富柏村日剩

香港で2000年02月24日から毎日綴り始めた日記ブログ 現在は身在日本

農暦二月初十

農暦二月初十。薄曇。明日の香港ダービーに合はせ北京から東京に戻つてゐる旧友O氏来港で家人と三人で西營盤の蓮香居にて早茶。

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上環の源興香料で香辛料買ひ求めるくらゐで帰宅するつもりが家人は市場へ、アタシはFCCで週末の新聞読み。


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珈琲豆を切らしてゐるので奥林匹グラエコ埃及珈琲店が九龍湾に移転してをり注文すれば豐順宅配となるが折角なので一度、九龍湾の焙煎所に行つてみようと101系統のバスで中環から九龍湾へ。


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珈琲店では案の定、店主に遠路遥々来て貰へるのはありがたいが一人で切り盛り、配達など不在も多いので予め電話するか宅配が便利といはれる。近くに良心的価格で美味い食肆が工業ビルのなかにあると家人がいふので昼餉はそこで。


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「古香鶏」といひ確かに塩味で蒸した鶏肉は秀逸。早茶のつもりが午後となり606系統のバスで帰宅。まだ少し肌寒いが衣類を冬物から春秋物に整理。朝も昼もいつも以上に食べてゐるので夜は播州イトメン製造の「蟹王麺」を啜る。即席麺だが夜なので具を盛ると、それなりに立派。


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この即席麺、蟹は実際には粉末エキスもないのだがイトメンの日本製で香港オンリーで1968年から販売されてゐるといふ。アタシは最近まで全く認識してをらず。香港で即席麺といへば日清食品出前一丁だが、これは聞くところでは1969年から香港で販売始まりイトメンの蟹王麺のほうが早い。それほど定着してゐる蟹王麺だが日本では販売されてをらず香港で好評なら東南アジアや中国市場こそ大きいだらうが香港の販売元の香港限定のOEMなのかしら。

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今朝O氏からいたゞいた文明堂のどら焼き頬張る。週間読書人など読む。


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▼この経済指標(The Economist今週号)見ただけでアベノミクスの成果が如何なものか一目瞭然。

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新西蘭は基督城での清信人殺戮について

農暦二月初九。晴。知己からSMSで映像が送られてきて何かと思へば気軽な音楽が流れる自動車運転の映像が暫く続き自動車を止めて運転手が車を降りハッチバックから機関銃を取り出し清真寺らしき建物に入ると入り口にゐた人、廊下で遭遇した人、祈祷室にゐた人を次々と銃撃してゆく。パタパタパタパタと機関銃の乾いた銃音。逃げ惑ふ人も次々と乱射してゆく。倒れて蠢く人々も更に撃つ。よくある銃撃戦ゲームのやう。射撃手は大方目のつく人を殺戮し終はるとハッチバックの車に還り清真寺を後にする。……この映像が何なのかわからずにネット上に数数多流れるわけのわからない映像、画像の類ひと何も深く考へずに日常に戻つた迂生。そのあと新西蘭は基督城の清真寺で白人至上主義のキチガヒが多くの清真信徒を殺戮とネット上のニュースメディアに速報が流れ先程アタシが見た映像が紛れもなく、その現場でキチガヒが自分で異教徒殺戮の現場を撮つてゐたもので、それがネット上でニュースよりも早く拡散されてゐたものだと知る。昔からキチガヒが人を殺すことはけして珍しいことではなく殺された人は何とも悲劇だが、かうしたキチガヒ沙汰は人類が生まれた時からずっと、そして今後もけして失せることもなく続く出来事なのだと信じてゐる。全ては、このキチガヒは突然変異で生まれたのはなく、米ソ対立の冷戦といふ「安定した戦後」が崩壊し世界の見た目の修羅場が中東のイスラム圏となり、そこにアルカイダやISISといふ新しい的役が作られ彼らが悪役を演じるなかで「イスラム憎し」といふ感情が熟成され彼らを、何の悪気もない陋巷のイスラム人をも含め粛清しないといけないといふ馬鹿な考へがキチガヒにとつて神から与へられた厳命のやうに狂信されてゐるのだから始末に追へない。たゞアタシが最も怖いのは、今日の殺戮の映像がニュースより先にネットで拡散され、事実、それを見たアタシが何も動顚することもなく冷静どころか何ら感情もなく映像を見てゐたことで、何とも21世紀的な狂気を感じる。

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燈刻、北角で洪記に寄り陋宅での常飲酒調達。Famous Grouseのウヰスキーとジンはゴードンのロンドンドライ。Famous GrouseがHKD88(1,250円)でGordon’sのジンがHKD125(1,770円)なのだ……それも1ℓ瓶で。


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倫敦や東京よりかなりの安値。もう十数年間飲んでゐるが脳に支障きたすことも幸ひないやうで偽酒ではないらしい。


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帰宅の途中、久しくカレーライスを食べてゐないな、とふと思つたら陋宅の扉をあけると咖喱の匂ひ。いくつになつてもカレーライスが美味い。ゴディヴァのチョコレート頬張る。

