富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

九月廿六日(火)首相選出では民主、社民、国民新党新党日本、大地の5党連立に先の郵政選挙での自民党脱党組、それに今回、自民党反主流派、ハト派の大量脱党で、共産党までが閣外協力し、そうなると公明党が何の疑問もなく寝返って、反自民連立内閣成立。小沢一郎首班で岡田克也官房長官加藤紘一外務、枝野幸男財務、山口二郎(北大教授)文部、福島瑞穂法務、綿貫民輔総務、山崎拓防衛、円より子厚生労働、野田穀経済産業、川村たかし国家公安なんて「まさかのサプライズ」内閣の誕生……なんて、気がつけば夢で朝五時すぎに起床。安倍さんが総理に選出され「美しい日本」となる、その始まりの日の朝を清々しい気持ちで迎える……ってこれぢゃ「近代の超克」だが。諸事忙殺され疲憊甚だしく晩に帰宅。赤米の炊き込みご飯やかぼちゃなど食しビール飲みながら安倍三世首相就任から組閣伝えるニュース番組を眺める。今回の安倍チョイスで誰よりも強烈な印象与えるのは大臣でなく首相補佐官「拉致担当」中山恭子様であろう。「拉致担当」ってなんか拉致するのが仕事みたい。もう一人、教育再生担当の補佐官山谷えり子先生。歴史教科書の「作る会」系で自虐史観批判では安倍三世と主張同じくするが「自虐史観否定という名の自虐感」の感あり。山谷先生、ジェンダーフリー教育は「過激な性教育」と噛みつき「家族、教育、国なおし」と威勢よい、元サンケイリビング編集長。晩に生中継で安倍三世の首相として初の記者会見。首相の初記者会見というのをまじまじと初めて見るが閣僚が舞台の袖にずらりと並び三十分近く、ただの立ちん坊。可愛そうに。せめて椅子に坐らせるくらいしてやればいいのに。安倍三世の所信表明の記者会見は予想通り「明日の未来、で意味不明」。小泉三世の「自民党をぶっ壊す」「郵政民営化」「痛みのある」「構造改革」のほうがいかに具体的であったことか。安倍三世の、ただ一つ具体的なことへの言及が教育再生のための教育基本法の改正(直近の臨時国会で)。この人を首相にしたことで教育基本法が改正されるなら国民の過半数となる安倍三世を支持したり安倍三世に好感度抱く人はあらためて教育基本法を通読すべし。その上で自らがこの憲法と同じく日本にとって最も大切な法律を葬り去る、その一翼を担うことを痛感せよ。外交では、日本は価値観を同じくするアジアの、自由、民主主義、基本的な人権、それに「法の支配」が行われる国と共同で……と宣われる。「法の支配」が「専断的な「人の支配」を排斥し国家権力が正しい法に拘束されるとする原理」とするなら日本が果たして今後、正しい法による法治なのか疑問だが、いずれにせよ気になるのは「自由がなく非民主的で基本的な人権もなく党治が敷かれる」中国の存在。安倍三世は中国が著しい発展を続けており中国の繁栄は日本にっとっても、と言及するが、ただ間違いなく日中関係は是正されよう。それにしてもNHKのNW9の報道の粗忽ぶり、はお得意の「街の声」が本来は「安倍首相誕生」についての国民の反応を問うべきところ内閣の布陣を見せて「どう思われます?」と質問。そんな誰だかわからぬ「大臣になりたい人たち」の写真と名前見て、何を答えられようか。結局「安倍新首相」を質問にしてしまうと当然、三人に一人くらいは「安倍さんでは不安」で「どれくらいもつか」「経験不足」といった声も当然あるはずで、それを意図的に避けたのでは?とすら思える「街の声」取材。なにせNHKにとって安倍さんは怖い。それにしても、この「首相に対する期待感」。少なくともこれは小渕だ、森だ、の時にはなかったもの。視線が「この人ならどんな未来が?」にばかり向いてしまい、本当にこの人でいいの?という基本的なところが欠落。マスコミの報道がまさにその時流に乗っている感あり。加藤周一氏が朝日「夕陽妄語」で江戸の化政期の漢詩人柏木如亭が諸国遍歴で出会った美味い山海の珍味を紹介し、その背景を叙述し美食讃美の詩を詠んだ『詩本草』なる書物について語る。この人が文藝作品を挙げた時はかならず強い政治的意図があるのだが、「私は蕎麦が好きで、あなたはうどんが好きだ、二つの異なる意見は全くの平等の資格で存在する」という味覚の「味の好き、嫌い」は「良し悪し」や「上下」の問題ではないこと。「好き嫌い」の還元主義と「善し悪し」の客観主義。この二つをつなぐものが「判断の普遍性」。具体的な例なら、二十世紀初頭の前衛絵画は「好き嫌い」で大衆の評価は二分されたが(個人の好み)、ある程度まで絵画を見ることに慣れた人々の間では「かなり広い意見の一致」があったこと。これが判断の普遍性。別の言葉でいえば憲法でいう普遍性も、樋口陽一先生が近著で説いている「共和制」の原理も、司馬遼太郎の「国のかたち」もこれ。だが明らかに「それ」の構築もないままに政治が行われているのが日本。加藤周一翁曰く
時あたかもこの国では首相交替の議論がにぎやかである。政治家の評価と基準はどういうものか。それは意図(心の問題)によらず、行動とその結果によって測る他ないものだろう。議論の現況は混乱のみ。
と。フィーリングで安倍三世が好感度を以て支持されることのいい加減さ。
朝日新聞「私の視点」に明治大講師で憲法学の清水雅彦という人の石原都知事批判とその暴言、蔑視、差別を黙認する社会の危うさ、の投稿あり。清水氏は都知事憲法否定宣言が憲法99条の公務員の憲法尊重擁護義務に抵触、と指摘する。首相ですら憲法が間違っている如き発言しても許されるのだから(首相が改憲派なのは良いが現職の首相として憲法の内容に疑問呈すること)、最初から日本という国は法治の根本が全くもって理解できていないのかしら。で新首相は「法の支配」なんて言及。

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