富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

fookpaktsuen2006-02-17

二月十七日(金)諸事に忙殺され晩に至り晩の観劇に急ぎタクシー走らせ金鐘からMTRにて尖沙咀。英国国立劇団の“History Boys”は昨年のLawrence Olivier賞にて最優秀作品賞受賞し主演の教師役Richard Griffiths氏が主演男優賞受賞の話題作で香港でも五日連続公演だが尖沙咀站にて、ふと「それにしても香港文化中心の劇場で5日連続?」と一瞬不安過り切符あらためて見れば会場は金鐘の香港演芸学院のテアトルで「がちょーん」の開演15分前。慌ててMTRにて金鐘に戻り演芸学院に滑り込む。さすが英国の話劇。といっても実はOx-bridge的な世界だの英国特有の風刺だのあたしには正直言ってわからない箇所も少なからず中文の字幕も要を得ておらぬから(井上ひさしの芝居を外語にしたらやはり難しい)周囲の客が大笑いしているのに聾桟敷になったり。脚本はアラン=ベネット(Alan Bennett)。劇の幕開きは車椅子に坐った歴史家が登場。一瞬、状況がわからぬのは観客の誰もが舞台は英国の何処にでもありそうなグラマースクール(公立学校)であることを“History Boys”なる劇名と事前宣伝で知っているから。で舞台は一瞬にして、この学校となり(この舞台の大道具の簡素ながら見事な舞台設計だけでも一見の価値あり)学校の格を上げたい校長は学生8名を選抜しOx-bridgeに入学させたいが悩みの種は定年間際の風来漢なHector教師(Richard Griffiths)。 英文学が専門ながら、この8名の精鋭クラスで授業といえばフランス語の授業をしてみたり(このフランス語での寸劇が抱腹絶倒)哲学や人生を語り生徒には人気。だが、すぐに生徒をノートで叩くし、校長の方針だのカリキュラムは一切無視で、而も男子校で下校時にお気に入りの学生をば自ら運転するバイクに乗せお触りするが如きどうも英国の伝統か?生徒にチョッカイ出す悪癖あり。この状況を打開しようと若い歴史家(Stephen Cambell Moore)を非常勤講師に招くが、これも一癖ありの人物。この公司が幕開けの歴史家と同一人物だとわかると健歩にて授業する講師がどうも著名な歴史家にはなるが車椅子に坐る不自由な身となっていることが気にかかる。で物語はたっぷりとこの学校でのHector教師と学生との語り合い、それに講師や校長らとの騒動、と続き、最後に講師がなぜ車椅子になったか、と話が進む。途中20分の休憩はさみたっぷり3時間。英国のとてもとても英語話劇。だがAlan Bennettの脚本はそれほど英国では珍しくない学園モノのはず(耽美的に描けば“Another Country”になってしまうし社会的に描けばケン=ローチ監督であろうし、誰にでも愛されるほのぼのとした学園モノのようで見る人によっては社会派の『小さな恋のメロディ』であるような)。それが演劇の賞を総嘗めなのは、個人的にはRichard Griffiths演じるところの教師には魅力が多少感じられぬが寧ろ肥満体のこの懲戒免職もありの定年退職間際の男を魅力的にした配役と演出によるものなのだろう。

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