富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

蘇州→上海→香港

農暦六月初六。曇。朝九時過ぎに宿を退房。地下鉄で、蘇州では地下鉄を「軌道交通」と呼ぶのだが、これは郊外の路面電車を含めた都市総合交通システム構想ゆゑ、苏州乐园から苏州火車站まで広済南路乗換へで8站、30分程。

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10年前に家人と来蘇の頃すでに蘇州は上海から北京を結ぶ京滬幹線であるから動車の和諧号こそ走つてはゐたが、その頃の旧驛舎にはまだ「軟席候車室」なんて一等待合室があつて古めかしいソファなど並んでゐた時代。

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それが驛舎も巨大なターミナル化して路線バスも含む自動車は地下に誘導され驛前には広場があり、その対面に高層オフィスビルが建ち誇つてゐる。樓上のコンコースには「これでもか」といふ程の乗客。12ホームだが東京驛も全ての乗客を一ヶ所に集めたら、もつと凄いのだらうが日本ほど「改札があちこちにあり何処からでも入場して列車にたどり着ける」のは寧ろ珍しく欧州のやうに終着駅で驛舎正面から直接、ホームに入つたり、中国ではとにかく一ヶ所に待たせて列車に誘導となる。それでも昔は「候車室」があり列車毎に並んだ長椅子に坐つて列車を待つたものだが今の過密ダイヤでは、そんな悠長さもなく巨大なコンコースで立つて待つてゐて列車入線の数分前にホームに降りる。蘇州〜上海など高速バスも多く、それでも渋滞も遅延もなく半時間程なのが強みか乗客多し。こんな短い距離を、と思ふが時速275kmも出す。

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一等車の2列目(2Dと2F)に座つたが途中の昆山南站から車内で大胆な光景に遭遇。
1A 1C   1D 1F
2A 2C   2D 2F
3A 3C   3D 3F
といふ配列で満席。1Dに先客ゐて、そこに乗つて来た夫婦は1Fと3Aらしい。娘一人連れ。ならば1Dか3Cの客に事情話して席を替はつて貰へば良いと思ふのだが夫は3Aで妻が娘と1Aに座り一等席だから余裕もあるのだが妻は何と1Dとの間の肘掛に坐り荷物は通路側に放置したまゝ。1Dの客にはとんだ迷惑でアタシなら注意するか、それでも注意しても隣に母子が狭そうに座るのなら席を替はらうと此方から言ふが、このまゝ上海へ。上海虹橋站着。ホームは30番線まで。こゝから虹橋空港のターミナル1に移動。ターミナル2へは地下を歩けないことはないがターミナル間の移動バスは無料ながら30分間隔だかで地下鉄10号線でターミナル1へ。地下鉄站と空港ターミナルが直線距離で200mほど離れてゐて現代中国でありながら屋外の歩道を猛暑のなか歩かされ駐車場を迂回するので不便。中国東方航空のラウンジに寛ぐ。

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今までの国内のラウンジで最も文明的かも。香港往きKA813便は12:50の搭乗時間にゲートに着いたら、もう搭乗始まつてをり出発すら早まる?と期待したら乗客搭乗済んだあと「搭乗取消し」の客が出たさうで預け荷物の要取出しもあり結局、機内で90分待機。香港に戻る。4日間、香港を留守しただけで危うく香港で週末にどんな動きがあつたのかがよくわからないところ海外の新聞が読めることだけでもありがたく、ネットもVPN咬ませれば、どうにか自由世界と繋がつてゐられる。それにしても昨日の九龍示威での警察による「鎮圧」の過剰ぶり。

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▼最近、香港でも路上で物乞ひする外国人の若者たち見かけること屢々。海外を旅するなか費用に困り恵んでください……なのだが何せ小綺麗なのだ。

