富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2015-12-27

農暦十一月十七日。曇。書室整理。有馬記念ゴールドシップ引退。100円の記念馬券のみ購入してゐたが、いつものやうにしんがりにつけたゴールドシップが向かふ正面で外からぐい/\と上がつてきた時には「夢をもう一度」で中山競馬場の十数万の観客から「うおーっ」と歓声上がつたが第4コーナー回り勢ひはそこまで、で8着。アタシはキタサンブラックに託したが始終ハナとつてしまひ最後は差されて三着。内側で三番手あたりの良い位置を確保してゐたゴールドアクターが優勝。上がり調子とはいへ格下の馬で8番人気。2着にサウンズオブアース。昨年はジェンティルドンナの一点買ひで的中の海老蔵が今回はサウンズオブアース軸から荒れる前提で流した中にゴールドアクターキタサンブラックもあり。他人の配当を覗くのもなんだが馬連復で6840円、三連複20,360円に加へ何といつても三連単の125,870円はさすが畏れ入谷の鬼子母神。それにしても競馬新聞に載つた海老蔵の分析のなかに「ゴールドシップは皆さんご承知のように、あのような気性ですから」って、ゴールドシップにしてみたら「成田屋にだけは言われたくないわ」。暇な日曜日。小島政二郎の『小説 永井荷風』読む。渡米、フランス帰りで洗練された荷風文学に憧れ三田に入つた小島による尊敬する荷風についての赤裸々な評伝小説は昭和47年に脱稿してゐたが荷風遺族の承諾とれぬまゝ出版されず2007年になつて漸くの上梓、丸谷才一川本三郎らも取り上げ話題になつたといふが一読すると小島の理想としたモーパッサンへの情熱的な荷風が江戸趣味の退嬰的な風に染まつてゆくことに失望。それでゐて芸者富松の素性だの、荷風が「こう、命」と入れ墨してゐただの槇金一の存在等、見聞で荷風知る者には今更だうってことなき醜聞のいくつかで、これが小島にとつての「小説」か呆れるばかり。荷風といへば『濹東綺譚』と日記文学「作品」としての断腸亭日乗を除けば(田中長徳先生が言ひ放つやうに)花街小説の書き散らし、後に残る作品としてはむしろ『腕くらべ』の私家版か『四畳半襖の下張』の戯作だと私は思ふが小島はこれらのエロ小説を荷風の異常性、のぞき趣味と嫌悪、暗いところで撮影のできる明るいレンズのローライフレックス購入まで(故人の昔のことに)苦言呈す。

荷風ボードレールのように自己の個性に忠実な人生と取っ組みあって、血みどろになって……そうすれば物語作家になんかなっていられず、いやでも真の小説家になって一生を貫かずにいられなかったろう。そういう意味では、荷風は大事な一生を誤った。

とまで、小島に荷風をこゝまで非難する資格があるか。アタシなどむしろ荷風のかうした下落にことゾラ的に興味をもつのだが。

荷風に彼自身のエゴイズムがいかに現実世界と悪戦苦闘したかを書かせたら、日本にたった一人の特異な小説家が生まれ出たと思うのだ。財産があったばっかりに、彼独得のエゴイズムを直接現実生活に接触する機会をなからしめ、逃避の、一人よがりの、隠居のような、趣味の生活に一生を終わらせたことは、一生を誤ったとか思えず、あたら才能を完全に発揮させず一生を終らせたことは幾ら考えても残念で残念で仕方ない。

なんてよくも恥かしくもなく書けたもの。小島は荷風を小説に見立て実は自分の自伝小説を書いてゐるやうなところあり、その中で唯一「へぇ」と面白かったのは三田で教鞭をとつてゐた 馬場孤蝶についてのいくつかのエピソード。胡蝶が小島に語つたといふ英語学習の心得。

子供のころに初めて新聞を読んだとき、みながみなわかって読んでやしない、そのうち何となくわかったような気がしてくる、あれと同じですよ英語の場合も。一冊読み二冊読みしているうちに英語に対する恐れがなくなってくる、これが大事なこと、英語の本が手軽に手と取れるようになる、こうなればしめたもの、ここまでくればひとりでに勘見たようなものが働いて辞書を引く必要のある言葉と、その必要のない言葉とが判断できるようになる、こうして覚えた単語はめったに忘れることじゃない。

これは実によくわかるところ。
産経新聞ソウル支局長裁判、無罪判決となつたが、韓国外交省が日本側の善処要請に配慮するやう裁判所に要請してゐた件で政府の司法介入と報じられたが、これが実は判決に影響与へぬやう判決2日前に外交省から法務省に出されたもの。つまり、この要請なしで司法は無罪判決だつたことになる。行政府としては「有罪判決を覚悟」してをり、韓国側としては有罪判決でも「関係改善のため最善の努力をしているという姿勢」を日本側に示すためのもので扱ひは対外秘、その思惑外れた上に裁判でこの要請の存在まで明らかに。裁判所がこの公表について真意は「不明」といふ。検察は無罪判決とこの行政府要請も考慮し控訴断念。以上、朝日新聞こちら)。

  • 安倍さんと同様に少数意見に耳を傾けない。橋下さんにとって改憲は大坂限定の都構想に代わる全国向けの商品なのでは。安倍さんよりヤバい気がする。(引退宣言に)やめるわけないやん。総理大臣どころか憲法を改正して大統領制にして大統領になる。まじめに思う。(シールズ関西の塩田君)
  • 沖縄抜き「全国戦災史」国の調査、戦後70年行われず:東京新聞こちら

小説 永井荷風 (ちくま文庫)

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