富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

十一月十三日(木)晴。昨日のたつた二合余の酒にて宿酔なくも終日倦怠感甚だしくつくづく老ひを感じ入るばかり。香港政府は教育予算まで削減に乗り出し、その的となったは大学生などの授業料補填する補助金の削減。大学生ら一斉にこれに反発、罷課(講義ボイコット)も避けられず。現在この一律全学生対象にせし補助金あり学生負担の授業料を幾許か廉額に抑えるもの。確かに中流化進み大学高専の数も増え嘗ての貧しき香港にて香港大中文大の両校だけの時代とは異なり学問の志も低き単に学歴稼ぎの若者がためどうして公費援助が必要かといふ気もするが教育予算で何を削減するべきかといへばまず公費にて養ふ必要なき研究の何ら社会的還元もなきロクでもなき教員どもは解雇するか大幅な給与削減すべきであり(何のために「これ」を大学にて高級にて雇用しているのか?と甚だ疑問に思われる教員かなり多し)大学の教員住宅など香港の水準からすれば超高級な施設をば給与額の毫か7.5%の支出のみにて貸与する不思議。無駄な大学教員の解雇、たかだか外語教える程度の教員の大幅な給与削減及び住宅個人負担額の上昇することでどれだけ経費削減となるか。少なくともどう見てもアホだが若者に投資してみることとロクでもなき教員の人件費とを比べればアホな若者も突然学問に覚醒る可能性もなきにしも非ず、将来的に世のため人のためになる可能性、確率で考えれば当然後者を削るべき。SARS復興にと巨額のギャラで外タレ集めHK$1億をば公費浪費しておいて大学教育での補助金削減とはさすが阿呆政府らしさ。昨日入手せしBoseのヘッドフォン。連続的なる騒音の排除は理解したがいざ音楽聴けばどうかと試しにグールドの演奏にてリスト編曲のBeethovenの「運命」。……。ピアノの低音床を伝わるが如く響きグールド先生の唸り声もスピーカーに比べものもなきほどフレーズとして聞こえる不思議。晩は尖沙咀にて高座あり終わってM君の車に送られ帰宅すれば終日残る疲れに爆睡。
イラクでのイタリア軍駐屯地での爆破。築地のH君が見つけたが今日の朝刊各紙見れば見出しに「自爆テロ」との表現が踊るなか(例えば讀賣新聞)朝日だけが唯一「自爆攻撃」と呼ぶ。これは朝日の見識の高さ。珍しく朝日を褒める(笑)。今回の攻撃は純然たる軍事施設が目標で民間人を狙ったものに非ず、これはテロに当たらぬ「侵略軍に対するゲリラ戦」の範疇であり、合法的である可能性も極めて高いのでは?とH君。テロと呼ぶことで無意識にイラクのゲリラ勢力を「悪」と見做すことの危険性。H君指摘するは、そもそも異教徒の外国軍が侵略してきて傀儡政府まで作ろうとしていることに抵抗しない、祖国の伝統を投げ捨ててもろ手をあげて占領軍を歓迎ではまさに自虐のきわみ。ゆえにイラク攻撃に反対するのはイラク国民に当然の理あり、それをテロと呼ぶなど言語道断。ちなみに赤旗は当然のようにテロ扱いせず。
▼朝日の国際面「ことば・ワールド」にブッシュの言葉あり。「第二次世大戦前、民主主義の経験がほとんど、あるいは全くなかった日本が民主主義を受け入れることができたのだから、中東の人たちにもできるだろう」と。唖然。「ほとんど」と「あるいは」でだいぶ異なるが、いずれにせよブッシュの如き野蛮な輩に日本は野蛮と罵られたようなもの。一昨日の日剰に綴った樋口陽一先生の強調した日本の完璧とはとてもいへぬが明治からの民主主義、立憲主義の実績もブッシュの如き浅学にはその知識もなし。こういったブッシュの日本にとっては国辱的なる言動にきちんと反論すべきがナショナリズムであり首相小泉三世、都知事、歴史教科書の「つくる会」の西尾先生など默っていてはいけぬのでは。築地のH君に言わせれば、この点は保守反動の彼らの完全なウィークポイント、論理的には回答不能でしょう、と。つまり日本における米国による「戦後民主改革」を全否定しておいて同じ米国のイラク民主化は100%支持。どうせなら「ブッシュの言う通りです。日本はもともと民主主義の経験なんてほとんど、あるいは全くなかった。なぜならそれは本来、わが国の文化には相容れないものだからです。だからアメリカが持ち込むまで、民主主義はなかった。それはわが国には必要ないものだからです」とでも反論すればいいのだがアメリカに阿って言うべきことを言わず。或は樋口陽一先生の如く「そんなことはない。わが国にも民主主義の伝統はある」とも言えず。その上、自分たちが認めぬはずの「アメリカによる民主化」という価値のためにイラク自衛隊を送る。この大いなる矛盾に疑問もないのは思考力の欠如か。これでは愛国どころか自らがふだん彼らが罵る売国奴国賊と言われても致し方あるまひに。ところで朝日はどういった意図でこのブッシュ発言載せたのかは不明。