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昔からかうした物乞ひの旅人もゐたがヒッピー崩れであつたり何かしらの中毒だつたり滞在期限は切れ旅券すらないの?みたいな、何うであれ哀れ感な旅人であつた。それが今の彼らは爽やか。香港に暮らしインター校にでも通ふ若者が体験学習でもしてゐるのでは?とすら疑つたが彼ら、かつてのバックパッカー(背包客)ならぬ“Begpackers”(背乞客)なのださうで東南アジア各地で目立つてゐるのだといふ。
「背乞客」襲東南亞 - 瑪麗 - 信報網站 hkej.com
「利用當地人善心去達到個人遊樂的自私目的,絕對不可取」といふのは正論であらう。本当に生活に困つた貧窮者ではないのだから。

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蘇州その③

農暦六月初五。夜中に大雨、落雷あつた由。小暑陽暦で七夕、乙姫凝らし着飾つた若い娘も少なからず。支那事変から82年。晴のち曇。家人と宿直近の苏州乐园站から一つ先の玉山へ。苏州乐园站は苏州乐园といふ遊園地直近でこの駅名となつたが苏州乐园の倒産と廃業。間もなく3号線開業で、この駅が乗換駅となるのに合はせ「獅子山站」に名前変更の由。玉山も広大な緑化された平地に高級マンション点在で、その核に高級消費場所があり地下鉄と連結。だが地下鉄利用者は少ないのだから客の多くは自家用車なのだらう。日系の泉屋百貨あり。近畿地方の中堅スーパーださうだが蘇州ではエノテカも入りイカリスーパー感あり。地下鉄で賓河路站に行き金河大厦ある新区の中心地まで歩く。その後、無謀ではあるが炎天下、日傘に隠れ松鶴樓分店まで歩く。実は昨晩、持参の箸を置き忘れ。受付嬢に「昨晩、箸を」と告げると帳場の経理が「はい、こちらで」と、さすが名店の有難い対応。城内に行くことにし折角だから蘇州麺の名店・同得興麺館に、と思つたが朝七時からで昼は今が正午で午後一時迄。路線バスでは道路渋滞も心配で途中、地下鉄に乗り換へ(実は幹線道路はバス専用車線完備で渋滞ないことに後で気づく)乐桥站から人民路を下り市体育場の路地を抜ける。

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さすが蘇州、運動場も蘇州建築。十全路渡り十梓路の同得興に12:40くらゐに着く。

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昼時の繁忙。愛想良き女将に整理券渡され15分ほどで着座。

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清湯麺に鴨肉の鹵味をつける。食肆は昼すぎにかうして終ひ明日早朝に開店。

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美味至極。蘇州公園抜けると日曜で、といふか曜日など関係ないか多数の老人たちが卡拉OK、ダンスに素人の大道芸……と拡声器咬ませ大騒ぎ。文革紅衛兵世代ゆゑ。ちなみに香港屯門での昨日の市民デモは屯門公園で香港の発狂老人らが公園で大騒音でダンスや卡拉OKで迷惑を駆除するものであつた。中国でのこの紅衛兵老人らの公園占拠はかなり深刻なのだが野放しのやう。

繁華街の観前街に少し入り東に折れ、やはり蘇州に来たのだから平江路の水路沿ひに往くが日曜午後でとんでもない人出。

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中国崑曲博物館でもある全晋会舘に向ふつもりが路地曲がり底ね、いや、それより横丁の道路が見当たらない。戻つてきてみると工事中で何かと思へば道路掘り返し水路の復活とは。暗渠にあらず、これは大変な工事ながら外城河の東辺と平江路水路結ぶ600mほどで下水道整備さへすれば見事な水路復活で風情ある路地ゆゑ、これは楽しみ。

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全晋会舘では日曜午後、昆曲好きのお素人衆が笛に合はせての唄ひの会。誰彼勝手に入つてきて皆さんで。まぁ、これが何とも風情あり。南の相門まで下る。折角の蘇州なので東の開発区「園区」に行つてみることにする。地下鉄に乗ればすぐだが路線バスで蘇州大學前から城域を出て東に干将東路を進み開発区の超高層ビル建ち並ぶビジネス街から金鶏湖の北を回り園区へ。此処はシンガポール資本による開発区。

