富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十一月十四日(金)晴。黄昏に灣仔運動場。来週末のNikeの10kmのゼッケンなど受領に参る。参加者、本来は完走者に配られるべきTシャツも本日頂いてしまっては、これぢゃ場所が天水圍といふだけでも遠く参加危ぶまれるといふのに余計に行かぬ公算高まるばかり。MCLのKornhill戯院にて窪塚洋介君の『狂気の桜』見る。幼拙ながらどうにか何か言わんと欲す姿勢は見せる窪塚君発案にて主演といふので多少何か衆論ありやとも期待せど格好ばかりの平成維新、結局所詮単なる組の対立の極道映画に終るは残念。窪塚君演じる青年山口君、山口君と聞けば山口二矢と思うのは余の齢ゆえか、60年代に大江健三郎君が左翼語ることが新しくそれが平成の世ではスマートなネオ右翼が新鮮か。窪塚君宣うは日本は巨大なる勢力に取り囲まれてこのままではダメになるといふ危機感。日本が立ち直らねば、という気概と強力なるエディプスコンプレクス。「ナンパ」なんて何語なんだろう、日本人なら日本語使えといいつつ自分は「イデオロギー磨かせてもらいます」と(笑)。洋意(からごころ)を最も捨てられぬは実は渋谷に生れ育った自分たち。結局、国家だ日本だと大層なこと宣ふが所詮は自らのシャバなる渋谷が「わけのわかんねー自分たちのことしか考えてねえ日本の国民か貴様らみてーな」連中に占領されていることへのイライラだけか……。ところでナンパが軟派であること程度なら知らぬ者も少なかろうが(窪塚君も当然知っていて映画では知らぬ役を演じたはず、だろう)「硬派」が真面目の意と「誤解」されるのがキョービのご時世かしら。ところで(その2)映画の中で青田の親分(原田芳雄)の床の間に飾られたハングルで書かれた掛け軸、僅かしか映らねど余にはハングルで「ハングル」と書かれているように読めたが見間違えか。もしそう書かれていたとしたら日本人が「ひらがな」と書かれた掛け軸掛けるようなもの(笑)。日本にてじっくり生きた在日の中年が鬱病になり易いだの按摩は中国人女性だのと、それでなくとも日本の右翼に対するアレルギーある東アジアではこの映画はどうにもウケまひ。ところで(その3)高校生演じる高橋マリ子キャバクラ嬢にしか見えず。窪塚君は二年前だか『Go』にて在日朝鮮人の役演じ「背景のある」作品演じられる若手の出現に期待されたが、今回は右翼だからどうのこうのではなく、単にその「背景」弱すぎて繰り返すが陳腐な組の抗争だけに終った極道映画。終ってZ嬢「たけしの映画よかつまんない」と一言。御意。Kornhill Plazaに寿司亭なる回転寿司出来たそうで参るが行列あり回転寿司並んで食すも野暮、Juscoにて中島水産なる魚屋の持帰り寿司。生烏賊と細魚、鯛はそこそこの味。とくにスーパーの持ち帰り寿司にしては舎利は立派。ジャックダニエルを生(き)で二杯、ピンクフロイド効きながら風呂に入れば風呂場の反響でピンクフロイドよりピンクフロイドらしさ。『噂の真相』で佐高信が紹介した、藤原弘達が69年に述べた一節は「もし自由民主党過半数議席を失うようなことになった場合、公明党に手をさしのべて、これとの連立によって圧倒的多数の政権を構成するならば、そのときは、日本の保守独体制が明らかにファシズムへのワンステップを踏み出すときではないかと思う」というもの。藤原弘達のこの危惧から35年。本来保守であるはずの藤原弘達が当時の300議席に手が届く圧倒的な勢力の自民党を、ではなく将来の過半数に届かぬ時の自民党の危険性を危惧したことの先見。確かに300議席自民党なるものは岸信介の右から広池会の宮沢喜一君に至る保守本流、三木、宇都宮といった中道リベラルまでを有し、左右の振れも見事、それに比べると民主党への分裂を経て護憲派など存在もせぬ、つまり左のブレーキ効かぬネオコン牛耳る現在の自民党。自公連立にては唯一の関心は公明党改憲、それに先立つ教育基本法改正で(これは前回は公明党が改正に難色示し持ち越し)どこまで対自民の独自色出すか、と。
