富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2015-10-22

農暦九月十日。早晩に帰宅して夕食前に軽くジョギング。陋宅でラウンジチェアは照明はフロアスタンドだけだつたが老眼には辛く読書灯増設。岩波『世界』昨年12月号読む。高見勝利(上智法科大学院教授)「集団的自衛権の行使容認論の非理非道」今になつて読んでも去年の7・1閣議クーデターがいかに間違つてゐるか、はこの文章でも明らか。だが昨年12月はまだかうした視点はまだ有識者に限られたやうで輿論にはなつてゐなかつた。
▼高橋伸彰(立命館教授『世界』2014年12月号)より。失われた20年、それに対するアベノミクスによる景気回復といはれるが本当に景気は回復してゐるのか、失われた20年といふがデフレ続いたものゝネットやデジタル危機、スマフォなど我々の生活スタイルは大きな変化で技術革新の停滞もなく、では何が過去20年の問題かといへば財政赤字の大幅な拡大、その税収の減少原因は成長率停滞ばかりでなく1988年のマル優廃止や翌89年の消費税導入による庶民増税の一方で富裕層に優しい累進課税緩和や資産譲渡益に対する軽減税率適用、大企業には法人税率引き下げがあり20兆円以上の税収減、つまり消費税率で換算すれば約7%分の税収が富裕層、大企業に還元されたことに。高度経済成長とバブル崩壊後の停滞はもはや克服すべき政策課題に非ず受け入れざるを得ない制約。「やればできる」と国民を鼓舞し、できなかったときのツケを社会保障の削減や消費増税の母地で経済的弱者に回すのは本末転倒。アベノミクスの誤謬はデフレを停滞の原因と見なし大胆な金融政策でデフレ脱せば企業利益起点とした好循環実現できるとしたがデフレは停滞の原因ではなく症状で、問題は90年半ば以降の賃金下落。本来なら消費税率上回る5%以上のベアを増税先行で実施、低所得層への給付金支給、成長戦略ではなく雇用戦略で労働意欲は創造性廠で高い生産性持続する改革こそ必要(成長率持続に非ず)。
▼晋三といへば福島核禍の現場頻繁に視察はいゝが核禍から4年以上経つても、この重装備で、これのどこが「アンダーコントロール」なのかしら。外国人旅行客の急増も No more Fukushima で彼らが核禍恐れてゐない、日本は安全なのだ、と電通的にいゝやうにイメージ戦略されてゐるが、この観光ブームは円安が主因で短期間の滞在で被曝は日常問題ないといふ認識によるもの。いつの間にか何もなかつたかのやうに、そして問題なんてないやうに。
▼ここ数日、日経「私の履歴書」で晋三シンパ・葛西敬之様の連載、いろ/\な意味で興味深く毎日拝読。今日の「合理化提案」と題する内容は民営化はもはや既定と経営陣、組合にねじ込んだ上で再雇用どうするか。10万人合理化。新規採用停止を条件に最も過激だつた動労が賛成に回るなか分割民営化の法案提出すら未だの段階で意図的にフライングで全職員対象に分割の場合どの会社に勤めたいかアンケート実施。国労が猛反対のなか国鉄職員の希望退職法成立受け具体的に募集に入り2万人の予定に4万人が応募。国労に残るか路頭に迷ふか、のやうな選擇。

彼らの意表をつく課題を投げかけ、それを受けて反撃に出ようとするころには、さらに次の課題が提起される――。経営側は終始、主導権を取り続けたのである。労組の合意を得なければ施策の実施ができないという従来の姿勢で臨んでいたら、事は全く進まず、改革は頓挫していただろう。あのやり方しかなかったと思っている。

と葛西様。当時まだ職員局の課長(のちに次長)で、これ。この国鉄民営化、分割は「人事権」握れば何でもできるの証明。晋三が葛西様からこのノウハウを授かつてゐないはずもなく党内牽制、内閣法制局掌握でも活かされてゐる。

世界 2014年 12月号 [雑誌]

世界 2014年 12月号 [雑誌]