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蘇州は西に新区、東に円区を有するが「新区」開発の後に都市計画の完成型のように出来たシンガポール資本による「園区」は超高層ビルと低層の消費施設が金鶏湖といふ恵まれた自然環境と調和して実に現代的に美しい……かぎりなく人工的なのだが。

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日曜日といふこともあり子ども対象の娯楽施設に憩ふ子連れの家族が、いかにも二子玉川的。

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水路、運河の水質はかなり浄化され悪臭がせぬどころか小魚泳ぐほど。此処には久光百貨店あり。久光とは日本のやうだが上海資本で香港の「そごう」の経営権買収したのも、この会社。園区から「現代大道」を2系統の路線バスで城内に還る。車窓からは晴天の空、金鶏湖を輝かせる夕日、緑豊かな湖畔をジョギングする市民、遠くの湖岸の超高層ビル……蘇州の新しい風景。確かにこれが「水の蘇州」の21世紀の姿なのか。城内に戻り、つい西北の山塘街の方に歩いてしまふ。平江路の観光化も凄まじいがこちらはさらに土産物屋ばかりで昼の暑さ避けた観光客が芋を洗ふが如し。通りに入るのも厭ひ裏道を地下鉄2号線の方に歩き晩飯を路地の安食堂で済ます。

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日本人など来たのが初めてのやうな店で勝手に啤酒を出し栓抜きはどこ?と帳場で尋ね笑はれる。ホテル近くのコンビニで眞露の二合瓶、17元で購ひ客室に戻り、これを飲む。
▼本日、香港では九龍で尖沙咀から西九龍の高鉄站に向かひ大規模な、主催者側発表で23万人余(警察発表は5.6万人)の市民デモあり。

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主催が「民陣」といつた泛民主派の表立つた組織に非ず呼びかけ人こそ数名ゐるがネット上で、リーダーも不在でこれだけのデモが実行できるとは。午後7時半だかのデモ解散後に黒蟻の若者たちが旺角で警方と対峙。今回のデモは香港のこの逃亡犯条例改正を、これが全く報じられてもゐない大陸民に事の大事知らせるがためデモを大陸客多き九龍で、それもデモの目的地を西九龍の高鉄站としたもの。

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港鐡は本日午後の西九龍発列車切符発売昨日より中止し利用者制限し警方も香港政府総部守るよりも厳重な警戒で西九龍站防御するのは此処に「一地両検」で〈中共〉がこの駅舎地下に存在するがゆゑ。

蘇州その②

農暦六月初四。曇。この季節にしては涼しい日が昨日から続いたが昼から蒸す。朝餉はホテルが日系なので、といふか日系でなくても日本人、殊にビジネス客多いと和食があるのが嬉しい。

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終日、基本、新区にある知己のオフィス。時間空くと星巴で一服で珈琲腹な感じ。一服なのだが子どもの頃からコーヒーやお茶でカフェインが効いた気がしない。お昼に蘭州牛肉麺の店で刀削麺を啜る。

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もうかなり暑い季節なのに冷房もつけず路傍のほうが風が涼しいやうな小店で汗だくで暑い麺を啜る。今朝、香港を発つた家人来蘇でホテルに下榻ののち知己のオフィスに来る。本当に他人を煩わせず自分で動くのは大したもの。明後日の高鉄の切符買ふ用あり。一人分ならスマホで買ふが家人と二人分、家人をアプリで紐付けにすればいゝのだがアプリは国内の携帯紐付きでアタシがこの鉄道アプリ登録した時は国内のプリペイド携帯の番号あつたが今ではプリペイド不可でアプリの登録変更の場合に携帯に確認のメッセージ届くので、これは使へず。どこか車票售務処に行けばいゝのだが地元のスタッフに尋ねても皆さんアプリでしか車票など買はぬから票售処の場所に明るくないのは今のご時世。幸ひ近くに票售処あつたが風前の灯のやうな老朽化した施設で年寄りの職員が一人で細々と。


