富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

市民模擬投票は過半数が白票

fookpaktsuen2012-03-24

農暦三月初三。さすがに二晩お薬のおかげで寝るだけはよく寝て流感はかなり快方に向かふが頭痛と悪寒だけはまだひどい。昼前、太古城の映画館で香港映画祭で「美好2012」なる、この映画祭の主催団体がプロデュースのオムニバス映画見る。蔡明亮、許鞍華ら四人の監督の短編が並ぶ。アタシは蔡明亮監督で当然のやうに李康生が主演の映画「行者」(写真左)がお目当て。もうこの二人はどこまで逝つてしまふのかしら、といふくらゐ香港を舞台に行者に扮した李康生がゆつくりとゆつくりと歩む、それを固定カメラでずつと撮つた「だけ」の短編なのだが最後の場面はおそらく「これだらう」と思つた通りだがやはり面白い。許鞍華監督の「我的路」も見たかつたが途中でやはり体調芳しからず映画館出てしまふ。「我的路」は心は女性なのに善良は夫と父を演じる主人公(吳鎮宇)の変性にまつわる話の由。昼に銅鑼湾。昨日から「七人ラ式蹴球」開催中で毎年のことながら銅鑼湾にヘンなガイジン多数。本当にヘンな人たち。なぜこんなにこの「七人ラ式蹴球」に血が騒ぐのかしら。変装して泥酔して歓喜する……これがアタシには全く理解できないのだが。通りがかりで入つた潮州麺屋、いちばん簡単な米線をば注文したら具は何にするか?といふので具は要らぬと答へたら「麺だけぢゃ少ないから具も選びなさいよ」といふのでメニュー見直したら具は一種類につきHK$5なり。食欲もないし「具は要らないよ」「ついでに飲み物も要らない」と告げると不愉快さう。偶然なのか、アタシよりアトの客が頼んだ米線の方が先に供された。埋單でもアタシには多謝ともいはず。反日なんてわけもなく(笑)たゞアタシの最低消費が不愉快らしい。家賃が高いのもわかるが、せこすぎ。鵝頸橋の「教協」(香港の教員協同組合の事務所)で明日の行政長官選挙に抗した香港大学民意研(鐘庭燿先生)や市民団体による模擬市民選挙で投票。行政長官選挙は選挙人選挙で民草に投票権ないが、かうして模擬とはいへ、北京中央から高官(中共中央政治局委員、国務委員劉延東らご一行様)が深圳(南山区にある中聯辦直轄の紫荊山荘)に陣取り行政長官選挙に(現状では測量梁票数確保で)介入するなかで昨日からすでに数万の市民が模擬投票に参じてゐる由。官製欽定の提灯選挙では模擬投票も無意味といはれさうだが今回の投票用紙は三候補の選択の他に「棄権」があるのがミソ。十分ほど並び投票。香港IDを見せ投票権がある=永久居民と確認されるが、さすがにアタシの日本名でボランディアのスタッフも少し驚いた模様。それにしても北京中央が測量梁と欽定でも今回の選挙の面白さは地元の富豪連中、李嘉誠や東亜銀行の李Baby國寶らが唐紅酒支持を崩さぬことで、李嘉誠次男のリチャード皇子が社主となつた信報は鮮明な梁不支持で中央から圧力かかつてゐると報道もされてゐたが今日の信報の社説は「梁唐當權俱不利 最佳結果是流選」で「梁も唐もダメ、白票多数で選挙無効に!」と呼びかけ。

唯一適切的選擇,就是「流選」。選委投下白票,合乎法規;「流選」是制度的一部分,也切實可行。況且民調顯示,四分之三的市民都認為「流選」可以接受。再者,「流選」不但無損港譽,反讓國際社會看到,香港的特首選舉,有的是真選擇;選委們不是甘受有形之手左右的投票機器,不是計較個人得失換取政治酬庸的投機者,而是以民為本、顧全大局的良心。有人說,「流選」之後,難知可再選誰人,風險太大。可是,比起梁振英當選特首所帶來的風險,「流選」反而是最穩當的結果。

