富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

青梅竹馬(おさななじみ)

fookpaktsuen2017-04-14

農暦四月十八日。今日からイースターで4連休。快晴。官邸で書類整理。ふとしたことで偶然に『大きい1年生と小さな2年生』といふ懐かしい子供向けの本(古田足日作、偕成社)を見つける。童話や絵本はヒット作は長く読み継がれるが、この作品も1970年の初版から版数は百の単位。小学1年のときに母に買ひ与へられ読んだ物語も印象的だが、かなり個性的な絵(中山正美)が強烈。とくに上級生に歯向かふ女の子の表情が凄かつた。大谷翔平選手の髪型がこの少年に似てゐる。この小学1年生と2年生はアトになつてみれば「おさななじみ」。晩に香港映画祭で1985年の台湾映画、楊紱昌監督の「青梅竹馬」(Taipei Story)を見る。楊紱昌監督の逝去(2007年)で他の作品同様かなり脚光浴びる、当時の台湾ニューウェーブ映画の代表作の一つだが当時は商業的には全く不評で上映は1週間ももたなかつた作品。それが今晩も香港文化中心の劇場がほぼ満席。台北の迪化街で昔からの布問屋営む家に育つた阿隆(侯孝賢)は米国留学から戻るが昔ながらの世情捨てきれず。幼馴染み(青梅竹馬)の女友・阿貞(蔡琴)は台北の経済成長とともに勃興する不動産デベロッパー会社でそこそこの地位に。この二人のジレンマを描くが全く描ききつておらず物語も中途半端。作品としては失敗作なのだらうが、その「描ききれなさ」が後になつて、あの時代の台北の雰囲気を伝へてゐるから興味深い。若者たちが深夜、双十節で電飾がまぶしい総統府前、蒋介石記念堂前をバイクで走り回るシーンがあるが李登輝の総統就任(1988年)を待つ経国末期の台北なのだから、さういふ時代の大きな変化待つ悶々とした時代の空気。この映画で主人公演じた侯孝賢が「戀戀風塵」の発表は翌年のこと。これも九份台北を舞台にした幼馴染の切ない物語。