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晩は折角だから、と蘇州料理の名店・松鶴樓へ。といつでも七里山塘の本店に非ず新区から城内に入る手前の京杭運河沿ひにある永利広場にある支店。永利広場は高級飲食店集めた消費場所で高級自家用車で来る客相手。

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蘇州といへばやはり松鼠桂魚、太湖二鮮、それを肴に松鶴樓銘の黄酒(紹興酒)いたゞく。

▼本日、香港では新界の屯門で市民デモ。毎週でも開催場所をどこに変へても、数千、数万の人が反政府抗議で集結する現実。

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だが中共にゐるとかうした動きの報道は一切ない。さういふ報道がないどころか外国文学作品からも「神様」や「聖書」といふ語彙すら消してしまふといふのだから。

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蘇州

農暦六月初三。朝、雨。陋宅下からミニバスの始発前に歩いて出て地下鉄に行き香港站から空港へ。空港は朝便で混雑。ラウンジも皆さん朝食時間とはいへ、よくもこんなに食べるものだと感心。アタシはミニマリスト

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KA838便。機内で『2001年宇宙の旅』を飛ばし飛ばし見る。小さな画面で不鮮明だが気のせいか宇宙飛行機のパンナムの文字とロゴが見えないやうな。宇宙ステーションにはヒルトンホテルとあるのだが。飛行機はターミナル離岸して離陸までに出発混雑もあり半時間ほどかかつたが飛べば2時間のフライトで昼に上海の虹橋空港着。空港は1号航站楼が国際線用に新築で快適な小さなで実に快適。賃貸自動車の差回しあり高速道路を一路、蘇州。二年ぶり。新区でホテル日航投宿。

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地下鉄1号線も開通し獅山天街なる巨大な消費場所も開業。どこも個性のない開発区なのだが。夜まで諸事済ます。早晩に商業街。


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日本の田舎の町の繁華街のやう。といつても、これだけ料理屋、飲み屋が並ぶ通りなんて、ないか。知己と紋兵衛といふ食肆。〆の日本蕎麦は香港ではたべられない高水準。現地での話の中で香港の逃亡犯条例の話題となる。香港にとつて深刻な問題だが中共の国内では毎日、人民も外国人もその規制の中で暮らしてゐるわけで、それがそのまゝでよく「香港だけは」と認識されることに国内的にはどれだけピンとこないか、と。これはとても難しい問題。シャングリラホテルの、あまりに緩い酒吧に一飲してホテルに戻る。バスタブがそこ/\深く久々にゆつくりと湯に浸かる。ホテルは外資系はかつて問題なく西側の有害なSNSに繋がつたものだが今では外資系ホテルもネット規制の下にあるやうで繋がらぬ上にVPNにも接続できず。キャッシュレス社会で人民元の財布忘れてきたことに終日、気づかず。

▼機中で読んだ信報の社評

與其重複官腔 不如破格溝通 - 社評 - 信報網站 hkej.com

「與其重複官腔 不如破格溝通」この題では漠然としてゐるが71の立法会破壊で歴代主席(議長)のうち肖像画が辛うじて汚されなかつた曾鈺成につき建制派のうち彼の良識を語り香港の不安定な政治状況の中で行政長官の任に当たれるのは彼ではないか、と。同意。

現代化之路……共和国70年

農暦六月初二。曇、夕方に雨。尖東。香港歴史館。

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「現代化之路……共和国70年」と題して中共建国70年祝賀の特別展。「我们一定学母国伟大的历史!🇨🇳」でかなり愛国教育色強し。北京の国家博物館からかなりの史料はかなり原本展示とリキが入つてゐる。

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斎白石師最晩年「迎接中国人民第一個憲法中共がまだ理念で美しかった唯一の時代。

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さまざまな展示の中、文革はこれ一枚。文革は「内乱」で四人組失脚で幕。毛X東の責任、罪が意図的にボカされてゆく。