とこゝまで言ふか?の過激な主張で「選挙無効となつた場合の再選で誰が当選となるかのリスク大と危惧する声もあるが測量梁が当選して齎されるリスクに比べたら選挙無効は穏当な結果」と。もはや信報は代々木の「赤旗」くらゐ真っ当な主張する新聞になつてしまつた。これは面白い。葉劉淑儀の新民党は選挙前日の今日になつて測量梁支持を表明。抜け目ない葉劉女史であるから、きつと測量梁支持してをいて、さう遠くもなく反・測量梁の世論高まること必至で(ってもうずいぶんと高いが)さうなつたときにポスト梁で「アタシが」なのだらう。欽定の選挙なのにこれだけ面白いのだから。それに比べ日本なんて選挙やつても、どうせ民主党激減る分が、あの気違ひさんたちが徒党組んで躍進か、と思ふと自由な普通選挙実施されてゐるのに「選挙の意味が全くない」と思へてならず。午後は官邸でご執務。メールの返信しつゝ仕事片付けるだけで半日。帰宅して軽く普通のご飯。夕方飲んだ鎮痛剤を最後に頭痛が失せてくれた。NHKスペシャル「故郷か移住か〜原発避難者たちの決断〜」見る。昨晩まで寝すぎたのか眠れず夜中まで起きてゐたら半夜三更に本日の模擬選挙の投票結果発表される。

港大民意研計劃舉辦的特首選舉民間全民投票公布結果,共22萬2千990人投票,其中12萬1千多人投棄權票,比例54.6%。投票支持梁振英的有17.8%;支持唐英年的16.3%;投票給何俊仁的有11.4%。

22.3万人!が投票(模擬投票なのに人口700万人の3.2%)し過半数が棄権。官製欽定選挙で当然の判断だが。ネット投票はiPhoneのアプリまで用意されたが謎の(って誰だか当然だが)黒客(広東語でハッカー)により攻撃され機能せず。香港で十カ所だかの投票所で二十数万人が二日で順調に投票できたのは棄権票が多く投票の際に悩まなかった結果か(嗤)。
NHKスペシャル「故郷か移住か〜原発避難者たちの決断〜」で冒頭「浪江町の2.1万人は町に戻るのか……今後の行方が注目されています」……ってNHKさんよ、株式相場や景気ぢゃないんだから。なんだか、この「今後の行方が注目されています」といふ言葉の上滑りが気になる。浪江町からの避難者にこんなことを言つては失礼かもしれないが「帰れないなら帰れない」って「言ってくれれば」とか「決めてくれないと」とか表現が耳に残る。政府や官庁が何を決めても何を言つても(更にそれが信じられるか信じられないかといふ疑問もあるわけで)本当に決めるのは自分自身のはず。番組のなかで核禍の現状でさういふ判断に追ひ込まれた町民の姿が紹介されてゐるのも事実。自分の意志で土地への執着は二の次に家族の幸せだけ最優先でさつさと移住、移民してしまふ中国人、香港人のなかにゐると自分の生活にかゝはる決定を御上のお沙汰に頼らないのが当然と思へてならず。
▼本日の「七人ラ式蹴球」で自由香港vs共産中国(これは言ひ過ぎか……笑)の試合あり香港が快勝。観衆がまぁ香港の勝ちを喜ぶ態がやはり何処か行政長官選挙前日で政治的に映る。
ドラえもんの漫画はZ嬢が澳門で入手の「愛瞞日報」に掲載のパロディ漫画。この、なか/\素敵なネーミングの新聞は澳門の新澳門學社(こちら)なる、まるで五四運動から正当に続いてゐさうな民主運動団体の出す機関誌。ドラえもん「民主の泉」の巻きは、民主、民主と世論がうるさいなか澤山の社会問題背負ったジャイアン(吹水安=崔世安←マカオの行政長官)が湖に溺れ、すると湖の女神(宗央=北京中央)が「帅崔」なる名の青年を連れて湖底から現れ「これが機智に富み治世能力に優れ市民の信頼厚い行政長官ですか?」と、のび太ドラえもんに尋ねる。二人は「違う、違う、行政長官はもっとデブでもっと間抜けで能力に欠け外遊すればヘンな普通話(北京語)で話して笑われるばかりの吹水(ホラ吹き)行政長官です」と答える(写真右)。女神は「この素晴らしい方をあなたたちの行政長官にしてあげますから」と進める。のび太は「ほんとにこの中央が選んでくれた人が自分たちが選んだトップよりいいのかなぁ?」とボヤく。その向こうで湖に溺れたジャイアンが湖の女神に水のなかに引きずり込まれ藻掻きながら「民主のほうがまだマシだよ、中央は怖いよ」と叫ぶの図。