晃も知つてか知らずか晋三ヨイショなんてするから。これが北朝鮮だつたらこんな重大なトチリは死にも値する舌禍。二階幹事長も麻生漫画太郎もマスコミに罵声浴びせ自民党メルトダウンかなり深刻。