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無機質の鉄が惚れ/\するほど美しい。

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結局、習近平賛辞で終わる。

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この発展計画がどこまでできるか? 基本的に第1期5カ年系計画からずっと同じ考え方なのだ、と納得。


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字は体を表す。毛X東と周恩来で、やはり性格の違いが滲み出る。周恩来は皇帝にはなれない。

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これも一瞬、毛X東からと思つたが人民解放軍の張愛萍将軍(1910〜2003)の揮毫。これも所謂「毛書体」でいかに毛X東の時代であつたか。

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こんな高鉄車両の原寸より大きい?展示もあり。


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雨歇む。尖沙咀の路地裏。


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中古のフィルムカメラやフィルム、現像までする専門店。古い唐楼の中にあつたが、これもこの建物が取り壊され再開発となるまでか。

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尖沙咀を抜け佐敦まで歩く。上海街の酒巴に啤酒一杯独酌ののち呉松街にある「養心殿」といふ台湾風の鍋屋にT氏と酸菜白肉鍋をつゝく。台北の他でこの鍋は初めて。


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旅荷をつくる。キャリーハンドルの内側の段差部分をどう使ふか。傘、コード類はピタリだが、もう一ヶ所はいつもぴったりのものがない。我ながら収納は実に上手なのである。

▼月曜日(七月一日)の立法會騒動につき警察の捜査本格派しすでに反百に及ぶ逮捕。

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最年少は十四歳の由。

14歲示威者稱闖入立法會 因對和平遊行感絕望 - RTHK

一名化名「阿文」的示威者只有14歲,有參與6月9日、6月16日兩次反修訂逃犯條例遊行。他接受本台訪問時說,他當日原本參加民陣遊行,最後決定參與闖入立法會行動,是因為對和平遊行感到絕望。他說清楚知道,闖入立法會是違法的行為,會被拘捕,但認為若不衝擊或佔領立法機關,不會理會示威者的訴求。

漲る若き血潮が改革に、であらう。同じ行為でもこれが百年前であれば英雄的革命行為で革命烈士として中共史に残るところ。今回は政府、警察も北京中央の支持、圧力もあり徹底調査と不届き者逮捕に余念なし。DNA鑑定まででき顔認証もあり指紋だけなら香港IDで全市民の指紋データあるのだから抗議者特定は容易。今回は立法會内部に報道関係者多く、その分別も厄介だらうが。いずれにせよ「この義憤に基づく行為を何う判断するか?」は別として立法會突入という非合法行為をしたのは事実なわけで、それが最初から無罪放免であつたら、それこそ香港の法治は?となつてしまふのだから「突入するなら、それくらいの覚悟」は必要だつたはず。安易にできることぢゃないし、かうした権力による仕返しが怖ければできない行為。

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この記念切手、もう何年前のものかしら……が旧に貴重品になつてしまつた。

昨晩のTBSラジオ荻上チキ「Session-22」に倉田先生出演され小一時間、香港の情勢特集あり、これを拝聴。香港の中国返還の中英合意にまで遡り何が何うして、このやうな状況になつたのか、をさすがチキ流で見事に分析。香港から周庭嬢が電話で出演。彼女の「中共が香港をダメにする」にはアタシはそのまゝ同調はできないが612の暴動鎮圧や71立法議会破壊につき「香港政府に暴力を非難する資格があるのか」はその通り。国家や政権といふ〈暴力装置〉に対しての抵抗で暴力に対して言論での攻防には限界があり、その場合、暴力に暴力で抗はざるを得ぬ場合があること。これについては台湾で2014年の太陽花学運につき裁判所の判決が寛大であつたことは記憶に新しい。たゞそれを中共、香港“市役所”に期待できるのなら、そも/\逃亡犯条例改正反対など必要ないこと。

