富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

春子とアンスネス

fookpaktsuen2015-05-03

農暦三月十五日。昨晩は所用あり珍しく朝の三時頃に帰宅。郊外でタクシーも来さうにないのでUberで自動車雇ふと10分ほどでベンツSお迎へに来てくれる。運賃はタクシーの2倍。朝六時すぎに起きてしまふ。憲法記念日。今日も官邸で書類整理。夕方、湾仔。未明はベンツだつたが湾仔まで乗ったタクシーは最悪。運転手は左足は椅子に上げて右手で片手ハンドル。無線であーだ、こーだと雑談で、言つた行き先まで間違ふ始末。それにしてもマニュアル車で右手でハンドル、右足がブレーキで、だうして運転できるのか、は不思議。芸術中心。Z嬢と成瀬巳喜男監督の映画『晩菊』見る。林芙美子原作で主演が杉村春子沢村貞子それに細川ちか子、望月優子だもの垂涎。それにしてもこの女優たちを見事に操る成瀬の妙。私は沢村のファンだが、この映画では四人のなかでいちばん飲み屋の女将役、良識的でとくに何といつたこともない。望月の気さくでダメな母ぶりが見事。それでも何といつても杉村。まぁ演技が上手すぎる。さっと立ち上がり背を向けて首を傾げむかふを向く、さっさと歩いてゆく、その後ろ姿だけでも幾通りもの演技ができる大女優。湾仔のマレー料理、Sabahに飰す。尖沙咀。文化中心。Mahler Chamber Orchestraの演奏会。1曲目は指揮者なしでコリオラン序曲。続いてLeif Ove Andsnesの登場、指揮とピアノでヴェートーベンの1番、中入り後に4番。ピアニストが指揮もしながら、といふ形態で私が最初に聴いたのが維納フィルでバーンスタインによるもの(その1970年のライブ映像がYoutubeでも見られる)。映像で初めてみたのは映画『砂の器』で作曲家(加藤剛)が演奏するピアノ協奏曲『宿命』だつたが今晩のピアノの置き位置も同じく正面客席に背を向けて。Leif Ove Andsnesはいっとき不健康さうに肥えてゐたが節制したのかかなり端正、この人の音に合う姿かたち。今の彼なら『晩菊』で春子を再開で喜ばす上原謙の役も出来るか。このオケと精力的にヴェートーベンのピアノ協奏曲演奏続けてゐるがオケの編成も管楽器は古楽器も使ふ音もじつに、ヴェートーベンの一連のピアノ協奏曲にも、そして何よりLeif Ove Andsnesのピアノと合ふ。Leif Ove Andsnesのピアノは真面目で、一つ一つの音を丁寧に、とくに自分らしい解釈や余計な演出もなく楽譜に忠実、で面白みがないかといふと違ふ。さういふ演奏だとKrystian Zimermanがバーンスタイン指揮の維納フィルの演奏がある。老獪な維納がバーンスタインで「これでもか」でZimermanがそれに応へる演奏が20世紀的なら、今晩の演奏は必要最小限の規模で「これくらゐはできるでせう」とスマートさ見せてくれた感あり。1番はポップスのやうに楽しく、4番は精神的に深みに。アンコールはピアノ独奏でヴェートーベンのバガテル何番。続いてオケでTwo German DancesはAndsnesが指揮の途中からタンバリンに回り楽しく。

社会党といへば上述の望月優子は70年代に社会党から出馬で参院議員だつたこと、ふと思ひだす。
▼今日はChampiin Mile(国際G1)でAble Friendが圧勝。天皇賞ゴールドシップ優勝。