富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

皇都戲院

fookpaktsuen2016-04-10

農暦三月初四。さすがの日経さんも「もたつく景気 内憂外患 消費息切れ 中国調整なお」と1面トップでアベノミクス庇いきれぬ記事あり(こちら)。それにしても冒頭のリードから「足踏みを続けてきた景気のもたつきが目立ってきた」って何だ、足踏みってのは前に進んでゐないのだから「もたつく」つまり「物事の進行がはかどらない」のは当然、その足踏みすらもたついたら足が絡んで倒れるよ(笑)。また「日曜に考える」では「安倍1強にもの申す」と横路元衆議院議長自民党OBの伊吹文明亀井静香の三氏に苦言させてゐる。さすがに日経もポスト安倍にシフトかしら。大雨。黄警報発令。北角の皇都戲院、King's Rdが少し折れるところでトラムやバスから目立つ場所に聳えるが映画館は随分前に廃業で今は怪しげな雑居ビル。建物取り壊し前に大きな看板に覆はれ、ずつと隠れてゐた女媧(じょか=古代中国神話に登場する土と縄で人類を創造したとされる女神)の巨大なレリーフが露はに。噂には聞いてゐたが古典の伝説が未来主義的で、その宇宙観は棟方志功のやう。SKD(松竹歌劇団)皇都戲院大廈(State Theatre)は1959年落成で、その前身は1952年建成の璇宮戲院。皇都戲院の建物はソ連1920年代の(社会主義リアリズムになる前の)前衛建築で劇場部分の上に見事な flying buttress が見られる。これが取り壊しとは……。このレリーフ拝まうと雨のなか訪れてみると好事家少なからずKing’s Rdの対面からスケッチ描く若者数名。建物楼上のフライングバットレスの下に何人か建物探検隊もゐて好事家少なからず。天気も悪いなか官邸と出先期間で仕事。香港大学図書館。ふと三島由紀夫『禁色』読む。何十年ぶりか、の再読。1975年の新潮社版。やはり正字正仮名はいゝねぇ。この「禁断の同性愛」世界の物語、由紀夫さん自身「こうした趣向を好き過ぎて筆が滑りまくり巧緻を極めた末の駄作ぶりが素敵」(久が原T君)。冒頭からはそれなりに抑制きかしてゐるが改めて読んでみて「稔」の登場からはB級の痴話話で火曜サスペンス並み。鏑木夫人の狂言が可笑しいったらありゃしない。それでも、この俗っぽさが、やっぱり面白いの鴨。按摩。晩に会食あり。

禁色 (1964年) (新潮文庫)

禁色 (1964年) (新潮文庫)