秋後算帳

農暦六月初一。終日、雨。夕方からFacobookなど繋がりはするが画像がアップされなかつたり不具合あり。つい、これも何か香港の情勢不安定と関係あり?とまで思つてしまふが米国でCloudflareなるネット関係の会社のシステム不良ださう。それで世界中のSNSに影響があるといふのだから。台所も洗面所も水の出が悪い。これは香港の情勢とは関係ない。はっ!と気になりノズルの整流キャップを確かめる。

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1年くらゐ見ていなかつたか……。見れば見るほどおぞましいが(写真右は)小石やカルキだらうか(無味無臭だが)触感はチーズのやうな、そして硬い小さな欠片など。浄水場でこんな水を供するわけもなく水道管やタンクの老朽化、それに途中の水道管交換とかの時に、余計に出るやで。(写真左は)サビで真っ赤。日本でも実家で水道の出がおかしく見てみたら、やはぱり小さな石などあり。もし、このフィルターがなければ、こんな石とか呑み込んでゐるかと思ふとぞっとするが、香港で異論唱へることは、このフィルターで屑のやうに塞止められてしまうのか。

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人生は寿司のやう、次に何が来るかまったくわからない……って、そりゃ回転寿司だからだろ!と返したいが最近流行りの「お任せ」でもそうか。「それにしても」である、ネタが違ふくらゐで「寿司が出てくることには間違ひない」のだから(回転寿司でデザートとか突飛なものが回つてくることもあるが)それを「何が起きるかわからない人生」に見立てるのは一寸、無理がある。香港の情勢はとても「寿司で次に何が出てくるかわからない」なんて状況に非ず。71立法會乱入騒動で政府と警察が強気で本格的に調査開始。秋後算帳。

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中共はこれまで香港での情勢不安定につき国内での報道避けてきたが黒蟻社中の騒動あつたことで堂々と一面に「坚决支持特区政府对严重违法行为追究到底」の論評掲載。

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「暴力はいけない、法治が大切」は正論。ただ「一些极端激进分子却借口反对特区政府有关条例修订,制造了暴力冲击立法会大楼」の、その「特区政府に関係のある条例改修」が何なのか、の説明なし。ただ大方の賢明な読者は「差し詰め「香港市民にとって不利」な中央政府絡みの条例の改正だろう」といふことは容易に想像がつくはず。

香港に関心を持つ、日本の皆様へ — 昨日の占拠運動について | 周庭 | 立場新聞

周庭さん、頑張つてゐる。たゞ彼女の主張がそのまま正論であるとは私は個人的に賛同はできぬところ。これまでの30年間、市民の声は全く香港政府や立法會で反映されなかつたといふのは言ひ過ぎ。これまでの泛民主派のやり方を否定しても何うしようもない。当時、最悪は「返還があればそのうち中国の普通の都市になつてしまふだらう」といふ悲観論もある中で言論や結社の自由も何にか持ち堪へてゐるのだから。それがあるから周庭ら若い世代もかうして言ひたいことが言へるといふもの。親中派土共連中にもそれなりの言ひ分があり中共とて中共を「悪の権化」とだけ見てはダメではないのかしら。

2003年の50万人デモデモでは世論を嗤ひ逆に吊るし上げくらつた曾鈺成(民建聯)が今日日の政治不安につき行政長官選出方法見直しも含め政治改革が必要と言及。まさか彼の口からマジかよ?といふ感ありだが「ポスト林鄭」で行政長官候補に名前が上がつており本人は否定しているが一寸食指も蠢き始めたか?

晤部份傳媒高層 董建華稱任內推通識科致青年「出問題」 籲徹查誰指使衝擊立會 | 立場報道 | 立場新聞

同じく2003年の50万人デモが決定打になり05年に「脚痛」を理由に行政長官辞任の董建華までが今回の政治不安につき強気で言ひたい放題。政治改革については2014年の「0831」全人代常委決定など前向きに進んでゐることに多くの市民は期待寄せてをり、それを覆すやうな政治改革は現実的ではない、と。若者の突飛な抗議活動での行動も林鄭には特赦の検討もありでは?と宣つてみせた上で自分が行政長官の時に推進した中学での「通識教育」(社会常識等「政治的道徳」教科)が失敗し、かのやうに若者に社会的問題を生じさせてしまつた、と言及。もつと通識教育が徹底してゐれば、といふ実に家父長的発想は相変はらず。