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上述の基督城にて伊斯兰教徒殺戮のキチガヒが発表してゐた声明文の膨大な文書の中で理想的な国家体系として挙げた国家政府のなかに中共があつたといふ。このキチガヒにとつて支那人も黄禍の災ひだらうが少なくとも中共の漢族独裁での伊斯兰人やチベット族弾圧は、このキチガヒにとつて理想的な政策なのだらう。

ディケンズバー

農暦二月初八。ぐずついた天気続く。夕方、銅羅湾で用事済ませ帰らうかと思つたがエクセルシオールホテルも今月末で閉まるので一寸寄つてみようか。銅羅湾は賑やかだが香港大丸(リビング館)のあつたころはヴィクトリア公園に近いPaterson街、Kingston街のあたりもかなりの人の流れあつたものゝ銅羅湾の賑やかさが西の、今でいへばTimes Squareの方に移り旧大丸のあたりは夕方でも人影まばら。食街なんて飲食店集めてみても不振。大丸の横に昔、ポッカカフェがあつて香港でそれなりにまともな珈琲が飲めるのはこゝくらゐだつた、と思ひ出す。

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エクセルシオール地下のディケンズバーはまだ午後6時前だといふのに、かなりの賑はひ。

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常連だらう飲み客ばかりか、おそらくエクセルシオールの優待券まだ残す会員が多く広東料理の怡東軒や評判のイタリア料理はすでに3月末まで爆満ださうでディケンズバーのダインにもかなり流れてゐるのか「ご予約」の札の置かれた卓も多く食事は最低消費HK$200なんて看板まで立てゝホテル側も強気。幸ひカウンターでの一杯は最低消費もなく啤酒早飲みで帰らうとしたら旧知の酒客K氏がカウンターの筋向かうで独酌中。お互い早酒に苦笑ひ。

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ホテルのロビーでは乗客が旧知の職員に名残惜しく話しかけ記念写真撮つたり、いゝ雰囲気。帰宅して珍しく「豚肉の生姜焼き」で鍋で炊いた白飯。

寿司中村屋

農暦二月初七。真ん中の縦1列が埋まっていて一見、楽そうにみえるがさすがSCMPの難度5だけに厄介。

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「世界一難しいSudoku」も制した私だが今日はかなり苦戦して完成。黄昏に天后の立ち食ひ寿司・中村屋で寿司持ち帰り。

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なか/\美味いと評判は聞いてゐたが出来合ひの寿司テイクアウトに比べらたら秀でている。寿司をつまみながらテレビで中継みながら競馬し始めたが、さういふ贅澤をしてゐると競馬の予想はやはりダメ。

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ずいぶんと昔だが沙田の競馬場で会員席に「西村」の出店があつた頃に香港の競馬場で寿司つまんで競馬とは乙と喜んだが「寿司を食べると負ける」ジンクスは今でもあり。後半少し持ち直してぎりぎり回収。


日本ではやつと須磨帆でのQR決済が普及してゐるが中国ではコンビニどころか地下鉄も顔認証だといふ。便利なやうだが歩いてゐるだけで誰がどこで何をしてゐるかがわかる超管理社会。怖すぎる。

港委員讚APP拉近「我的中國心」 https://t.co/01Fdujv6w9
その中共では全人代の議員には専用アプリあり全人代関連の情報が須磨帆で手軽に入手できるのださうな。中共がこゝまでハイテク化されるとは。とんでもないデジタル一党独裁国家。

一町一シャッターに宿る平成の天皇制

農暦二月初六。晴。久々の青空。母からLINEで画像送られてくる。

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郷里の今では寂しくなつた商店街の一角で小さな建物の取り壊し。大正時代に創業の老舗の飲食店は2003年夏に閉業。半世紀ほど前に大通りから移転した先はとなりの八百屋の土地で建物は残つてゐたが八百屋も廃業してをり引越しが決まり建物も解体で工事が始まつたのだといふ。また一つ昭和の賑やかだつたころの商店街の一角が更地になる。燈刻、夕日がきれい。ビクトリア公園通りかゝりベンチで缶ビール飲む。文藝春秋4月号をぱらぱらと眺めてゐたが公園を通りかゝる人たちから見たら中年の悲哀に映るかしら。

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文藝春秋4月号で巻頭グラビアに一龍斎貞水師匠。この方は「貞丈さんのお弟子」の印象だつたのだが今では講談の第一人者で人間国宝。湯島の自宅の楼下は師匠の女将さんの営む居酒屋で師匠がそこで飲む姿が何とも微笑ましい。対談で永田和宏歌人歌会始の読進選者を15年)と川島裕(前侍従長)が両陛下の御製と御歌について。御製も立派だがやはり平成の大歌人としての皇后の凄さ。