▼(第3版……笑)昨日珍しく褒めた朝日のイラクでのイタリア軍軍事施設爆破をテロと呼ばなかった件、某在京の新聞社に勤める友人より報せあり、朝日は実は朝刊早版では「テロ攻撃」の表現使っており大阪の朝日も同様。それが「自爆攻撃」との表現変更、とすると当初つけた見出しについて強い異論が出て差し替え、この段階での「異論」となるとデスクレベルでなく幹部クラス、それも編集局長室以上、と友人。普段なら幹部クラスは逆の意味で「偏向報道を自制すべく政府筋のお気の召すままに」表現の訂正ならあるが、幹部クラスでのこの正義?は意外。いずれにせよこの「自爆攻撃」なる表現は評価に値していたが実は結局、朝日の昨日の夕刊では「テロ攻撃」といふ表現に。再び幹部クラスからの表現の訂正が依頼されたか。やっぱり昨日朝日を「つい」褒めたことに買い被りあり反省(笑)。……とここまで書いたら(追加)更に詳細が報らされ、夕刊で2版、3版は「自爆テロ」が4版では再び「自爆攻撃」だそうな。何が起きたか朝日新聞。内部で箱島派と旧守派の暗闘か(笑)。ちなみに大阪は朝刊でテロ、夕刊は攻撃。名古屋も同じ。西部版は朝刊、夕刊も攻撃。たんに現場サイドの混乱かも。「こういう場合はテロは使わない」が基準だが現場でついついテロに慣れ(悲)「テロ」と書いてしまひチェックするほうも見落として後で気づく、とか。だがそれじゃ面白くないので噂の真相の一行情報っぽく「朝日の幹部層で暗闘中」といふことに(笑)。
▼陶傑先生が蘋果日報の隨筆で英国の左派の女権運動家Christabel Pankhurstの格言取上げるは“Never lose your temper with the Press or the public is a major rule of political life”と“For a politician to complain about the press is like a ship's captain complaining the sea”と。「いちいちマスコミだの世論に怒らぬことは政治家の第一の条件」「政治家がマスコミに腹立てるのは船長が海を腹立てるようなもの」とは御意。自らは何でも言い放題でテレビ局の報道ミスには名誉毀損で告訴も辞さぬ都知事
▼熊本の九州ルーテル大学(旧九州女学院短大)の教員が大麻所持で逮捕されたが、またもやたかだか大麻。だが大麻取締法なる法律があるかぎり法治社会は大麻を轄まるか。この先生、大麻栽培までしてかなり本格派、と見たが、臨終心理学が専門、地元民放の情報番組にコメンテーターとしても出演、と。大麻キメた心理学の先生がテレビでコメント、って想像しただけでも愉快。それをこの大学の学長は「世間を騒がせて申しわけない」と謝罪。御意。申し訳なきことはたんに「大麻はいけない」と信ずる社会を騒がせた程度。このマリファナ教授のせいで実際に何か社会的被害あったわけでもなし。但し学長は続けて「教育現場として遺憾なこと。言葉で表しようがなく、申し訳ない」と蛇足な謝辞。今の大学が学問の志もなきガキ相手に学位配るだけの組織であるのは事実だが少なくとも大学は教育機関である以上に研究機関であり研究者は立派な研究さえすれば大麻吸飲しようがアル中だろうがどうでもよきこと。もしこの教授が実際に研究成果なければ社会に対して謝罪すべき。「言葉で表しようもなき」は痛切な反省の語彙にもとれるが単に「自分は大麻など吸ったこともないのでわからない」という意味にとることも可能。どうせなら「世間を騒がせたことは申しわけない。だが私も大麻など経験ないので言葉で表しようがない」といえば妙答。
▼来年の新之助海老蔵襲名、築地のH君に知らされたが勧進帳団十郎の弁慶で「海老様」は富樫だと……。なにゆえに海老蔵の襲名で父上の弁慶見せられるのか……団十郎の白猿?襲名ならまだしも。あ、それも悪しくもなし、団十郎の三升?、白猿?襲名で新之助がいきなり十三代目団十郎襲名とか。今回の新之助海老蔵襲名記者会見でも父団十郎思わず「新之助団十郎襲名」と言い間違え照れ笑いでもあったのだし。その海老蔵襲名の演目には当然助六もあるがまさか団十郎助六で新・海老蔵が福山のかつぎってこたぁあるまひ(笑)。