富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

二月十日(金)晴。蘋果日報の尊子の、いつも秀逸なる一コマ政治マンガ。教室の黒板に「春眠不覺曉 處處聞H5N1」とあり。早晩に養和病院で物理治療。「明後日のために」湾仔の電脳中心にてiPod Nano用のアームバンド購入。「尖沙咀の」Jimmy's Kitchenのバー。晩の営業が開いたばかりの料理屋の、香港ではお気に入りのバーに独り今日の信報など読みながら、この店の評判のドライマティーニを飲む。幸せ。街頭のバーは満席の賑わいが、この料理屋の鄙びたバーなど知る人も少なくひっそり。料理屋の入口にメニューのちらしあり、何かと思えば聖ヴァレンタインの日の特別メニュー。聖ヴァレンタインといえば数年前に「中環の」Jimmy's Kitchenにて営業始まっているというのに愚劣な給仕長が、この日のデコレーションの不届きに店内で大騒ぎ続け「いい加減にしなさい」と叱った、嫌な記憶あり。Z嬢来る。ダイニングルームに移り生牡蛎半打とチキンストロガノフを二人で半分ずつ食す。ハウスワインで白はLes Jardins D'Andreaの04年。今年の香港芸術節昨日開幕し今晩はHK Culture Centreにて桑港交響楽団の演奏会。指揮者は当然、Michael Tilson Thomasである。演目はアイヴズ(Charles Ives)のDecoration Day(戦没将兵記念日?)、シューマンのチェロ協奏曲イ短調ブラームスの2番。酒の心地よい酔いも手伝いDecoration Dayはほとんど夢心地。シューマンのチェロ協奏曲のソロはLynn Harrell(リン=ハレル)。昨日はストラヴィンスキのPetruschkaにチャイコフスキの4番、明日はマーラーの10番からAdagioとドボルザークの8番という演奏曲の中で中日の今日を選んだのはひとえに、この人のチェロを聴くため。いい意味でとても地味なチェロ。ソロが「自分が、自分が」とは目立たぬのだがオケとしての演奏の中で主旋律として際立つ。この人がまだ若い楽団員であった頃、チェロのなかからひときわ音が目立って聞こえてきたという逸話に納得。噂には聞いていたがMTTの指揮する桑港楽団の演奏はとてもきれいにまとまっている。が、悪口を敢えて言えばまとまりすぎてクセがない。今晩の演奏がこのシューマンブラームスの2番だから尚更。この楽団がマーラーの演奏では今は世界で有数、という評判をどこかで聞いたが寧ろハイドンであるとかお手本的に演奏するであろうしシベリウスなどかなり上手いだろう。だがブラームスの2番は個人的にはあまり好きではない。アンコールでブラームスの何といったか曲名失念のマジョルカじゃないしナントカラプソディだったか小曲の演奏で「ほら、こんなに音が出るのですよ」を見せられた感あり。晩遅く文藝春秋三月号読む。皇室問題の特集読み日本人に「巣くう」皇室への言いたい放題に途中で気持ち悪くなる。芥川賞受賞作『沖で待つ』はちょと読んだが読み進めず。タイトルが何処かで聞いたことある……と思えば沖雅也の「涅槃で待つ」であった。
▼新学習指導要領が「生きる力」改め「言葉の力」を育てるにせよ、なにしろあの首相のもとで、よりにもよって「言葉の力」とは。皇室典範改正ではさすが政権末期症状に秋篠宮妃懐妊で時期尚早ムード濃厚だが小泉三世の「今回の慶事にかかわりなく天皇制を安定的に維持していくためには女性、女系天皇を認めることが望ましい」云々は小泉にしては首相在任中どころか生まれて初めてくらいに論理的に明晰であり正確な認識か。今回、かりに秋篠宮妃に男子誕生でも側室なしで未来永劫男系を維持することは不可能。今回、秋篠宮に男子でも問題の先送りにしかならぬこと明々白々。男子誕生でも半世紀もたたぬうちに、だが、それより前に戦後の天皇制ぢたいどう変わるか、皇太子妃がらみで皇太子のお立場の苦悩、秋篠宮絡みでかなり事態も変わろう。

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