ためらひつゝあれども行く傍らに立たむと君のひたに思せば (熊本地震被災地訪問)
君とゆく道の果たての遠白く夕暮れてなほ光あるらし

この号の特集は「平成31年を作った31人」で毎年に脚光浴びた1人選んでゐるのだが、これも昭和31年の最後は皇后陛下とは……書き手は歌人の奥野弘彦。この特集の総括(対談)「戦争のない31年が作り出したもの」で佐藤優池上彰と語つてゐるのもまさに平成は天皇の時代で今上さんが憲法に則り「象徴天皇とはいかにあるべきか」で「国民に寄り添ふ」といふ姿勢を明らかにして、それが多くの災害を契機なのがつらいところだが、アタシはこれが理想的な形だが「象徴天皇のあり方が、それだけ天皇個人に依存している」(佐藤)ことが危うくもあり。この号の書評で赤坂真理著『箱の中の天皇』につき評者・片山杜秀南北朝の時代を引き合ひにした論究も興味深い。

戦後日本は、現実的には対米従属国家であり、理念的には理想主義的民主国家である。かつては上手に取り繕われてきた両者が顕著に乖離しだし、ついに国民の分裂を招いて「南北朝の対立」を顕在化させたのが平成時代と言える。私心なく欲なき天皇は理想の側に付く。しかも理想主義的民主国家像を日本に与えたのもアメリカ。ややこしい。ポスト平成には、理想主義と現実主義の激突する、現代の湊川合戦や四条畷合戦が展開するだろう。14世紀の南朝方の「聖書」と言えば北畠親房の『神皇正統紀』だが、本書(箱の中の天皇)はさしずめその現代版。「人間天皇正当紀」と呼びたい。

戦後の先帝の時代を経て、まさか平成の世が「一木一草に宿る天皇制」の時代になるとは思つてもみなかつた。

三一一

農暦二月初五。朝、かなり本降りで天気予報外れたかと思つたが昼前より晴れる。実家の母よりアタシが注文した橋本治『リ ア家の人々』が古書肆より届き母は速読してしまひました、と。

リア家の人々 (新潮文庫)

リア家の人々 (新潮文庫)

 

橋本治北杜夫『楡家の人々』に触発されて、のこの戦後の物語であるし北杜夫も『楡家』はトーマス=マンの『ブッデンブローク家の人々』とマルタン=デュ=ガールの『チボー家の人々』に触発された、と書いてゐる。『ブッデンブローク家』は未読だが『チボー家の人々』はアタシは母が若いころに読んだものが母の書架にあり、それを高校生のときに読み今も大切にアタシの書架にある。母とかうした話をできるのも幸せなこと。今日は311の震禍、核禍から8年で、余計に小さな幸せを感じ入る。

▼今年もまた三月十一日を迎へる。悲しみを忘れない、語り継ぐ……大切なこと。だが、あの悲劇からあたしたちはいつたい何を学んだのか。防災は大切。だが防災には限界あり。あの悲劇を繰り返さないために何ができるかといへばドイツは原発から再生可能エネルギーへの転換を、台湾も脱原発へ。日本は「ダメな民主党政権」を否定し、その結果、安倍一強を産んだだけ。いくつも流れるマスコミの311関連ニュースのなかで陸前高田だつたか鶴亀寿司の親方がテレビの取材に「家族の人に言わたんだけど(自分が)やはりどこか「暗い」って」だから明るく生きていかないと、と。小さなことだが「家族の人に」って言ひ方にどこか優しさを感じる。これがテロップでは「家族に」になつてゐたが。NHKのNW9では311のニュースが30分続いたあと安倍内閣支持率は47%と安定で相変はらず「他より良さそう」。支持しないは44%で「人柄が信用できない」。つまり「人柄は信用できないが他に誰もいない」なのか。

香港のホテルThe Excelsiorが今月末で閉業。この一帯の地主であつたJardine Matheson商会が1973年開業の老舗ホテルでマンダリンオリエンタル傘下。46年の歴史に幕で建て替へて商業ビル化。46年前は振興商業地だつた銅羅湾……否、当時は「銅羅湾」は今の天后で、この一帯は正確には「湾仔鵝頸橋の向かふ」でエクセルシオールホテルはこの一帯、まぁ銅羅湾と呼ぶが、で最初に開業したホテルで、客室数900は香港島一の規模。アタシが大学2年だつたか母に誘はれ香港に初めて来たとき泊まつたのも此処。今では地下のディケンズバーにたまに寄る程度だが広東料理の怡東軒のレベルは高くCamminoも気楽な意太利料理であつた。

雨の日曜日

農暦二月初四。雨の日曜日。午前中に野暮用あり家人と尖沙咀へ。FCCで遅い昼餉。帰宅してまったりと過ごす。ドソノ『夜のみだらな鳥』読み続けるが次元を超へた話でなか/\読み進まず。

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▲今日の大公報の記事。地価高騰は生活者としては嬉しくないにせよアベノミクスで景気浮上すれば必然的に地価上昇があって当然なのだが……

これもお粗末な話だがSKECHERSが"JUST BLEW IT."って、こんなのがNY Times週末版のしかもスポーツ欄に出されてしまつては……。

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▼"What Brexit voters (still) want" by Simon Kuper @FT

If most voters want real Brexit as opposed to fantasy Brexit, they must have it. They are also entitled to impose it on unwilling children and grandchildren. But it's fair to ask again if this is really what they want.

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