記事タイトル|ニュース詳細|報道ステーション|テレビ朝日

昨晩のTBSテレビの報道ステーションで香港からの報道。ジョシュア=ウォン(黄之峰)が取材に応じて理路騒然とした英語でのコメントに、彼の英才ぶりを改めて認識。愛国教育反対の運動に16歳で関はり雨傘を経て刑務所にも入り、その度に一皮剥け社会運動家として大きくなつてゐる。彼には運動を動かすだけの器量が十分にあると思ふ。それにしても報道のあとのコメントで今回の騒動に関して黒幕陰謀説となり暴力化に中共関与の可能性もありかといふ憶測発言には呆れて言葉も出ず。今回の黒蟻社中の「高度な抗議」の目的地は
①升旗の湾仔会展
②香港政府総部(特首弁公室含む)
③立法會
④紅磡の香港コロシアム
この4ヶ所があつたそう。①は危険リスク高い、④は晩の祝賀イベントで一般市民が多い、さうして抗議者のなかでスマホ使ひ②か③の選択になり、結果③に。やはり「デモ区」があつて場所にも明るい立法會になる。で現場では警察が「あっさり退去してくれて」の闖入となつた次第……予め仕組むには「たられば」条件多すぎる。中共が深圳から慎重に香港の状況を睨んでゐたのは事実だらうが。

【音声配信】香港の議会にデモ隊が突入するも警察が強制排除。現地の状況は?▼2019年7月2日(火)放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」)

この番組で香港から毎日新聞の福岡静哉特派員の現地リポート(電話)は秀逸。抗議社中の立法會突入で一緒に立法會に入り催涙弾で脱出したそうだが、とても冷静で正確なリポート。報道はかうあるべき。

農暦五月晦日

黒蟻社中による立法會突入と施設破壊は昨晩、一度、不可解な撤退で黒蟻の立法會突入許した警方が半夜三更になり黒蟻駆除に出て1時間程で彼らを撒き散らし立法會を奪回。

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午前4時に警察総部で行政長官リンテイゲツガ、政務長官、保安局長と警察トップが4人で緊急の記者会見。 https://isd.wecast.hk/vod/?id=9737

林鄭は従前からの主張繰り返すばかりで今回の立法會破壊の「暴力」行為は許されるものではない、と(当然だが、そして「暴動」とは言わず)。それにしても不可解は警方が昨晩、なぜ黒蟻社中の立法會攻撃に対して午後9時に一切の防備諦め撤退したのか。警察トップは未明の記者会見で、当時この立法會周辺には3万の群衆がゐて警方の防備には限界もあり諸般の事情で撤退を決定したといふ。黒蟻社中が立法會建物の照明系統も徒らに制御でき照明が落ちた場合、暗闇の中での攪乱者対策は危険であり、これ以上の危険を回避するためだつたといふ。だが、それは彼らが立法會建物に突入してからの話であり、その時にはすでに警方は一人として人影もなかつたと思ふと警方不在で寧ろ彼らに暴挙を許したといふ指摘も頷けるところ。今になつて思へば雨傘運動のきつかけが「突入」でも香港政府建物の「塀を乗り越えようとした」「それだけ」のことで、それがあれだけ波紋を与へたり、かつて要注意の活動家とされていた梁“長毛”國雄君にしても立法會議員になり政治を変えようとするだけ、いかに常識的か……と、今回の黒蟻君たちの動きで随分と見方の軸も変はらうといふもの。

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大公報は「待ってました」とばかりに怒れる若者たちの狼藉を詳しく伝へる。

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本日。立法會の施設破壊は深刻だが朝迄には道路封鎖等も解け社会は何事もなかつたかのやう。幾度となく驟雨あり。

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内部破壊された立法會施設検分済ませた民建聯の議員某曰く最低でも数週間は議事審議能はず、主席(議長)に他の開催場所検討等を願ふ、と……深圳か。


▼陶傑先生が「林鄭」について面白い持論を展開。

林鄭不能走 - 陶傑 | 蘋果日報 | 果籽 | 名采 | 20190702

「林鄭問題」が2003年に安保条例反対の50万人デモが事実上の原因で失脚した董建華、雨傘運動と「港独」を生んでしまつた梁振英の二人と何が問題に違ひがあるのか、と。董建華と梁振英の場合は二人それぞれの「慢性病」だつたのに対して林鄭はマラリアのやうな急病。それが香港の内政問題どころか米中関係や台湾統一にまで影響及ぼした点で董・梁の10倍も深刻。中共にとつてメンツが大事。董・梁がダメなら辞めさせて、次にはそれぞれ貧官曽や林鄭が二番手に控へてゐたわけだが今回、林鄭を更迭するとなると世論と外国の干渉に屈したことになり、かつ林鄭を襲ふ「次」の不在(以下、陶傑先生らしい発想の飛躍の面白さあるが)香港は林鄭月娥といふ、空前絶後の強者を有してしまつた。やはり気になるのは逃亡犯条例で林鄭に何が起きて何が問題をこれほど大きなものにしたのか、だが、これについては遊川和郎氏(亜細亜大学アジア研究所長)の「一国二制度の限界浮き彫り」(朝日新聞)がかなり正鵠を射るもの。

(以下、要旨)国家安全条例制定が習近平より課題として改めて林鄭に提示され林鄭は1年以上も前の台湾での香港人による殺人事件の対応を理由に逃亡犯条例改正といふ形でこれに応じようとしたが財界や選挙控へる親中派議員も及び腰のなか林鄭は条例改正急ぐ。当初はあまり深刻な問題ではなかつた条例改正だが「北京中央の支持」露骨にしたことで市民の間で「林鄭、おまえも中共傀儡か!」となり「反中送」が炎上。予想だにしなかつたことで香港で100万人単位の抗議デモ、そして陶傑言及の通り思はぬ余波が広まる。北京中央にしてみても何が悪いのかジレンマだけは募るばかり。

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倉田徹教授(立教大学、香港政治)は逃亡犯条例改正がもはや「システムを巡る攻防」に化けてゐると指摘。「撤回」するまで抗議止めない若者たち、民意による政治変動を拒絶する政府側。これを赦せば「革命」。香港は西洋型市民社会に中国の権威主義が重なる特異な場所となり西洋型市民社会は中国の権威主義を変革しようとし、逆に中国は統制しようとする。政府は市民からの支持もなく民意とは遠い存在で、それに抵抗する側から泛民主派の政治すら罵る黒蟻社中が生まれ、これも民意から乖離は明らか。このこの矛盾した対立を「一国両制」下で解決できるのか、かなりの困難、重い負を背負つてゆくことになるのではないか、と。

香港大学の民意研究計画といへば鐘庭耀、鐘庭耀といへば港大民研といふくらゐ、この先生の独自色が強い。2000(建華4)年に鐘庭耀が民研の行政長官支持率調査につき董建華側近から圧力がかかつてゐると暴露。 香港大學民意調查風波 - 维基百科,自由的百科全书 これで香港大學の学長辞任する程の大きな醜聞となり董建華の支持率も低下。さういふ意味で世論調査がいかなる圧力もバイアスもなく、より正確であることは重要。日本では新聞やテレビの世論調査だが、これも新聞によつて晋三支持率が違ふ。それに比べ台湾民意基金会なんて理想的。で香港なのだが港大民研は香港大學の独立調査機関なのだが鐘庭耀のカラーが強く、それは権力に対して常に懐疑的といふことなのだが、こゝまで親中土共の世となると、それが泛民と見られる。さすがに圧力あるからか鐘庭耀がこの調査機関を独立させたとは。かうなると更に厳正な世論調査とはいへなくなると思ふのだが。